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感動は逆説から生まれる

昨日、NewsPicksでダグ・スティーブンスのインタビュー記事を公開しました。

今回のインタビューはもちろん、書籍の中でもダグは『顧客が感動する体験を作る必要がある』と何度も語っており、商品を試せる場を作っただけで体験を作った気になってはいけないと改めて感じます。

では顧客が感動する体験とは何か?

私はそのヒントは『逆説的意外性』にあると思っています。

つまり『ここまでやってくれた!』という感動こそが、顧客の記憶に残る体験なのではないかと思うのです。

わかりやすい例がおまけや割引ですが、大手企業の場合は機械的なサンプリングになってしまっていることもしばしば。どんなに顧客側が得することであっても、『意外性』が薄れてしまえば感動にはつながりません。

ちょうどそんなことを考えていたとき、福岡から東京に帰る飛行機でこんな体験をしました。

これはまさに『JALのような大企業がここまでやってくれるのか!』と感動を生む例なのではないかと思います。

このタグのポイントは
・手書きであること
がまず挙げられますが、同時に
・全員ではなくランダムにつけてあったこと
も感動を生む要因だったのではないかと思います。

実はチェックイン時にも七夕フライトだからということでチョコの小さな詰め合わせをプレゼントしてもらってそれはそれで嬉しかったのですが、会社としてのキャンペーンなのかなという印象もあり、つぶやくほどの感動は受けませんでした。

手荷物タグももちろん会社で決められたキャンペーンのはずですが、ランダムだったことで運試しのような楽しさと、『みんな』ではなく『私』に向けられた特別感が生まれたのではないかと思うのです。

これもまた逆説的意外性のひとつで、普通は同じ顧客として同列に扱われる場面で、たとえ小さくとも特別扱いをされるという意外性が感動につながるのです。特に大企業ほどマニュアル通りの対応をされるという先入観があるため意外性の差分が大きくなり、その分感動も大きくなります。

アメリカの百貨店・Nordstromでは、入社時のマニュアルにはたった一行『お客様にとってよいと思うことはすべてやりなさい』と書いてあるだけだという有名な話があります。普通だったらマニュアル対応されるところで融通をきかせてもらえる体験は顧客の感動を生み、Nordstromのブランドを作り上げてきました。

そんなNordstromには顧客サービスに関する数々の伝説があります。そのひとつひとつは信憑性のないものも含まれますが、どの逸話にも『Nordstromならやりそうだよね』と思わせるだけの信頼が築き上げられています。

つまり
『普通なら◯◯なのにここは××してくれた』
という感動こそが、ブランド価値につながっていくのです。

Nordstromと似た構造はnoteにもあって、
『普通ならランキングがあるのにnoteにはない』とか
『有名人だけを特別扱いせず、全クリエイターを平等に扱う』とか
『クリエイターを褒めることに多大なリソースを使う』とか
普通のサービスだったら効率性を考えてやらないようなこと、後回しにする施策に積極的に着手している意外性が積み重なって信頼になり、愛されるサービスになっているのではないかと思います。

効率性を考えると普通はやらないけれど、顧客のためになること。たくさんある意外性の中で自分たちはどの逆説を実現するかを考えることこそが、ブランドの差別化をつ

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