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店舗というメディアにしかできないこと

店舗はメディアになる。
これは「小売再生」の中でダグ・スティーブンスも語っていたことだ。

私も百貨店で働いていたとき、ずっと「これから百貨店のライバルは雑誌になる」と考えていた。

「売る」という機能も「新しいものを紹介する」という機能も店舗の専売特許ではなくなった今、店舗に求められる役割は何なのか。

この数年、そのことをずっと考えてきた。

先週月刊koeの創刊イベントとして月刊koe編集長の有地さん、hotel koe tokyoの岩見さんとお話した中で改めて思ったのは、メディアとしてのリアルな場に求められるのは「予想外の縁をつなぐ」ことなのではないか、ということだ。

トークの中で「雑誌がきっかけである分野に興味を持つことってありますよね」という話をしていたのだけど、雑誌に関わらずメディアが担う役割とはこれまでつながらなかったものをつなぐことにあるのではないかと私は思う。
動画であれ、Webメディアであれ、これまで受け手が知らなかったこと、興味のなかったテーマに別のコンテキストを加えることで、新たな出会いを作っていく。それがメディアの存在意義のひとつである。

しかし、ほとんどのメディアは「個人的な体験」に留まることが多い。

雑誌やWebメディアを読むとき。NetflixやYoutubeを観るとき。Podcastでラジオを聴くとき。

そのどれもが作り手と受け手の1対1の体験だ。
もちろんそのあとに感想をシェアしたり友人と会った時に話題に出したりとコミュニケーションとして広がっていく可能性は高いけれど、その体験自体は1人で経験することが多い。

一方でリアルな場所での体験は、友人や家族と連れ立って「一緒に」体験することも多いし、1人で行った場所で新たな知り合いができることもある。
イベントやバーなどでたまたま出会った人と会話が起きるといったことが顕著な例だろう。

個人的な体験から、共同体としての体験へ。

これこそが、デジタルネイティブブランドたちがこぞってリアル店舗を持ち始めている理由なのではないかと思う。

そしてもうひとつ、リアルな場所は他のメディアに比べて初見で与えられる情報量が多いのも強みである。

雑誌の場合はその雑誌に興味がなければ表紙が与えられる情報のすべてである。動画もWebメディアも、サムネイルの情報で興味を引くことができなければ中身を見てもらうことは難しい。

しかし店舗の場合、外観だけでもテイストやジャンル、ブランドなどひと目で多くの情報を伝えることができる。
店舗がガラス張りになっていたり、モールの中に入っていて開けている店舗であればパッと見ただけで全容を伝えることもできる。

この情報量の多さが、予期せぬ出会いを生んでいく。

名も知らないショップがセレクトした商品との、偶然の出会い。
店主の口から語られる商品のストーリーや、地元の常連さんとのちょっとした会話。

こうした体験は、リアルな場としての店舗だからこそ生み出せるものなのではないかと思う。

そして予期せぬ出会いによってコミュニティは再接続され、ゆるやかなつながりが広がっていく。

今回月刊koeの取り組みについてお二人と話した中でも、リアルな場で「雑誌的な」考え方で場を編集することの意味として、予期せぬ出会いへの期待は大きいと語ってくださった。

店舗だからこそできるメディアのあり方とは何か。
それを体現する場として、今後の月刊koeの取り組みに期待していきたい。

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201
Retail Futurist / curator。「知性ある消費を作る」をミッションに掲げています。 将来は世界一の店舗メディアを作る予定。noteの有料マガジン「余談的小売文化論」とコミュニティマガジン「消費文化総研」もよろしくどうぞ!