沈黙の先にあるもの
大人の条件のひとつは、「沈黙に苦手意識をもたなくなったとき」なんじゃないかと思う。
昔は会話が途切れると焦って話題を探していたけれど、最近「沈黙の時間も会話のうち」と考えられるようになってから、ふとそう思った。
そして大切なのはきっと会話が途切れないことじゃなく、途切れた後の話の接ぎ穂に何をもってくるかなんじゃないか、とも。
沈黙がうまれたとき、たいていの人は何か話題を提供しなければ、と焦る。
そしてその焦りの中から出てきた話題こそが、関係性を一番よく表している気がする。
一瞬の思考で導き出した「この人との共通の話題はこれだ」というひとつの解は、私たちが何によってつながっているかを無意識に規定するように思うのだ。
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「共通の敵がいるって、強いけど脆いよねぇ。」
友人が、グラスを回しながらぽつりとつぶやく。
沈黙を破る話題がいつも同じとき、それはつまりたった一つの話題に関係が依存している証拠だ。
渦中にいるといつも忘れてしまうけれど、沈黙の後の話題はよくも悪くも私たちの未来を暗示している。
でも、だからこそ、沈黙の時間を飼いならすことで、みんな大人になっていくのだろう。
まだまだ女子同士のマシンガントークが一番楽しい私たちが大人になるには、もう少し時間がかかりそうだな、と他人事のように思いながら、2杯目のグラスに口をつけた。
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(Photo by tomoko morishige)
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