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サイボウズのSaaSが4年9カ月で15,000社のクライアントを獲得した方法を決算書から読み解く

サイボウズ株式会社は、グループウェアを開発する会社です。国内でもトップレベルのシェアを誇り、主力製品の一つである「サイボウズOffice」は50,000社を超える企業が導入しているツールとなっています。


サイボウズの歴史


サイボウズを作った青野氏のバックグラウンド

1971年、愛媛県今治市生まれ。愛媛県立今治西高等学校を経て大阪大学工学部卒業後、松下電工へ入社し、BA・セキュリティシステム事業部営業企画部に在籍。同社での勤務経験を経て、1997年にサイボウズを愛媛県松山市に設立し、取締役副社長に就任。設立時、は営業やマーケティング担当としてWebグループウエア市場を切り開くことに尽力した。その後、「サイボウズ デヂエ(旧DBメーカー)」「サイボウズ ガルーン」など、新商品のプロダクトマネージャーとしてビジネスを立ち上げ、事業企画室担当、海外事業担当を務め、2005年より代表取締役社長。

1971年 愛媛県今治市生まれ。
1994年3月 大阪大学 工学部 情報システム工学科 卒業
1994年4月 松下電工株式会社 入社
1997年8月 サイボウズ株式会社設立 取締役
2005年4月 代表取締役社長 (現任)



パッケージからクラウドへ移行するサイボウズ

2016年1月〜6月末の間に、サイボウズが獲得した収益は40億円です。そして売上原価はわずが2.4億円で、粗利益率は94%と非常に高い数値となっています。

粗利益率が高い会社はどういう体制になっているかというと

①高単価の商品を提供している(つまり大企業や政府などがクライアントの可能性高い)
②クラウドサービスなど商品を完成させると製造費などの直接的な原価があまり発生しない

の2つのどちらか、またはどちらにも該当している可能性が高いと言えます。

サイボウズの場合はどちらも当てはまります。

①クライアントは大企業も多く、客単価が高い
②パッケージ・クラウドサービス共に開発期を終えており、原価が増えない

またサイボウズにはパッケージとクラウドの大きく2つの事業がありますが、クラウドのサービスが圧倒的に伸びています。

パッケージの2Q売上高は、21億円(収益全体の53%)
クラウドの2Q売上高は、18億円(収益全体の46%)

となっています。

昨年度末の時はクラウドサービスの収益シェアは39%だったところ、順調に収益シェアが伸びています。


サイボウズの顧客獲得チャネルとは

販管費の内容を見ると

人件費が13億円(販管費全体の40%)
広告宣伝費6.1億円(販管費全体の20%)
業務委託費2.6億円(販管費全体の8%)
その他10億円(販管費全体の31%)

となっています。

販管費の構成を見ると、どのようにクライアントを獲得しているのか見えてきます。

例えば販管費の中で、人件費が大きな会社は営業人材を抱えていて、顧客へ訪問して商品を提案するアウトバウンドな戦略も採用している可能性があります。

一方で人件費が小さくて、広告宣伝費の金額が大きな会社の場合、積極的に広告やマーケティングを展開するなど、露出量を増やすことで問い合わせを集めることが重要で、かつ導入時の工数が少ないサービスをやっている可能性があります

Slackなどのサービスだと、ユーザーはまずサービスを無料で使い、使い方を理解した上で、スムーズに有料プランに移行するので、説明や導入指導をしてもらう必要がありません。なので販管費の人件費は大きくないことが想像できますよね。

業務委託費の金額が大きい場合、代理店スキームを採用している可能性があります。営業リソースを自社に抱えず、営業活動は外部リソースを活用していることが想定されます。

サイボウズの場合は、人件費のシェアが高く、しっかりと営業人材による提案営業などを行っている可能性が高いと思われます。また過去の有価証券報告書にも記載がある通り販売パートナーやエバンジェリストなどの制度も運用しており、外部の営業リソースを積極的に活用してます

営業利益が5.8億円で、営業利益が14.6%となっています。前年同期は11.1%だったため、大きく向上しています。この原因としては、販管費を低下させるクラウドサービスの収益シェアが大きく伸びたことが挙げられます。

2008年くらいからパッケージ型のサービスから、クラウド型のサービスに事業の主軸をシフトする取り組みを行っていて、その影響が顕著に出ているかと思います。


少し怖いと思ったバランスシート構造(補足あり)

サイボウズにおいて、少し不安な点をあえてあげるとしたBS側だと思います。特に流動負債と現金預金+売上債権の金額差を注目する必要があります。

現金及び預金が18億円
受取手形と売掛金11億円
流動負債(1年以内に返済義務のある負債金額)が25億円です。

つまり売掛金がもし回収できなければ、流動負債を返済するのに何か策を打たなければ、現金預金だけでは資金ショートしうるということです。もちろん借入など対応策は用意されていると思います。


==以下、青野さまのフィードバックなどを受けて補足==

勘定項目ベースの大枠分析では上記の通りですが、より詳細に読み解いていきますと、

1.流動負債の半分以上を占めるのが前受金であり、返済不要
2.クラウドサービスはいざというときにはサービスを停止できることもあり売掛金回収リスクは低い

という特徴があるため、大枠分析よりも実態は安定しています。


SaaS型ビジネスの20,000円というライン

まず開示されている情報を並べると

クラウド関連事業の2Q売上高は18億円
クラウドサービス「cybouz.com」の契約クライアント数は約15,000社

以上のことから非常に単純計算ではありますが、1社あたりの平均2Q売上高は120,000円となります。これは6ヶ月の売上高なので、月計算になおすと、1社あたりの平均月次課金金額は20,000円となります。

SaaSと言っても多様なプロダクトが世の中に流通していますが、大企業も含めてサービス提供をしているサイボウズの平均課金額が20,000円/月というのは貴重なデータかと思います。

顧客1社あたりの広告宣伝費や人件費などをこの20,000円という数値以下にすることが一定の基準となる可能性があります。もちろん現状は開拓期であるため、今後ARPPUが向上していく可能性あはります。


SaaSクライアント数が15,000社になるのに要した年月

過去の有価証券報告書を見ると、クラウドサービスの契約者数が5,000社を超えたのは、サービス提供開始から2年になっています。サイボウズは年間数億円を広告費に投下し、営業人材も社内外に豊富に抱えていることを考えると、もし同様のプロダクトでそれ以上のスピードでクライアントを獲得するためには、何かしら工夫が必要だということです。

クラウド事業スタートから4年9か月で15,000社までクライアントを増やしています。毎年数億円の広告宣伝費、200社を超える代理店を抱えているサイボウズではありますが、2次関数曲線でクライアントが伸びているわけではありません

SaaSビジネスを展開するスタートアップはこれらの数値を頭に入れて、スプレッドシートを描いておく必要があると思います。


サイボウズの実績値を考慮すべきスタートアップとは

もちろん、これらのサイボウズの数値は推測の域を出ないですし、そもそも時代や資金規模、事業ポートフォリオも異なるため、現在SaaS系スタートアップとして事業を創出している方におかれては、データを鵜呑みにすることはお勧めできません。

しかし、一つのデータとして意識しておくことはメリットでもあると思います。特に中小企業の業務効率化系のツールを運営するスタートアップには重要な指標だと思われます。


【関連するプロダクトなど】

・freee
・マネーフォワード
・Bizer
・SmartHR
・ちきゅう
・Gozal
・board
・クラウドサイン
・Toreru

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コメント4件

サイボウズの青野です。素晴らしい分析をありがとうございます。ほぼ合っておりますが、いくつかフィードバックをさせていただきますと、1. 流動負債の半分以上を占めるのが前受金で、これは返済不要です。2.クラウドサービスはいざというときにはサービスを停止できることもあり売掛金回収リスクは低いです。3.クラウドサービス開始からまだ4年9カ月で、導入ペースは上がってきています。 取り急ぎ気付いたことは以上です!
青野さま コメント頂きまして、誠にありがとうございます。こちら実際の記事にすぐ反映させていただきます!
ありがとうございます!
こちらこそありがとうございました。
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