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彼を素直に「好きだ」と言えるようになって、私はやっと大人になれた

好きな人には常に全力で『好き』をぶつけていくタイプの私だけど、中には『今さら好きだというのはなんだか恥ずかしい』と思う人も存在する。
みんなが好きなスター性のある人がその筆頭で、天邪鬼な私はいつも素直に『いいね』ということができない。

その際たる存在は木村拓哉ではないか、と私は思う。

誰もが文句なしにかっこいいと感じる見た目と振る舞い、ブラウン菅越しにも伝わってくる存在感。
キムタクといえばイケメンの代名詞だった時代があるほど、彼のカリスマ性は際立っていた。

彼には『かっこいい』という言葉が似合う。
似合いすぎるほどに似合うからこそ、逆にその言葉を使いたくない。
小学生の頃に彼の出演するドラマを見ながら、子供心にそんな謎の悔しさを抱いてきた。

でもやっぱりかっこいいものはかっこいい。
そうストンと腑に落ちて、『キムタクってかっこいいよね』と素直に言えるようになって、私はひとつ大人になったような気がした。

『キムタク』は、ひねくれ女子が大人になるための通過儀礼だ。

***

野球でいえば、それは坂本勇人かもしれないと思う。

球界でもトップクラスのイケメン選手でありながら、打ってほしいところで一本を打つ勝負強さもある。
人気の面でも実力の面でも、球界トップレベルの選手だ。

でもなぜか、野球を見始めてしばらくは変なプライドが邪魔をして『坂本が好き』とは言いたくない時期があった。

ちょっと野球に詳しくなり始めると、好きな選手を聞かれたときに『おっ』と思われたい気持ちがやっぱりある。
ミーハー女子だったら知らないような、ちゃんと野球という競技面を見てファンになったんだと思われるような、そんな選手を挙げたい気持ちが、少なからずある。

もちろん人気選手のことも好きだし、応援歌はめいっぱい大声で歌うし、なんならタオルだって持っている。
でも聞かれたときに答える選手は、せっかくなら『渋いね』とか『そんな選手も知ってるんだね』と言われるような名前を答えたい、とつい思ってしまうのだ。

しかし、そこでヤクルトファンである私はひとつ疑問を持った。
私はヤクルトファンになった当初からずっとヤクルトの大スター・山田哲人ファンである。

同じスター選手なのに、なぜ山田哲人に対しては堂々と『好き』と言えて、坂本勇人にはなんとなく言いづらさを感じていたのだろう。

それはきっと坂本が『完璧にかっこよすぎる』からなのだと思う。

先に断っておくと、うちのお哲だってめちゃくちゃかっこいい。
選手としてもかっこいいけれど、見た目も普通にかっこいいし、最近はジルサンダーなんか着こなしちゃったりして服装もかっこよくなってきている。
ついでに言えば、真中監督の若い頃に似ている。

でもなんだかお哲はつっこみどころがあるというか、報道の内容を見ていてもやや庶民的なのだ。
優勝した夜に立ち食いそばに行ったことが報道されるし、テレビにでるとなぜか片言だし、母校に送った手紙の日本語がおかしすぎてネットニュースになるし、そういうつっこみどころがたくさんある。

ちなみにもうひとつ断っておくと、坂本もめちゃくちゃかわいいところがたくさんある。
キラッキラの笑顔を見ればわかるとおり、彼の行動原理は基本的に『少年のまま』である。

いたずら大好きだし、先輩たちに生意気な態度をとりながらも甘え上手でかわいがられまくっているし、ビールかけでは誰よりもはしゃぐ。
見かけ通り、子供のように素直でかわいい人なのだ。

でも名門・巨人生え抜きのエリートであることや、派手な交友関係の報道を目にしていると、遠い世界のスターというイメージの方が強くなってしまって、彼を好きだというのはすごくミーハーな人間のように思えてしまう。

そしてなにより私がプロ野球をみはじめた2011年当時の坂本は、打力こそあったものの守備面では目も当てられないようなエラーを連発している選手だった。

派手な私生活ばかりが話題になりつつも、試合になると満足にアウトもとれない。
そんな姿への反発も少なからずあったのだと思う。

しかし2015年頃、久しぶりに見た坂本の守備は別人かのように変わっていた。

あとから知ったのだけど、当時守備に課題を感じていた坂本はヤクルトの守備の名手・宮本に弟子入りして猛特訓を重ねていたのだという。

そして年を重ねるごとにその守備力は上がり、ゴールデングローブ賞の獲得はもちろんのこと、守備面でも日本を代表するショートに成長した。

その頃から私は、坂本の守備を見るのが好きになった。

無駄のない捕球と柔らかいスローイング。
遠くから見ても、ジャイアンツのユニフォームを着ていなくても、それが坂本だとわかるくらいに、他の選手とは違う動きをしている。
守備オタから見ても惚れ惚れしてしまうほどに、彼の動きは美しい。

そしてその美しい守備が彼の努力の賜物だと知ったとき、私は素直に『坂本が好きだ』と思った。

若い頃からその打力を買われ、『天才』と言われてきた選手。
お金も名声も手に入れ、順風満帆なプロ野球人生を謳歌している姿。

でも彼の守備を見ていると、才能だけではなくきちんと努力してきた人なのだ、ということがよくわかる。
そしてきっと、野球に関しては本当に本当に、負けず嫌いなのだろう、ということも。

坂本のスター性は、シュッとした見た目や華やかなオーラだけではなく、彼の地道な努力によって作りあげられてきたものなのだ。

そんなこんなで、私は一周まわってやっぱり坂本が好きだな、と思うようになった。

それはつまり、『好き』という言葉が自分をよく見せるツールではなく、本当に心から素直な感情になったということでもある。

自分が評価したものに対して他人の評価を気にしなくなること。
そうやって人は大人への階段を登っていくのかもしれない。

私をまたひとつ、大人に育ててくれた人。
そんな坂本勇人の2020年が、さらに実り多きものになりますように。

がんばれキャプテン!来季も目指せキャリアハイ!

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