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街とわたしの「はみ出し」を描く 『リ/クリエーション』2/2キックオフフィールドワークレポート

独特な2つのコースに集まった、多様な受講生たち。


2020年2月2日(日)、『リ/クリエーション』がいよいよスタートしました。
『リ/クリエーション』とは、2020年2月からSHIBUYA QWSがドリフターズ・インターナショナルと開催するシリーズ講座。建築・パフォーマンス・ファッション・アートなど多用なジャンルを越境しながらクリエーションを育んできたドリフターズと、「問いの感性」をコンセプトにした共創施設がコラボレーションし、渋谷という場所で「余白」から生まれる好奇心や思考を育むプログラムです。

このプログラムは2つのコースに分かれています。リ/クリエーションAは言語・環境・コミュニティ、リ/クリエーションBは身体・多様性・トランスナショナルをテーマに、建築・演劇・デザインなどの様々な関心・専門を持った受講生たちが集まりました。ここでの出会いや、各業界の最先端を行く多様なナビゲーターたちからの刺激が、彼らのプロジェクトを具体的に、そして面白く成長させていきます。

記念すべきキックオフの2月2日(日)はAB合同で実施されました。デザインリサーチャー /グラフィックレコーダーの清水淳子さんによるレクチャー、建築家の元木大輔さんによる「はみ出す」をテーマとしたトークから始まり、更には街に出てフィールドワークを行う、豪華な二部構成です。


ビジュアルランゲージで、「複雑な感覚を取り出す」


午前中は清水淳子さんによるビジュアルランゲージのレクチャーが行われました。ビジュアルランゲージとは、文字の話し言葉や書き言葉では表現しきれない感覚を、絵や図解などのビジュアルとして表現し、コミュニケーションに用いること。『リ/クリエーション』のプログラムは、街での「体感」を重視したプログラムなので、文字の話し言葉や書き言葉では、表現しづらい感覚も多々訪れます。この「体感」をつかまえていくため、感覚を絵として表現するこの手法を学びました。

清水さんは「視覚言語は未知の領域」と語っています。他者に伝えるのが難しい複雑な感覚を、そのまま取り出すようなこの手法は、その後の街歩きや発表に大きな影響を与えました。この手法を使い、「あなたはどうはみ出していますか?」という問いへの答えを受講生が視覚的に表現します。それぞれ描いた自分のはみ出し方を持ち寄って話し合い、興味の合いそうな人同士で6つのグループに分かれました。

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▲受講生たちは自己紹介を描き、壁に貼り出した。個性的であればあるほど興味が湧いてくる。

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▲ビジュアルランゲージには描いた人の着眼点やイメージがはっきり表れる。「複雑な感覚を取り出す」とはこのこと。


公共空間のガードレールをハックする小さな爆弾
ー 「はみ出す」とは?

ランチ休憩で親睦を深めたあと、元木大輔さんによる「はみ出す」をテーマとしたトークが行われました。

元木さんは建築的視点から様々なもののデザインを行っています。その遊び心は計り知れず、会社前にあるガードレールを背もたれにベンチをつくり、「公道に私物を置くな」と注意勧告される、という行政との攻防を繰り広げていたりします。「ベンチ・ボム」というこの行為は、ストリートの壁にグラフィティを描くように、公共空間のガードレールをハックする小さな爆弾です。

ガードレールは破損していないし、道ゆく人はこのベンチを勝手に使う。けれど行政はこれを許してはくれない。なら何なら見過ごされるのか……。はみ出ながらも適応していく、柔軟でクリエイティブな考え方が面白いものをつくっています。

Aコースディレクター、ドリフターズ・インターナショナル理事であり建築家の藤原徹平は「越境するためには自分のいる場所から『はみ出る』必要がある。それはつまり環境をとりあえず経験して、とりあえず食べて…自分のなかに取り込むこと。はみ出ているものを自分の内側に身体化し、クリエーションを行うことでカタチになっていく」と語りました。

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▲ガードレールにひっかける設計のベンチ。「ベンチ・ボム」の詳細はこちら。ウェブサイトには他にも面白い活動が満載です
> http://www.dskmtg.com/work/bench_bomb_shibuya.html

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▲自分が痔になったことを例に、「はみ出し」を語る藤原。痔も言わば身体の外に「はみ出し」たもの。


街の「はみ出し」を探すフィールドワーク

元木さんのトーク後、グループごとに街の「はみ出し」探しが行われました。渋谷の街を散策し、自分たちの思う「はみ出し」たものを発見するフィールドワークです。フィールドワークを終えたのち、午前中に学んだビジュアルランゲージの手法を活用しながら、プレゼンが行われました。

「はみ出す」の定義は曖昧です。しかしだからこそ、様々な解釈のなかで、興味深い発見が集まりました。

あるグループのメンバーは「渋谷はまっすぐ歩くとはみ出すんです」と言います。曲線や人の多い渋谷では適度に身体を対応させなければ「はみ出す」のです。この動きの中にはみ出しがあるという発見に、元木さんも興味を示し、「たとえばカラーコーンを置くことで、人の動きが制限されていく。演劇的に見えるような置き方もできるかもしれない」と新しい「はみ出し」を利用したアイデアが生まれました。


あるグループは、馬券を買ったひとたちが集まる駐車場を発見しました。そこにある新聞屋にカメラを向けると怒られたと言います。駐車場はすでに溜まり場として黙認され、警察や警備員との折り合いをつけており、そこ独自のバランスがあるのです。藤原は「軒を借りる」というように、日本には「はみ出し」を許容する文化がある、と言います。晒さないでくれ、と言われるのは個人の約束事の上にそのバランスが成り立っているから。SNS社会で寛容さがなくなっている中、どうやって秘密の場所をつくるのか、という問いがここから派生しました。面白い「はみ出し」のタネになりそうです。


他にも、「はみ出し」には意識的/無意識的なものの二種類がある、渋谷の街にシールを貼るという「はみ出し」の中にコミュニケーションが生まれている、ポイ捨てに罪悪感を覚えた人たちがルールから少しだけ「はみ出し」てゴミを街の隙間に詰めているなど、数多くの「はみ出し」の報告がありました。

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▲ホワイトボード、プロジェクター、模造紙など、多種多様なツールを使用しながら発表を行なった。

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▲受講生によって撮影された「駐車場」という名の溜まり場。本来の用途外の場の使い方は、独特な文化・コミュニティの発生を意味している。


「明日から、どんな風にはみ出す?」

フィールドワークの締めくくりは「明日から、どんな風にはみ出す?」という問いかけでした。「街にあるステッカーに応答するように別のステッカーを貼るなど、生活の中でみつけた小さいはみ出しに返事をしてみる」「心を無にして街をさまよってみる」「自分について話すときに一日一つ以上のウソをついてみる」「いつも同じ場所だな、とか、いつも同じ時間だな、みたいに思った時にやめて、変えてみる」。受講生の答えからは、新しい発見をこれからしていこうという意欲が湧き出していました。「はみ出すとは全貌があきらかでないことだ」と元木さんは話されましたが、これから受講生たちがどうはみ出していくのかが楽しみです。あなたも今日から「はみ出し」てみては?

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▲『リ/クリエーション』受講生や、ナビゲーターの元木大輔さんなどが参加した交流会の様子。



『リ/クリエーション』ブーストコース受講生募集中!


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世の中にどう発信していくか?自分のストーリーをどう伝えていくか?
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写真:高野ユリカ、リ/クリエーション事務局
文:栗田結夏


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