マガジンのカバー画像

現場からは以上です。2nd

293
「現場からは以上です。」マガジン内のnoteが100を超えたので、2ndマガジンを作りました。 「地域の魅力とITの力で小売はもっと面白くなる!」をモットーに働く中で感じたこと、… もっと読む
運営しているクリエイター

#コラム

「文化の継承」の出発点

「文化の継承」の出発点

「動的保存」という言葉を初めて聞いたのは、とある重要文化財を訪ねたときだった。保存とは単に元のかたちを維持することではなく、古きよきものを残しながらも現代に生きる人たちが活用することも含むのだと丁寧に解説していただいた。ガラスケースに入れて傷ひとつ付けないことだけが「保存」ではない。人がそこで生きているからこそ建物も生きる、そんな保存のしかたもあるのだと。

美術館や博物館に並ぶ芸術品はどれも美し

もっとみる
私たちの仕事は、「桃源郷」を作ること

私たちの仕事は、「桃源郷」を作ること

九州には「ななつ星」という豪華列車がある。九州の素材や名匠の作品が散りばめられ、豊かな自然と温かなホスピタリティによって九州らしさを体現するこの電車は、2013年の運行開始時から憧れと誇りをもって愛されてきた。

いち九州人として、JR九州は故郷の誇りだと思う。車社会なので電車に乗る機会はそう多くなかったけれど、思い出を遡るとそこにはいつも美しくデザインされた車両がある。東京から福岡に帰ってきたと

もっとみる
努力の継続に必要なのは「再開する力」

努力の継続に必要なのは「再開する力」

英語の勉強をはじめてから、ちょうど丸二年が経った。

2年前に私が掲げた目標は「英語でインタビューして英語で記事を書けるようになる」。
当時の私の英語力からそのレベルを目指すとしたら、毎日3時間勉強しても3年はかかると言われたときの衝撃をいまだに覚えている。高校生活と同じだけの年数を勉強に費やさなければならないことに軽いめまいを覚えたけれど、気づけばもう2/3が経過した。

まだ当初の目標には到達

もっとみる
本屋さんの役割

本屋さんの役割

今日の夜、青山ブックセンターの山下さんと「これからの小売を書店の現場から考える」をテーマにお話させていただくことになりました。

ちなみに山下さんには半年ほど前に私のコミュニティのイベントとして店舗見学ツアーをしていただいたこともあります。
その中で伺った店舗らしさを作るための棚づくりやイベントの考え方は、他の店舗でも参考になるポイントに溢れていました。

しかし店舗見学からたった半年の間に、店舗

もっとみる
伝統から革新を生むために

伝統から革新を生むために

生き残るためには、変化し続けなければならない。この原理からはどんな事業体も逃れられない。
一時代を築いた大企業も、何百年も続く伝統産業も、絶えず変わりゆく時代に適応するための変化を求められている。

しかし規模が大きければ大きいほど、そして歴史が長ければ長いほど、変化のスピードは鈍る。

ステークホルダーが増え、ビジネスシステムは複雑になり、「安定」や「継続」を求める人の割合が高まっていくからだ。

もっとみる
共感は「個人の物語」からはじまる

共感は「個人の物語」からはじまる

コンテンツには、「役に立つもの」と「役に立たないけれど愛されるもの」の2種類があると私は考えている。そして発信を苦手とする人の大半は、「役に立つもの」しか発信してはいけないと思い込んでいることによって自らハードルを上げすぎているように思う。

「役に立つもの」はたしかに根強い人気がある。誰でも簡単に成功する方法を知りたいのだし、情報が溢れている今、これを選ぶのが一番コスパがいいと教えてくれるコンテ

もっとみる
大学で一番力をいれるべきなのは「勉強」である

大学で一番力をいれるべきなのは「勉強」である

大学は勉強をする場所である。当たり前すぎるほど当たり前のことだが、私は一に遊び二にバイト、単位なにそれおいしいの?いう調子で大学生活を送った元気な不良大学生であった。そもそも田舎の高校生だった私は受験の時点で「学位」の概念を持ち合わせておらず、偏差値と照らし合わせて入学できるかどうかで大学を選んだと言っても過言ではない。
大学で勉強する意味もよく理解していなかったし、大卒の資格を得ることによって就

もっとみる
コントロールされる欲望

コントロールされる欲望

Netflixの「History101」というオリジナルシリーズにハマって最近よく観ている。

初回テーマがファストフードだったのだけど、一番驚いたのが「この50年でハンバーガーの平均サイズが3倍近く大きくなっている」ということだった。

In 1954, an average hamburger is 3.9 ounces. In 2006, on average, they're three

もっとみる

「批評家」という仕事への誤解

一般的に、批評家と実務家は真逆の対象として語られることが多い。そして大抵の場合、批評家は実務家のような苦労をすることなく好き勝手にものを言って暮らしている人、というイメージで語られがちだ。

さらにいえば、大学教授や研究者に対して「自分が実務家としてやってみたらいいのでは」という意見を耳にすることもある。

こうした言説に触れるたび、「考える」という知的労働の地位はまだまだ確立されていないのだなと

もっとみる

理念の優先順位

「うまい、やすい、はやい」。
誰もが一度は聞いたことがあるであろうこの吉野家のキャッチコピーがこの順番になったのは、ほんの20年ほど前のことだと知ったのは昨日のハフライブでのことだった。

吉野家はもともと魚河岸で働く人たち向けに、仕事の合間でもさっと食べられるメニューとして提供されていた。だから優先順位は「はやい」が一番にきていたのだという。

そこから高度経済成長期を経て「はやい」「やすい」と

もっとみる
発見の裏には、必ず伴走者がいる

発見の裏には、必ず伴走者がいる

毎日noteを書いたりツイートしたり、さらにはコミュニティのSlackでもまなびを投稿したりと常に何かしら発信しているので、そのネタ元を聞かれることがよくある。

これまではずっと「本を読んだり映画やYouTube、Podcastなどのインプットを増やすこと」と答えてきたけれど、自粛期間中に人と会う機会が激減してから、実は人と会うことが一番重要なのではないか、と思うようになった。

3月からの3ヶ

もっとみる
うまくいかなかったことは、文学になる

うまくいかなかったことは、文学になる

通常、歴史は勝者の視点から語られる。
現在支配している側の解釈が正史となり、それが「事実」として受け継がれていくのが世の常だ。

一方で、たとえば日本書紀に対する古事記のように、鎌倉正史に対する平家物語のように、歴史の裏には常に「文学」があった。
歴史書には描かれなかった悲喜交々を文学から読み取ることで、私たちはより立体的に過去を遡ることができる。

現代でも、書籍になったり漫画やドラマに描かれる

もっとみる
豊かさとは多くを得ることではなくたくさん「回す」こと

豊かさとは多くを得ることではなくたくさん「回す」こと

「戦争は資本主義が加熱し、奪うことで成長しようとしはじめたときに起きるのだ」

100分de平和論を見て一番印象的だったのは、経済のあり方について書かれた本が半分を占めていたことだった。

ブローデルの「地中海」と井原西鶴の「日本永代蔵」。

一見すると「平和」に直接関係のないように思えるこの二冊から読み解く平和のあり方は、私たちがこれから「成長」にどう向き合うかを考えさせるものだった。

二冊に

もっとみる
対話型ジャーナリズムを目指して

対話型ジャーナリズムを目指して

「ジャーナリズム」と聞くと、取材対象者を追求するイメージを持つ人も多いかもしれない。
そのイメージはあながち間違いではなく、報道の役割は本人が話したくないことすらも引き出して真実を伝えることにある。
話したいことを気持ちよく話してもらうだけでは、報道ではなく広報になってしまうからだ。
相手が隠したい、濁したいと思っていることにも切り込み、他の取材で得られた情報をもとに話しづらいことも話さざるをえな

もっとみる