あなたのキャラは、いまどこで何をしていますか ~創作キャラの積み重ねていく軌跡~

この記事は、
定期ゲやったことある人たちのアドカレ Advent Calendar 2020
(通称わたカレ(でいいの!?))の9日目の記事です。

8日目:今だから語りたい!メイク・グレートウォール・グレート・アゲイン
10日目:ナラティブな体験は人を孤独にするという話(もしくはアンジニティとセルフォリーフの話)


1 はじめに

公開時間が0時なのでこんばんは、神木せつなです。
なにやらすずさとさんから、近辺の人でアドカレ書く~という話がでてきたので、別のアドカレにも記事を書く予定をしつつ、せっかくなので向こうとは別のことを書くか~と乗ってみました。フリーテーマらしいので、思いついた好きなことを書きます。

定期ゲー、というより創作に若干絡みつつ、趣味の混じった歴史絡みの話をしていこうと思います。
2番の最初のほうで頭が痒くなってきたら、回れ右するか、飛ばして本題の3番へ飛びましょう。

こういう言葉で表していいのかよく分からないところはありますが、最初に提示しておくと、創作キャラのことを、そのキャラの軌跡や歴史という軸でみたら、という自分の観方の話です。
とにかくロールをしたい!とか、いろんな表現をしたい、という発想とは全く別のところ。その創作キャラを、歴史上の人物のことを見るように、どうしてこういうロールや設定、表現がされているんだろう、そこに至るまでにどういう経過があったんだろう、といった視点を前提にして、この文章を書いています。

2.個人の歴史・過去を描くということ

さて、突然ですがルイ・フランソワ・ピナゴという人物を御存じでしょうか。おそらく、ほとんどの人が知らないと思います。(知っていたら逆に驚くんですが。)
歴史上、というと大仰ですが、過去にいた人物だそうです。
この人物の名前は、アラン=コルバンの書いた、邦題『記録を残さなかった男の歴史―ある木靴職人の世界 1798-1876』という本で知ることができます。

どこかで何かを発見したとか、当時なにかで功績を残したとか、そういうことは特にないそうで、1798年にフランスの農村で生まれて、木靴職人として生きて、記録では1876年に亡くなったそうです。
伝聞系で書いているのは、もちろん自分もこの本を読むまでは、このピナゴという人の名前なんて聞いたこともなかったからです。

1800年頃のフランスというと、フランス革命の後、ナポレオンが台頭した時代ですね。そのあと王政復古だったり七月革命だったり二月革命があったりしますが、そのあたりは好きな人がWikipediaあたりで調べるとして。
その地域の徴兵記録、土地の記録、取引の記録、税の記録などから、どんな状況にあったかなどが調べられて、挙げた書物で紐解かれていったものの、その上で簡単に来歴を言えば、それだけです。

それだけ。

ナポレオンマリー・アントワネットといった、この時代のフランスで著名な人物とは違って、ルイ・フランソワ・ピナゴという個人の名前はこの本が出なかったら、200年後の世界で少しでも知られるということはなかったでしょう。当時でも、住んでいた農村以外ではほとんど知られていなかった可能性のほうが高そうです。

考えてみれば当たり前の話ではありますが、膨大な過去の中で個人を拾い出すという作業は、研究者が本気でやるレベルの、とても難しくて大変な作業です。
自分たちの祖父母以前の家族のことを調べようとしても、戸籍等以上の記録が出てくる人はほとんどいないでしょう。
自分のことを振り返ってみても、いつ頃小学校、中学校、高校に通っていて~、といったこと以上のことを、詳細に記録している人のほうが稀有じゃないかと思います。(当時の日記が残っている人はどれくらいいるでしょうか。自分はそもそも書いてなかったか三日坊主で終わっていました。)

上述の本は1999年頃のもので、インターネット上の情報も今ほど多くはなかった時代です。今だったら、インターネット上で日記、ブログ等を公開していれば、どんな人だったか、何をしていたかなど(その信頼性の担保は別として)分かることも多くなっているかもしれませんが、なんでもかんでも分かるわけではありません。

3 でもキャラ創作だったらいくらでも創れるんですよね

個人の歴史や過去を実際に拾い上げるというのは、現実では難しいという話でした。
そんな難しい個人の過去というものの拾い出しを、キャラクター創作という文化は簡単にやってのけます。創れば良いので。
定期ゲームをすればその更新結果が残り、いろんな場所でロールプレイをすればそのログが生成されます。

記録などを基に正確に再現・叙述するんじゃなくて、設定を自分で一から創っていくんだから差が出て当然で、比較するのが正しいものかというと、そうではないんですが。
また、事実とは何ぞやといった話も横に置いておこうと思います。巷では、誰某の架空の妹であることをうたう謎のマシュマロが飛び交ってるなんて話もあり、いつのまにか実在すると思われないといいね(思われたらそれはそれで面白い)と思いながら、流れてきたら面白がって見てます。話が逸れました。


定期ゲームだけに限らず、たくさんのキャラクターがいろんな過去(各種定期ゲー作品等への参加も含む。)を持っていて、いろんな創作の中で動いていることだろうと思います。(そんなに過去を設定しないこともあると思いますが。)
昨年のアドカレの記事で、創作世界設定に関する記事が書かれていましたが、創造するという行為は、世界設定に限らず、キャラ個々人の細かな過去設定などにも当てはまりますね。(『キャラ創作』というのだから、あえて言うまでもない話かもしれませんが。)
定期ゲ・鶏 Advent Calendar 2019 最終日『神になろう! ~創作世界設定のススメ~ 』
そのキャラクターが、どういう世界にいて、その作品やロールプレイに至るまでどういう出来事があって、どういう関係性の中で生きてきたのか、その先へどう繋がっているのか
紹介した記事でいう、(その時点の)キャラクター周辺の世界設定=横軸の設定の広がりだとすれば、そのキャラクターなどの過去の設定やこれまでのやりとり=縦軸の広がりとも言えるんじゃないかと思います。

どちらのほうが必要というわけでもなく、どちらも広がれば広がるほど、管理や状況整理が大変ではあるものの、それだけキャラクターに奥行きを与えるものになります。

4 言動ひとつひとつがキャラクターを形作っていく

やりとりが続くと、キャラクター間でいろんな事実が蓄積していきます。直接やりとりがなくても、知り合いの知り合いから情報を得たりすることもあると思います。
そうして、以前出てきた相手の設定ややりとりを使って話を進めたりするということも、無意識にしている方は多いのではないでしょうか。
極端な話、現在進行形の会話でさえも、その連続です。
相手がこう言ったから、こう返す。
それに対して、また相手の受け止めを経て返ってくる。
定期ゲが更新されてこういう結果になったから、こういう日記を書く。
TRPGで、判定がこういう結果になったから、こういう動きをする。

その場で、その発言が、行動がどうだったかをいちいち振り返ったりする暇や余裕はないかもしれません。
しかし、そのときはなにも意識していなかった何気ない言葉や動作が、後でなにか別の意味を持ってきたりすることも、あるかもしれません。
自分には大した意味はなくても、相手や、ほかの誰かにとっては大きな意味を持ったりするかもしれません。

以下は、自分はこんな感じで過去に行っていたやりとりを使っているというケースです。(それぞれPLさんにログの掲載許可をいただきました。ありがとうございます。)

①葛子さんの苗字
葛乃葉狐と関連する安倍葛子さん(イバラシティEno.263 テスト時Eno.959)とのやり取り。知っている情報を紹介するだけで1記事書けそうな気がしますが割愛します。
本稼働→テストプレイの間に、諸事情により『安倍』→『犬前』と苗字が変わっていて、自分のキャラクターの満月は、こちらの都合もあり、その設定変更のとおり『犬前』という苗字で覚えていて、葛子さんの『安倍』姓や葛乃葉狐絡みの設定も、正確に覚えていない形にしました。
本当の自分の苗字を知っていると思ってくれているゆえであろう質問だったのに、この時点では期待を裏切るような応答をしているので葛子さんには大変申し訳ないことしてますね。

葛子さん2

代わりに、テストプレイでキーアイテムとなるお守り(白地で五芒星が描かれた朱の布のお守り)を頂いていたので、

葛子さん1-1

使わせていただいて、後から事情を聞かせてもらいました。

葛子さん4


個人的に重要視したのは『わしと晴明で』という言葉で、この言葉がなかったら、別の理屈付けを考えていたかもしれません。
覚えているかをあやふやにした葛子さんの葛乃葉狐の設定からは直接結び付けずに、晴明桔梗のお守り+わしと晴明で作ったもの⇒葛子さんに本当の苗字があるとしたら『安倍』という思考にしています。

地の文ではそんなに書いていないですが、下敷きになるものとして、葛乃葉狐の伝説や、晴明桔梗(五芒星)が共通項になっています。お互いの背景設定に、日本における伝説との関わりがあるからできたやりとりだったなあと思っています。(満月も稲荷信仰の関係者だったり、安倍晴明の話はまた別口で知る環境にありました。)

②イブキくんの(妹じゃないけど)妹
ソラニワに参加していた山風依吹(Eno.4)くんの従妹、ソラニワGFに参加した山風凪穂(Eno.29)さん。なぎなぎ。とのやり取り。
うちのキャラクターのシロナに会いに来たところです。
地の文では義理の兄と書かれていますが、会話文上はおにいさま、妹と言っているので、単純に言葉だけ見ると兄妹かと思います。

イブキ一人っ子

改めてみると、罵声とドスを効かせた(つもりの)返しという、なかなかひどいやりとりですね。この二人はここが初対面ですが、既にイブキくんというキャラクターを介した繋がりがあるから許されるようなやりとりです。他人のキャラにメス犬とか言ったり、威圧的な応対をするときは、相手を選んでやりましょう。
『妹』という言い分ですが、ソラニワ時にこんなやりとりをしていました。

イブキ一人っ子1

そういう理由で、妹って言ってるけど妹ではないのではないか、と気づきました。
思い出せなかったらそのまま、そうなんだと思っていて、また違った流れになっていたかもしれません。ただのメス犬扱いされていたかも。

イブキ一人っ子7


こういった、誰かとのやりとりに限った話ではなく、一人での独白(ソロール)や、というか自分のことだけ書いた日記なんてのも、事実の積み重ねにほかなりません。誰かとのやりとりのほうが波及的に広がりやすいという点はあるものの、それしか方法がないというわけでもなく。
ソラニワGFで、全体チャットの中に、草原や河原、森といったロケーションで区切られた周辺チャット機能が実装されましたが、その場にいるのは自分一人でも、いる場所という環境の変化をゲームの中で拾うことができるので、とてもソロールがやりやすかった記憶があります。


5 やりとりがなくたってキャラクターはそこにいる

さて、今までの話は、ゲームへの参加やロールプレイなど、なにかしらのやりとりがあったという事実があることを前提に書いてきました。
ひっくり返すような話ですが、創作の上では別に現実にやりとりがなくったって良いと個人的には思っています。
そのキャラのロールプレイなどをするにあたって、一挙一動すべてを書かなければいけないなんていうことはもちろんないし、文字に書かれていなかったら、表現されていなかったらそこにはなにもない、なんてことはないからです。
創造されたものの中で、表現されていないその空白、間隙には、想像するという余地が残っています。創造と想像、同じ発音で似た領域で使われやすい言葉同士なのに不思議ですね。今思いました。
あえて書かない、なんていう表現だっていっぱいあるのだから、創作キャラを動かしてあげるという目的に、必ず、どこかでロールしなきゃ、とか、どこかに出さなきゃ、とか気負う必要はないんじゃないかなあと思ったりしています。

ゆっくり頭の中ででも、今、どんなことをしているだろうなあ、と考えればそれだけで、創作キャラというのは動いていると言っていいと思います。それが文字や絵といった形になって外に出るかどうかは、また別の話として。

6 おわりに

創作キャラについて積み重ねていくやりとりや思索を、過去とか軌跡とか歴史とか、なんというかは別にして、そういうものに焦点を当てる話をしてきました。
ここまでは、自分の話をつらつら語ってきただけです。
似たような感じを持ったことがあったり、はたまたあまり感覚が理解できなかったりしているかもしれません。

ここまで5000字くらいらしいので、ここまでしっかり読んでくれた方にしてみれば、少なからず自分のキャラが今何をしているか、考える時間を減らしてしまったことになりますね。

さて。
せっかくなので、最後に、思い浮かんだあなたの創ったキャラが、さっきまで、今日、最近、この前、どこで何をしていたか、思い浮かべていただいて、終わりにしようと思います。

もう遅い時間だから、布団やベッドに入って寝ているでしょうか。
大事な人と一緒にいたりしているでしょうか。
先のクリスマスやお正月のことを考えたりしているでしょうか。
夜にひっそりと外に出かけて街を調べたりしているでしょうか。
図書館で目をこすりながら調べ物をしていたりするでしょうか。
外に降る雪を眺めていたりするでしょうか。
どこかのアパートの地下で幽霊みたいになって謎の念を飛ばしたりしているでしょうか。
幼馴染を泣かせちゃったりしているでしょうか。
どこかに戦いに出たりしているでしょうか。
冒険者になっていろいろな場所を巡ったりしているでしょうか。
楽しかった秋のお祭りの日々を思い返したりしているでしょうか。

それが表に見えるようであってもそうでなくても、
それが誰かに知られていてもいなくても。

あなたのキャラは、どこで、何をしているでしょうか。
それがいつか、またどこかにつながっていくかもしれません。