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「テイクアウト」以外の価値の作り方

緊急事態宣言や東京都の休業補償制度の発表もあってか、通常営業からテイクアウトに切り替えて運営する飲食店が増えてきました。

しかしすでに多くの飲食関係者が語っている通り、テイクアウトだけで店舗を維持していくのは至難の技。
特にもともとの客単価が高い飲食店ほど通常メニューの価格とテイクアウト価格のギャップが大きいため、損失を埋めるには程遠いというところも多いのではないかと思います。

また、席間をとったり1日1組にして営業を続ける手法をとっているところもあるようですが、これも通常の回転率を考えると大幅に売上が下がってしまうため、よほど単価を上げなければ意味がなくなってしまいます。

さらに住宅街にある飲食店はまだ客足が見込めるものの、渋谷や新宿、銀座、丸の内といった繁華街やオフィス街は、人通りがまったく見込めないため、テイクアウトや通常営業では到底売上の低下分を賄うことはできません。

この状況下で店舗を存続させるには、モノを販売する方法ではなくコンテンツやサービスを中心にビジネスを再構築するべきなのではないだろうか。

そんなことを考えてながら筋トレをしていたとき、「そういえば筋トレにはトレーナーがいるのに、料理にはマンツーマンという概念がないのではないか」とふと気付きました。

筋トレやヨガの方法は、YoutubeやTikiTokを観ればいくらでも無料で学ぶことができる時代です。
その一方でライザップブームもあってか、パーソナルトレーニングが一般層にも広がり、ジムに通うことが「特別なこと」ではなくなりました。

それはHow to動画さえあれば身につくわけではなく、「わかった」から「できる」に移行するためには、自分が理想に対して今どこにいて、なぜそこに到達できていないのかを客観的に把握し、目標までのステップを描く必要があるからです。

つまり目標に「伴走」してくれる人の需要は減らないし、むしろコンテンツが溢れているからこそ興味をもつ人が増え、もっとうまくできるようになりたいとトレーニングを受ける人が増えるのではないかと思います。

こうしたコンテンツとパーソナルサービスの関係は、あらゆる分野で同じことが言えるはずです。

たとえば洋服選びにしても、どんなにファッション誌を研究しても自分の体の特徴を踏まえた「自分に似合うもの」を選べるようにはなりません。

メイクやヘアアレンジも、How to動画を何回も見たところで、骨格や髪の毛の生え方によってコツが異なるため、理想と同じように仕上げるのは難しいもの。

だからこそ、単にオンラインコンテンツで「教える」だけではなく、教えられる側の動きを見ながら「フィードバックする」需要があるのではないかと思うのです。

そしてこの考え方は、飲食店にも応用できるのではないかと思ったのです。

外食がしづらい今、多くの人が自炊生活を強いられています。
そして外でSNS映えする写真が撮れない今、「こんなものを作ってみた」「こんなレシピを試してみた」という投稿がタイムラインに溢れています。

sioの「おうちでsio」シリーズを参考にして、「sioレシピで作ってみた!」という投稿もたくさん見かけました。

このコンテンツを活用して、たとえば「o/sioのナポリタンをいちから作る」というテーマでオンライン料理教室を開けば、テイクアウトよりずっと売上に貢献できるのではないかと思うのです。

特に普段積極的に自炊をしてこなかった人たちにとっては、
・そもそもこれを作るには調理器具って何を買い足さないといけないんだろう
・近所にこの材料売ってなかったけどこれで代用していいのかな
・キッチンが狭くても作れるのだろうか
など、料理の百歩手前あたりで悩んでしまう人もたくさんいます。

そしてその悩みは個々人によって状況も予算もできることも異なるので、マンツーマンで答えてほしいという需要があるはずなのです。

また、ある程度料理ができる人でも
・魚がうまく捌けない
・焼き加減の調整が難しい
・かたちが綺麗に再現できない
など、フィードバックをもらいながらでないと成長が難しい課題も多々あるはずです。

もしこうした内容をシェフが直接教えてくれるとしたら、お金を払ってでも受けたい人は案外多いのではないかと思うのです。

マンツーマン以外にも、みんなで作ることを主眼において3、4人のグループレッスンを作れば敷居を低くすることもできるはずです。

たとえばコースで1万円ほどのレストランであれば、1レッスン5000円〜1万円は支払える層がもともとのお店のターゲットのはずなので、10人ちょっとレッスン予約が入れば1日10万円ほどの売上につながります。

その上でおすすめの食材や調理器具もあわせて販売すれば、テイクアウトや通常営業を続けるよりは売上に貢献できるのではないでしょうか。

さらにこのレッスンを受けたお客さまは、外出自粛が終わったら以前よりも足繁く通ってくれるようになるはずです。
エンゲージメントが高まるのはもちろんですが、自分でやってみることでプロの技術の高さを痛感するからです。

たとえレシピを公開したとしても客足に影響が出ないのは、レシピという情報だけでお店の味を完璧に再現することは不可能だからです。
食材ごとの微妙な違いや季節の変化、体に染み込んだ動きは素人が一朝一夕に身に付けられるものではありません。

むしろ、自分でやってみることで「当たり前のような顔をして、こんなにすごいことをやっていたのか!」という感動につながるはずです。

料理人のみなさんは「自分の作ったものを食べてもらうこと」が一番の使命だと思いますが、外出自粛が続く中、食べてもらえる場所を守り続けるためにも、「教える」という方向に発想の転換をしてみるのもひとつの手かもしれません。

また、その際は急にレッスンをはじめるのではなく、sioのようにレシピを公開したり、ライブ配信で調理の様子を流したり、インスタで調理過程を説明する写真をあげるなど、無料コンテンツを通して「作ってみたい欲」を掻き立てておくことも重要です。

私は自分で飲食店を経営したことがないので的外れなところもあるかもしれませんが、今苦しんでいるオーナーさんたちにとって何かヒントになるものがあれば嬉しいです。

早くみんなで大好きな飲食店のテーブルを囲む日々が戻っていますようにと願いながら。

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