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スイスにDXを学びに行ってきました

※こちらは2019年12月24日にATARAサイトにてCEOブログに掲載されたものの転載となります。


参加のきっかけと理由

今年、2019年11月の最終週の1週間ほど、スイスのローザンヌにあるIMD(International Institute for Management Development:国際経営開発研究所)にデジタルビジネス・トランスフォメーションをテーマにした短期プログラム(Leading Digital Business Transformation)に参加してきました。

IMDはグローバルMBAランキングなどで世界最高峰のプログラムと評価されているビジネススクールの一つです。トップの写真がその校舎です。

受講のきっかけですが、デジタルビジネス・トランスフォメーションについては日々のコンサルティング活動の中でお会いする企業が直面している感覚はあったのですが、その定義から対応方法まで、漠然とした認識しか持ち合わせてなかったところ、本プログラムを受講した経験のあるGoogle時代の元チームメイトから本プログラムを推奨されました。

特にデータやデジタルの活用を主軸に置いた企業文化をどう醸成していくかに興味がありました。

これは行かないと!と思い、すぐに応募しました。これが6月のこと。

オンラインでの審査を経て、受講可能ということでしたので、 手続きを済ませ、11月を待ちました。海外は慣れているほうですが、スイスも留学も初めて。渡航・宿泊や事前準備について親切に連絡をくれ各種手続きをサポートしてくれるコーディネーターがいたこともあり、比較的不安は少なかったです。受講者向けのオンラインポータルにアクセスできるようになり、プログラム内容を見たりしてました。事前課題もポータル経由で与えられました(開講直前にようやくきたので読むのは大変でしたが笑)。

10月に入って、オンライングループで受講者同志が連絡を取り合えるソーシャルのグループが開設され、自己紹介が始まりました。地元スイス、フランス、ブラジル、ドバイ、メキシコ、チリ、フィンランド、アメリカ、ウクライナ、香港、日本と受講者の出身も多彩。どんな仲間に会えるのかワクワクでした。

そして、とうとうその日がきました。行きはブリュッセル→ジュネーヴ経由でローザンヌに入りました。幸い、ジュネーブ近隣に元同僚が住んでいて、空港からホテルまで連れていってくれたので助かりました(感謝です!会えて嬉しかった)。

ローザンヌはオリンピックのIOC本部やオリンピック博物館(とてもよかったです。下の写真がそこ)がある、レマン湖半の小さな町。のんびりとした町で素敵なところでした。

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プログラムの内容

さて、プログラムについてです。教授は4名。

著書「DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる」、「対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方」の著者、マイケル・ウェイド氏他3名です。

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55名の大所帯なので、自己紹介は各テーブルで行います。1テーブル5-6名。毎日席替えがあるので、受講者の国籍や所属組織がわかってきますが、ほとんどが誰でも知ってるような大企業の方々。役職もCEO、CTO、CIO、CDO、地域を統括する代表など。業種もCPG、自動車、金融、食品、化学、石油、重工業、たばこ、旅行、製薬、精密機器、政府、NGOという形。純然たるITとかインターネット関連は正直私だけで、ほとんどが旧来からある業種の企業の方でした。

参加理由を聞いてみると:

「業界がすでにディスラプションを受けている」

「ディスラプションを受けそうなので、防衛術を学びに」

「CDOに任命された」

「2025年までに政府としてデジタル・トランスフォメーションを完了することが目標になっている」

「企業から定期的にIMDの本プログラムに送り込まれている」

という感じで、このプログラム参加に対する本気度は相当高い印象でした。

「デジタル」って何?「デジタル・ディスラプション」って何?というようなベースとなる定義の確認から始まり、とにかくさまざまな企業のケースをこなしていく形です。

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ディスラプションを起こした企業のケース、成功したケース、あまり成功していないケースも含めカバーしました。グループディスカッションをたくさんこなします。前述の通り、違う国からきている人たちの集まりなので、必ずしも英語がネイティブではない人も当然いますが、みんな発言は活発です。待ってたら何もディスカッションに貢献できないので、一生懸命話します。言うまでもなく、いろいろな意見があるので、刺激にもなりますし、時折ヒートアップもします。

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1日が終わるとかなりヘトヘトな感じになりますが、なかなか日々得られない新鮮かつ刺激の多い情報に触れ、心地よい疲れ、という感じです。

ランチはキャンパスのカフェテリアで。食べながらネットワーキングします。なんで参加したの?どんな取り組みしてるの?とか。初日と最終日前日の夜に合同ディナーがありましたが、それ以外は翌日の課題を読み込む時間に充てます。

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4日間を通じて、デジタルビジネス・トランスフォメーションに対応するための、または仕掛けるための考え方や進め方の基本的なフレームワークを学びます。グループワークで、自社に当てはめたときや、架空の会社に当てはめたとき、どうなるかというロープレを行い、刷り込みをします。当然5日間のコースでは深堀りはできないのですが、DXを自社に当てはめた戦略作りのファンダメンタルな考え方は身についたかと思います。エッセンスは前述のウェイド教授の本に掲載されていますので、ご興味ある方はぜひご一読ください。

中国のデジタル環境については半日かけて講義を受けます。グリーヴェン教授は中国とスイスで生活するオランダ人の先生ですが、中国市場について相当研究されていて、とても面白い内容でした。Digital Giants 1.0/2.0、彼らの巨大なエコシステム、台頭するTiktok、超監視社会、生活ですでに恩恵を受けているビッグデータ活用、などなど。

DX推進を擬似体験できるCBT

最終日はそれまで学んだことの集大成という感じで、半日間CBT(Computer-based Training)を行います。グループに分かれてコンピューターのシミュレーションをしてパフォーマンスを競います。自分は架空の建設会社のCOO。デジタルビジネス・トランスフォメーションを会社の重要なテーマに掲げる創業者兼会長から、5つのDXプロジェクトを推進するよう命じられます。他のCレベル、現場の実行チーム、監督官庁や組合などとも折り合いをつけながら、上限予算と期間内にプロジェクトを完遂し、プロジェクトによる収益合計が最も高かったチームが勝者となります。

6名のチームで役割を決めます。PCの操作担当(PCは1台なので)、書記(黒板に戦略やTodosを書く)、タイムキーパー、Cレベル担当、現場担当、外部ステークホルダー担当に分かれました。自分は外部ステークホルダー担当。

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インパクトの大きいプロジェクトになるほど人の安全に関わってくるので、フルスケールでやるのか、ハーフスケールでやるのかで判断が分かれます。また、しかるべき社内外のステークホルダーや社員に適切なタイミングでコミュニケーションを図り、理解を得たり(当然反対者は大勢いるシナリオ)、アップデートを行ったりしないと、それぞれのステークホルダーには感情メーターがついており、不満足レベルが高まるとどんどん赤い表示になっていきます。あと、向こうからも容赦なくクレームめいた電話やメールがわんさか飛び込んできます。それぞれの関係者へのコミュニケーション担当は、誰にどういったコミュニケーションをいつどのくらいするか、相性のいいインフルエンサーを使うかどうかなども含め、スピーディに考え、PC操作担当に指示を出します。

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3年の期間に渡って起きることを3時間という限られた時間でこなすので、相当忙しいですし、いろいろなバランスを取る必要がある。でも、優先順位を間違うとあっという間にパフォーマンスが落ちるという感じです。チームメンバー皆、相当焦りますし、意見の相違もあったりしますので、判断が出ずに紛糾もします。

チーム内、CBT内でも思いましたが、コンセンサスを得るためのコミュニケーションはいくらやってもやりすぎることがないというのが最大の学びだったかもしれません。そして、小さな成功を積み上げていくことも大事ですが、インパクトが見えなさすぎると組織での賛同がなかなか得られないということも学びました。

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最終結果が出て、私のチームは4位でした。まずまずの結果でしたが、もっと上位にいけたので悔しかったです。反省点としては、やはりプロジェクトの優先順位の付け方。そして、より多くのコミュニケーションをスピーディにすればよかったと思いました。

このCBTは、IMDでも比較的新しいもののようでしたが、よくできてるというか、シミュレーションとはいえ、重要なポイントを刷り込むのにはとてもいいなと思いました。

写真は優勝チームの皆さんw 帽子欲しかった。

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ということで、全課程を修了し、修了証書も無事にいただけました。嬉しかったですね、やはり。

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お別れのディナーは盛り上がりました。みんな一定の達成感や開放感でスイスワインが進みました。

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参加しての感想

今回、IMDのプログラムに参加してとてもよかったと思いました。日々どうしても忙しくしている中、時間をとって、リモートな場所で落ち着いてこういったことに没入できたのは貴重だったと思います(妻と社員に感謝)。

体系的にデジタルビジネス・トランスフォメージョンを理解でき、対応フレームワークをある程度使えるようになったのは自信につながった感じがします。

西洋諸国や中国のプラットフォーマーへの見方がよりシビアになったというのも挙げられます。もっと目を向けていこうと思います。

そして、世界中の仲間とのネットワーキングは貴重な財産になりました。卒業生向けのオンライングループも活発なので、プログラムが終わってそれぞれの国に帰ってからもコミュニケーションは続いていいます。

やはり生涯新しいことを学んでいくことは大事だなと思いました。毎年こういったことはできないですが、学びの時間はもっととっていこうと思います。

IMD – Learning Digital Business Transformation
https://www.imd.org/ldbt/digital-business-transformation/

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