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「テイクアウトありき」の店舗戦略

外出自粛の影響で、この3ヶ月ほどの間にテイクアウトを提供する店舗が大幅に増えた。外食産業におけるテイクアウトの増加についてはまだ全体の統計は出ていないが、飲食店の中にはテイクアウトの伸びによって昨年とほぼ同水準の売上を確保できているところもあるようで、その戦略が飲食店舗の明暗を分けていると言っても過言ではない。

そんな状況をみながらふと思ったのは、これからテイクアウトの売上を前提とした店舗作りも増えていくのではないかということだ。

外出自粛の流れ自体は、このまま第二波も到来せずに治療薬が開発されれば自然と解かれていくだろう。
しかし自宅勤務という「便利さ」に慣れた私たちが従来のような出勤ありきのライフスタイルに戻る可能性はほぼないのではないかと私は考えている。

出勤だけではない。営業やイベントも、この外出自粛期をきっかけに誰もが「Zoomでいいじゃん」と気づいてしまった。
もちろん直接会うことのメリットは大きいが、対面は贅沢品の部類になっていくのではないかと思う。

こうして人が外を出歩く頻度が下がると影響を受けるのが外食だ。

特にランチタイムは人が外に出ていること前提で発展してきた。ディナーは会食だったり家族団欒のためにわざわざでかけることはあっても、自宅で働いている人がランチのためだけに遠出したりのんびり外で食事することは考えづらい。
さらに出勤というかたちで人が集まっていれば「一緒にランチしましょう」と外に出る機会も多かったが、人が集う機会が減った今、ランチタイムを飲食店で過ごす人自体が激減しているのではないかと思う。

今後ソーシャルディスタンスも解かれてフルにお客さんを入れられるようになっても、以前の同じだけの席数が必要なくなることも考えられる。

そもそも、飲食店は小売店以上に在庫回転にシビアな業界だ。席数という「在庫」は保存がきかないため、少しでも機会損失を出すとそのまま赤字に直結することもある。いかに効率的に席数という名の在庫を回転させるかが肝になる。

そう考えると、席数の縛りがないテイクアウトは人気さえでれば上限なく売上を伸ばせる手法でもある。Uber Eatなどを活用すれば、商圏を広げることもできる。

アメリカではすでに「ゴーストレストラン」がブームとなっていたが、日本でもテイクアウトを前提とした店作りが今後は増えていくのかもしれない。

その際にネックとなるのが、事前にどれだけ仕込みをするべきかがわからない点、また注文してからの調理だと待たせてしまう点だ。
顧客視点でも人気店のテイクアウトほど早々に売り切れやすいため事前にまだ商品があるかを知りたいニーズもあるだろう。

この2つを解決するには、Uber Eatsのようなプラットフォームが「事前予約+受け取り」の機能を出すのもひとつの手なのではないかと思う。運動不足になりがちな今、配達ではなく自分でとりにいきたいニーズもあるはずだ。
お店側からしても、注文が入ってから調理すればロスを最小限にできるし、食材が足りなくなって用意できない場合はオンラインで「売り切れ」を出すだけでいい。

現状、テイクアウトがあまり儲からないのはテイクアウトを効率化するための仕組みがないからだと私は思う。

こうした仕組みが整っていけば、実店舗は調理兼フラッグシップとして提供し、テイクアウトや通販でメインの売上を作るお店も増えてくるのではないかと思う。

たとえばコンビニにはいつの頃からか「イートイン」のコーナーができはじめたが、ランチタイムに関してはコンビニと同じくテイクアウト前提で店を作り、付属としてイートインを作るやり方もありだと思う。

特にファストフードチェーンは「さっと食べてさっと出たい」ニーズを満たす業態なので、「飲食スペースを前提に店作りをすべきなのか?」から考えたいところだ。

ちなみにアメリカではスターバックスがテイクアウト専用のお店を増やすことを明言しており、外食チェーンも在宅ベースのワークスタイルに合わせる必要があることを示唆している。

ちょうどそんなことを考えていたタイミングで、吉野家CMOの田中さんにお話を伺う機会をいただいたので、私なりの仮説もぶつけてみたいと思っている。
今夜21時からのライブ配信、ぜひ見てみてください。

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