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富士谷御杖 訳古今集 初稿 巻第七

1.50.2
古今和歌集巻第七
 賀歌
07.0343
  題しらす      読人しらす
我君は千世にやちよにさゝれ石のいはほと成て苔のむすまて
▼我君は 千世に○モゴザラウやちよに○モゴザラウ チイサイ石ガ いはほと成て○ソノ上ニ 苔のハヱルまて○ゴザナサレウ
07.0344 ∥5句訳「ガ」原状
わたつ海の浜のまさこをかそへつゝ君か千とせのありかすにせん
▼わたつ海の 浜のスナゴを かそへテソレナリニ 君か千とせの ガズトリニにせウ
07.0345 ∥4句訳「ト」原状
しほの山さしての礒にすむ千鳥君かみよをは八千世とそなく
▼しほの山 さしての礒に すむ千鳥○ガ 君かみよをは 八千世○ジヤトとナニカシラズなく
07.0346
我よはひ君か八千世にとりそへてとゝめをきては思ひ出にせよ
▼我よはひ○ヲ 君か八千世ヘ とりそへて とゝめをイて○後は オモヒ出スタネニせよ
07.0347
  仁和の御時僧正遍昭に七十の賀給ひける時の御哥
  ▼仁和の御時僧正遍昭に七十の賀○ヲクダサレマシタ時の御哥
かくしつゝとにもかくにもなからへて君か八千世にあふよしもかな
▼コウシテコレナリニ ドウトモカフトモシテ なからへて 君か八千世に あふシヨウナドモアツタラヨカロ
07.0348 ∥詞書2行訳,歌「え」右傍に「枝」として抹消し,「つえ」左傍に「杖」
  仁和のみかとのみこにおはしましける時に御をはの
  ▼仁和のみかとガみこデゴサアソバサレ〈タ抹消〉マシタ時に御をはの
  やそちの賀にしろかねをつえにつくれりけるを
  ▼八十の賀に白銀を〈枝抹消〉杖につくツテゴザリマシタノを
1.51.1
  みてかの御をはにかはりてよみける
            僧正へんせう
ちはやふる神やきりけんつくからに千とせの坂もこえぬへら也
▼〈ちはやふる◎◎◎◎◎〉 神ガきツタデアロウカ つくト云トハヤ 千とせの坂ト云トモ こえテシマイソウニ思ハルヽ
◆〈2句「や」に重ね書き,朱筆〉の
07.0349
  ほり川のおほいまうちきみの四十賀九条の家
  ▼ほり川の大臣の四十賀○ヲ九条ニアル家
  にてしける時によめる
  ▼デイタシマシタ時によめる
            在原業平朝臣
さくら花ちりかひくもれおいらくのこむといふなるみちまかふかに
▼さくら花○ヨ ちりチガヒくもれ 老ト云モノガ こウといふワイソノ みち○ガチラツキドモスルヨウニ
07.0350
  さたときのみこのをはのよそちの賀を大井にて
  ▼さたときのみこのをはガよそちの賀を大井デ
  しける日よめる   きのこれをか
かめのおの山の岩ねをとめておつる滝の白玉千世の数かも
▼かめのおの 山の岩ねを モトメテめておチる 滝の白玉○ハ 千世の数カサテモ
07.0351 ∥詞書1行「五十の賀」の「の」は「十」右下・「賀」右上に小さくあり,後の補入であろう
     ∥詞書1行訳「サシ」は詞書「たて」左傍にあり,「ア」で詞書「ア」右傍に戻る
  さたやすのみこのきさいの宮の五十の賀たてま
  ▼さたやすのみこガきさいの宮の五十の賀○ヲイハフテサシア
1.51.2
  つりける御屏風にさくらの花のちるしたに人の
  ▼ゲラレマシタ御屏風にさくらの花のちるしたに人ガ
  花見たるかたかけるをよめる
  ▼花○ヲ見テヰル図ヲカイテアツタノヲよめる
            ふちはらのおきかせ
いたつらにすくす月日はおもほえて花みてくらす春そすくなき
▼ムサゝヽト すギす月日は ○ナントモおもハレイデ 花○ヲみてくらす 春○ガナニカシラズすくなイ
◆〈2句3字歌「す」に重ねて,朱筆〉る 〈その右傍,朱筆〉る 〈この「る」を前提として直前の訳注「ぎ」が成り立つ〉
07.0352
  もとやすのみこの七十の賀のうしろの屏風に
  ▼もとやすのみこガ〈゛抹消歟〉七十の賀のうしろニタテル屏風に
  よみてかきける
  ▼よンデかきける
            きのつらゆき
春くれはやとにまつさく梅花君か千とせのかさしとそみる
▼春○ガくルト やとにナニカヤメテさく 梅花○ヲ 君か千とせの かさしとナニカシラズみる
07.0353
            素性法師
いにしへにありきあらすはしらねとも千とせのためし君にはしめん
▼マヱカタニ あツタナカツタト云コトハ しらヌケレドモ 千とせの例○ハ 君デはしめウ
07.0354
ふして思ひおきてかそふる万世は神そ知らんわか君のため
▼ヨコニナツテヰテハ思ひ ○又おきて○ヰテハかそヘる 万世は 神○ガナニカシラズ知デアロウ わか君のため○ジヤト云コトハ
◆〈4句「知」左傍,朱筆〉しる
1.52.1
07.0355 ∥訳補入「○コレハイツコフノコトニ」は,歌左傍
  藤原三善か六十賀によみける
  ▼藤原三善か〈゛〉六十賀によみける
            在原しけはる
鶴亀も千とせの後はしらなくにあかぬ心にまかせはててん
▼鶴亀ト云トモ 千とせの後は しリモセヌノニ ○コレハイツコフノコトニアキタラヌト思フ心に まかせヌイテヲカウ
   このうたはある人在原のときはるかともいふ
   ▼このうたはサル人○ガ在原のときはるか〈゛〉○哥ジヤトモいふ
07.0356 ∥歌末尾「は」,「へ」左傍にあったのを抹消して,「へ」下に移した
  よしみねのつねなりかよそちの賀にむすめにか
  ▼よしみねのつねなりか〈゛〉よそちの賀にむすめにか
  はりてよみ侍ける
  ▼はツてよみマシテゴザリマスル
            そせい法し
万代を松にそきみをいはひつる千とせのかけにすまんと思へは
▼万代を 待にナニカシラズそきみを いはフタゾ ○ソノ千とせのかけに すまウと思フニヨツテ
▲ 〈3句「つる」左傍〉鶴ニヨセタル也
07.0357
  内侍のかみの右大将藤原朝臣の四十賀しける時に
  ▼内侍のかみガ右大将藤原朝臣の四十賀○ヲイタシマシタ時に
  四季のゑかけるうしろの屏風にかきたりけるうた
  ▼四季のゑ○ヲカイテアルうしろの屏風にかイテゴザリマシタうた
かすか野にわかなつみつゝ万代をいはふ心は神そしるらん
▼かすか野に わかな○ヲつンデソレナリニ 万代を いはふ心は 神○ガナニカシラズしるデアロウ〈カ抹消〉
1.52.2
07.0358 ∥5句訳「ズ」,墨が薄かったために重ね書きをした歟
山たかみ雲井にみゆる桜花心のゆきておらぬ日そなき
▼山○ガたかサニ 雲井にみヱる 桜花○ヲ 心ガゆきて おらぬ日ハナニカシラズなイ
▲                    心ニ思フニ適ヘルコトニヨセタルナリ
07.0359
  夏
めつらしき声ならなくに時鳥こゝらのとしをあかすもある哉
▼めつらしイ 声デモナイノニ 時鳥○ハ コノイカイコトノのとしを フソクニサテモあるコトカナ
07.0360
  秋
住のえの松を秋かせ吹からにこゑうちそふるおきつしら浪
▼住のえの 松を秋かせ○ガ 吹ト云トハヤ こゑうちそヘる○ハ おきつしら浪○ガ
07.0361
千鳥なくさほの河霧たちぬらし山のこのはも色まさり行
▼千鳥○ノなく さほの河霧○ガ たツテシマウタコトソウナ 山のこのはナドモ 色○ガまさり行○ハ
07.0362
秋くれと色もかはらぬときは山よその紅葉を風そかしける
▼秋○ガクルケレド 色ナドモかはらぬ ときは山○ハ よその紅葉を 風○ガナニカシラズかスコトジヤ
▲                                         貸
07.0363
  冬
白雪の降しく時はみよしのゝ山したかせに花そちりける
▼白雪ガ 降ツヾク時は みよしのゝ 山したかせデ 花○ガナニカシラズちルコトジヤ
07.0364
  春宮のむまれ給へりける時にまいりてよめる
  ▼春宮ガむまれサセラレマシタ時にまいりてよめる
            典侍藤原よるかの朝臣
1.53.1
峰たかきかすかの山にいつる日はくもる時なくてらすへらなり
▼峰○ノたかイ かすかの山に いつる日は くもる時なウ てらすデアリソウニ思ハルヽ


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