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Note 90: ハレマメ エンタ!! [高取英を偲んで] を見に行った

少し前の話になるが、先月7月の20日は、代官山にあるライブハウス「晴れたら空に豆まいて」で行われた「甲斐智陽プロデュース カイチョウ ハレマメ エンタ!! [高取英を偲んで]」を見に行った。

今は、ご承知の通り、なんか病気が流行っていて、多くのライブハウスや演劇が「自粛」を求められている。
これは結構スゴイ話で、「やめろと命令は出来ませんが(したら生活を補償しないといけなくなるから)出来れば止めてください。なお、止めない場合は名前を世間に公表します」と日本政府や東京都に言われているらしい。
ヒャー。
こんなこと要求されて、暴動も起こさずに大人しく引きこもっている日本人はスゴイな。

でも暴動とか起こさないのはマジでエラいと思う。
世界を支配するアメリカ合衆国の例を見れば分かる通り、暴動とか起こしても権力者はべつに痛まない。
傷つくのは弱者だけだ。
でも、その真面目な国民性にあぐらをかいて、好き放題やっている権力者は別の意味でスゴイなと思う。
まあ、現政権になって景気回復したってのも統計偽装によるウソだって話なので、次の選挙で粛々と政権交代させよう。
いや、政治の話なんかどうでもいい。

「晴れたら…」も営業の継続が危ぶまれたが、クラウドファンディングで資金を集めて継続が決まったそうだ。
そしてその公演の1つとして、今回の「高取英を偲んで」が開催された。

高取英さんと言えば、かつての寺山修司のスタッフで、自らの劇団「月蝕歌劇団」を旗揚げして以来、数々の公演を行っている。

キテレツな演劇が多く、若い女優さんがいっぱい出てくる。
ぼくはキテレツも若い女性も大好きだから、この劇団にハマって、公演のたびに3回ぐらい見ている。
そんな高取さんが、2018年の末に鬼籍に入られた。
まだまだ若く、急逝であり、多くの人が悲しんだ。
今も月蝕歌劇団は、娘さんのスーパーコメディエンヌ白永歩美さんによって運営されているが、前述の伝染病の影響で、公演もなかなか難しくなっている。

そんな中で、劇団員の怪優・大久保千代太夫さん(実写版「進撃の巨人」で目を串刺しにされて死ぬ巨人役を演じた人)が「大久保千代太夫一座」を旗揚げし、月蝕の分派みたいな演劇活動を始めた。

思い返せば寺山修司も、亡くなってからその演劇が、万有引力、月蝕歌劇団、劇団A・P・B-Tokyoなどに、タンポポの種子が数多くのタンポポとして花開くように、数々の劇団で繰り返し演じられている。
高取さんと月蝕の演劇も、あちこちの劇団で思い思いに違う解釈で再演され、月蝕の俳優さんたちもそこで演じることで、高取さんの言葉は永遠に生き続け、進化を続けるわけで、脚本家というのは永遠の生命を持つことができる、なんともうらやましい職業だなあと思う。

ということで、大久保千代田夫一座の公演が今年の4月に予定されていた。
ぼくも当然見に行く予定だったのだが、残念ながら中止になった。

今回の「晴れたら…」でのライブは、そのリベンジということで、高取さん、寺山さんの演劇にはめ込まれた詩の世界を、朗読と歌で綴ったものである。

公演の形式はオンライン公演ということで、YouTubeの有料配信で行われた。
それに加えて、30人の限定ライブも行われた。
ライブを見た人は家でYouTubeも見られるというお得な方式。
勇んで参加した。
(ここからようやく当日…)

代官山の「晴れたら…」は、地下2階の小さなコヤだけど、音が良くて良かった。
初めてのコヤは本当に緊張するけど、月蝕の観劇でしばしばご一緒する人と一緒になって良かった。
客の出足が遅くて、4人ぐらいで見られるのかと思っていたが、そんなはずはなくて30人入ると結構ギッシリ。
縁起物ということでコロナビールを飲んだ。

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コヤヌシの甲斐智陽さんはシンガーソングライターでもあって、最初は甲斐さんのギターの弾き語りで始まった。
朗々とした声が良く響いてよかった。
そこに海坊主のような大男の千代田太夫が大音声を唱えながら現れ、「疫病退散 コロナ撲滅」と叫んで火を拭いた。
いい。
これでだいぶコロナ禍も多少収まったのではないだろうか。

そこに赤襦袢を着た白川沙夜さん改め堂本レイさんが登場して、美しく舞いながら詩を朗読すると、一気に月蝕の世界に引きずり込まれた。

今回は堂本さんの他に、超・お久しぶりの百津美玲さんと、いつ見ても謎の美少女の慶徳優菜さんというぼくの激推しツートップを始め、前澤里紅さん、はるのうらこさん、川井瑞恵さん、美香さん、しのはら実加さんと、超・豪華な女優陣で、数々の演劇の中から詩と歌の部分を切り取ってリミックスした、オペラのアリア集のような趣のライブである。
どの演劇も何回も見ているので、その中の花火の名場面がフラッシュバックして、つぎつぎに思い出が沸き起こって良かった。
いいなあこの形式。
何回もやって欲しい。

そして唐十郎の片腕と言われたレジェンドの怪優、大久保鷹さんが登場。
怪優多いな!
実は大久保千代田夫さんは以前、大久保鷹さん公認で「新大久保鷹」を名乗っていたこともあるのだが、紛らわしいから?やめたみたいだ。
鷹さんはさすがの迫力で、ガチの変な人が演劇に紛れ込んだような雰囲気を出していてビビった。
最後の名乗りで「高取!なぜ逝っちまったんだ!」と涙ながらに絶叫していたのが感動的。
ということで、僅かな時間だが内容がギッシリ詰まった公演だった。

客席に出てこられた、今回構成を担当された堂本レイさんに「今日は、月蝕が濃縮された内容ですね」と声を掛けると「そうですね、ギュギュッと」と笑っていたので「結晶したみたいな舞台でした」と言うと「アー結晶、いい表現ですね」と言われて嬉しかった。
考えたらあんまり月蝕、げっしょくとばかり言っているのも失礼な話であって、高取さんが寺山をリミックスして自分の世界を作ったように、この日の舞台も高取さんの世界を換骨奪胎して、新しい、2020年コロナの年にこそ意味のある舞台を作り上げたことに拍手を送るべきだ。

今日の舞台はここで終わらず、日活ロマンポルノで鳴らした「帝王」久保新二さんの自由過ぎるフリートークに続けて、なんと!三上寛さんのライブがあった。
あの三上寛さんですよ。

ぼくは中学生時代?九州の田舎にいて、寺山修司という名前も知らなかったが、タモリがしきりにモノマネをするので知っていた。
(まだ映画「上海異人娼館」とかのCMをラジオでやってたから寺山存命中)
それで、テレビ(永六輔がホストだった「テレビファソラシド」?)でタモリの寺山と、三上寛の寺山が議論をする、という企画があったのだが、それが爆笑だった。
タモリ寺山の方が、話の内容が薄いので(当たり前!)次第に追い込まれ、三上寺山が論破して終わり、というネタだったと思う。
それをキッカケにURCレコードから復刻されたレコードを聴いたりしていた。
大好きだった「BANG!」はなんとバックが山下洋輔トリオで、昔はジャズもフォークも垣根がなかったんだなー。
(「BANG!」は絶対の傑作なので聴いてください!)

ということで、生の三上寛を見られて驚愕+感動した。
最初に思ったのは、丸坊主じゃない!!
三上寛の頭皮って髪の毛が伸びる機能があったのか…。
なんとなく三上寛、山下洋輔、坂田明は必ず丸坊主なのかと思ってた。
三上寛の歌は、美しく高い高音と、低い低いナレーションのような語りの対比が特徴的で、ぼくのイメージの中での、青森の風景を思わせる。
そんなところで寺山の詩の世界とも空間にポッカリ空いた穴から繋がった気がした。

いやー観に来て良かった!!

高取英メモリアル公演としては、来週の8月20日から下北沢ザ・スズナリで流山児★事務所による「寺山修司−過激なる疾走−」も演じられる。
高取さんによる寺山さんの一代記である。
月蝕からは白永さん、石津ゆりさん、そしてスーパーダンサー岬 花音菜さんが出演される。
廻天百眼から紅日毬子さんも出演されるということで、これまた超豪華だ。
(高野美由紀さんも出演を予定されてたが、コロナとは別の病気で降板。残念!)

昔みたいに週に2回も3回も劇場に通うことは出来ないが、少しずつ演劇も見たい。
国の政府も、東京都も、エンタメ業界や「夜のお店」など、不要不急な業界には冷たいが、アノネー、言っておくけど、不要不急なことこそ、人間が人間らしく生きている意味なんですよ!!
「遊ぶことは冒険することであり、試すことであり、知ることである」
ということで、無理のない範囲で演劇を楽しみたい。

(この項おわり)

会社員兼業ライターの深沢千尋です。いろいろ綴っていきますのでよろしくです。FaceBook、Twitterもやってますのでからんでください。 https://www.amazon.co.jp/l/B005CI82FA