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私の「やりたいこと」の話をします。

今日はシンプルに、私がやりたいと思っていることの話をします。

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最近、

「さいしょさんって、最終的に何がやりたい人なの?」

とよく聞かれます。

そのとき私が毎回答えているのは、

「小売の仕組みを変えたい」

ということ。

そう、私がやりたいのは、「小売の仕組みを変えること」なんです。

グッチもヴァレンティノもディオールも。あの価格の理由がわかった日。

百貨店時代、ラグジュアリーフロアに配属された私は、毎日たくさんの一流と言われる商品にふれていました。

バッグやお財布のイメージしかなかったブランドも、実は洋服がメインで、数十万もするドレスを売っていることも、配属されてから知りました。

そして勉強のためにとドレスやスーツを試着させてもらってはじめて、ラグジュアリーブランドの価格の意味がわかったのです。

これは一度着てみないとわからないことですが、ラグジュアリーブランドの洋服は人の体のラインを研究しつくされていて、着るだけでボディラインを美しく見せてくれます。

ロゴがついていなくても、シャネルのツイードジャケットのようなアイコニックなアイテムでなくても、シンプルなドレスですらもフォルムの上品さがまったく違うのです。

それは各ブランドが長く培ってきた知見の賜物であり、私たちは彼らの研究開発費にお金を払っているのだとその時気づきました。

それまでラグジュアリーブランドの1/10にも満たない価格の、身の丈にあった洋服しか着たことがなかった私にとって、その気づきはとても大きなものでした。

「この感動をもっとたくさんの人に味わってほしい」そう感じたことが、原体験として今の考え方のベースになっています。

一度離れたからこそ思う、小売業界の問題点。

その後百貨店を離れてITの世界に入ることになるのですが、離れたからこそ強く「やっぱり私は人がモノを買うという行為がすごく好きだ」と思うようになりました。

特に衣・食・住の中でも「衣」は一番社会性が高く、未来の自分がどうありたいかを考えるポジティブな消費だと思っています。

明日着ていくものを考える瞬間は明日の自分がどうありたいかを考えるということだし、次のシーズンに向けて買い物をしている瞬間はこの先半年どういう人間にみられたいかを考えるということです。

私はおしゃれな人間ではないけれど、だからこそ、ファッションオタクではない普通の人の目線で、もっとたくさんの人がファッションを楽しめる仕組みを考えたいなと思うのです。

今はファッションの最前線にいるわけではありませんが、少し離れたところからファッション業界に感じる問題点は2つです。

①「売る」から脱却できない店舗の旧時代的なビジネスモデル
②着飾って行きたい "ハレ"の空間の欠如

まず①に関して言うと、いまだに百貨店はもちろん、ファッションビルもショッピングセンターも、直営の路面店すらもすべて「売る」を前提にしたビジネスモデルになっています。

ブランドの売上の何割かが自分たちに入るようになっているので、百貨店やファッションビル側も必死で売ろうとします。

実店舗しかなかった時代は、他に買える場所もないのでそれでもよかったのですが、今や「買う」という行為はどこでもできるようになっています。

店頭で見て試着して気に入ったとしても、「もっと安く買えるところないかな」とネットで検索すれば、手に入れるための手段はたくさんでてきます。

こうしたショールーミング化はすでに書籍や家電業界で顕著ですが、ファッションの分野でもZOZOTOWNが多数のブランドを集めてポータル化しているため、店頭で見てZOZOで買う、という流れが一般的になる日も近いのではないかと思います。

そうすると店頭でモノが売れなくなり、売上を伸ばすためにいかにその場で買ってもらうかに注力するようになります。

ただでさえ接客を受けたくない人も多いのに、ノルマを課せられた販売員が「買って、買って」と押し付けてきたら二度と足を運ぼうとは思わないでしょう。

「売る」をベースにしたビジネスモデルのままでは、永遠にこの悪循環にはまりつづけることになるのです。

次に②についてですが、以前「これからの時代、洋服を売る上で必要なこと」という記事の中でこんなことを書きました。

だからこれから洋服を売るために必要なのは、"ハレ"の場をどう作っていくかなんじゃないかと思う。
会社帰りにデートするとか、出勤前に素敵な朝ごはんを食べに行くとか、そういうちょっとだけ特別な日をどう演出していくのか。
「ここに行くならちゃんとかわいい格好をしたいな」と思わせる場所づくりは、これからの小売に密接につながっていくような気がしています。

ちょうど1年前に書いた記事ですが、私はこのときよりさらに確信を持って「この方向は間違っていない」と考えています。

例えば、パタゴニアが自然を保護する活動を行なっているのは、大自然という彼らの商品を使う場所がなくなれば、彼らの市場自体がなくなってしまうからです。

ファッションもまったく同じで、ちょっといいレストランだったりバーだったり、休日にみんなで集まる機会だったり、そういう「よく見られたい場所」がなくなってしまったら、ハレの日に着るような洋服を手に取ってもらうことはできません。

どんな人に着てもらいたいかから考えを一歩進めて、どんな場所で、どんなシチュエーションで着てもらいたいのかも、あわせて考える必要があると思うのです。

だから、私がやりたいこと。

上記の2つの問題をそれぞれ解決するためにやりたいと思っていることが2つあります。

①雑誌のビジネスモデルでお店をやること
②洋服を楽しみたくなる非日常イベントを作ること

まず①についてですが、私は常々百貨店のライバルは雑誌だと主張してきました。つまり百貨店とは、バイヤーという名のキュレーターが編集する巨大なメディアなのです。

店舗=メディアだと考えると、今の店舗はすべてアフィリエイト収入に頼ったビジネスモデルになっています。

しかし、これを雑誌に変換して考えると、まず入場料(=書籍代)を取ることも考えられますし、固定家賃(=純広告)モデルへの転換も考えられます。

また、これは百貨店時代に痛感したことなのですが、店舗空間の一番の制約は在庫用ストックと決済端末の配置です。

「売る」ためにはストックや販売用資材などたくさんの隠しておかなければならないアイテムがたくさんあり、そのために商品展開の方法が制限されてしまうのです。

「見せる」をメインの目的にすればもっと商品展開の自由度も上がりますし、店頭スタッフも売るためではなくお客様を楽しませるための接客ができるようになります。

アメリカではすでに、雑誌のように毎月テーマを変えて店舗にスポンサーをつけるSTORYというお店があり、多くのニューヨーカーに支持されています。

雑誌がリアル店舗に進出するのが早いか、既存の小売店舗が雑誌のビジネスモデルに転換するのが早いか、まったく新しい第三勢力がでてくるのか、誰がこの市場をとるのかな、と思っています。

②については、ずっと前からことあるごとに「晩餐会をやりたい!」と主張してはどうにか実現のきっかけをつかめないか模索しているところです。

私はONE STORYがやっている「DINING OUT」というイベントが好きなのですが、歴史と文化を感じさせるこのディナーイベントは、テーマパークの楽しさとはまた違う知的な大人の非日常体験だと思います。

DINING OUT自体は富裕層向けのイベントなので、これに参加する人は数十万のドレスやアクセサリーを新調できる人たちです。

でも、大半の人たちは数万のワンピースですら買うのを躊躇するものです。

だからこそこうしたコンセプトのイベントをもう少しハードルを下げて、さらに洋服もその場でレンタルして、その日のその空間を楽しむイベントができないだろうか、と考えています。

もちろん、試着してその場で体験するだけで即購入に繋がったりすることはないと思いますが、そもそもブランドというのは憧れの醸成が重要です。

もし体験した本人は買えなかったとしても、より多くの人が「グッチのドレスってすごくいいよね」と思ってくれることでブランド価値が上がり、実際に買える層の人たちが買ってくれるようになるのです。

ブランドの世界観、哲学、情熱を伝えるためには、どんなに言葉を尽くしたとしても、たった一度の試着に勝るものはありません。

試着して体験してもらう、というのは、直接的な購買だけではなく、憧れの種まきでもあるのです。

また、そうしたイベント以外にも、例えばそのブランドの洋服着用必須のレストランをブランドが直営でやればいいのにな、と思います。

これからどんどんファッションの意味は「ものがたりを身に付けること」になっていきます。

そうしたとき、そのブランドのアイテムを身につけた人たちだけが集まるバーやレストラン。コーヒースタンドがあれば、同じものがたりを共有している人たちと時間を過ごすことができます。

ラグジュアリーブランドであれば、さらに「特別感」も演出できますし、入り口でレンタルサービスもあわせて展開すれば、自然に自社のアイテムを体験してもらうこともできます。

おしゃれをしてでかけたい場所を作るのは、これからのファッションブランドの責務とも言えるのではないかと思っています。

実はこの考え方を体現したくてはじめたのが「私のおでかけ帖」で、その街やお店にあったファッションを考えて提案していきたい、というのは一貫して考えていることです。

大事なのは、アイデア自体じゃなく「やりきる」こと。

私は基本的に、こうしたアイデアを公開していくスタンスをとっています。

なぜならアイデアを公開したところで、実際にできる人はそんなに多くないと思うから。そして、このやり遂げたい世界を実現する上で、メインプレイヤーは私じゃなくてもいいと思っているからです。

私自身①と②どちらもやりたいと思ってあれこれ小さくスタートさせるべく動いていますが、すでに100個くらい挫折しそうなポイントが見えています。

だから、なんとなくこうやったらうまくいくんじゃない?というテンションだとすぐに挫折すると思います。

私もしょっちゅう小さな挫折を繰り返していますが、この2つが求められていることを確信しているし、何より自分がそういう場所が欲しいから、作り上げるまで諦めるつもりはありません。

この程度のアイデアは世界中ですでに数万人単位で思いついていることだと思いますし、それでも実現していないのはみんながやりきれていないから、ただそれだけです。

だから、アイデア自体に価値があるわけではなくて、むしろ「私はこういうことがしたいんです!」と公表していくことで、同じような考え方の人に賛同して手伝ってもらえたり、次の一歩につながる何かを紹介してもらえたり、そういう次につながるきっかけになることの方がよっぽど大事だと思っています。

どれだけ時間がかかっても諦めるつもりはないけど、最短ルートで叶えられるチャンスがあれば、そこに向かって全力でやり遂げたい。

そう思うからこそ、今改めて「私のやりたいこと」について言語化してみました。

私1人では何もできないですが、こうやって地道に伝えていくことで、小売の仕組みを変えることにつながっていけばいいな、と思っています。

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毎朝、百貨店の扉が開く瞬間のあの高揚感が大好きでした。

1日の中で一番、のれんのプライドを思い出させる儀式だったと思います。

もう一度あの高揚感を味わいたくて、誇りある場所を作りたくて、その日のために今を一生懸命に生きているのだという気がします。

私は、人がモノを介してコミュニケーションする場所が好きです。

だから、たくさんの人が買い物をして「楽しかった」と思えるような、新しい小売の仕組みを作りたい。

そんなシンプルな夢を叶えるべく、今日もひとつひとつ目の前のことをやり遂げていきたいと思っています。

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(Photo by tomoko morishige)

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Retail Futurist / curator。「知性ある消費を作る」をミッションに掲げています。 将来は世界一の店舗メディアを作る予定。noteの有料マガジン「余談的小売文化論」とコミュニティマガジン「消費文化総研」もよろしくどうぞ!