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赤木俊夫さんを死なせるニッポン

 森友学園の不正事件にからんで自殺してしまった関西財務局の赤木俊夫さんの妻、雅子さんが、元財務相理財局長佐川宣寿を相手どっての訴訟が続いている。

 事件が明るみに出たとき、これは財務省の中間管理職が自殺するな、とは、多少この国を知っている者なら誰もが思ったことではなかっただろうか。赤木さんもそんな「ケース」のひとつだった。ちがいは、赤木さんが刻明な記録を残してくれたことだ。

 雅子さんにインタビューをし、本も書いた現大阪日日新聞記者の相澤冬樹氏と、元経産官僚古賀茂明氏の対談が、Harbour Business Line に掲載された。言うまでもなく、相澤氏は、もとNHKの記者で、森友学園問題を追跡したために首になったひとだし、古賀氏は、報道ステーションのコメンテーターとして I'm not Abe と書いたフリップを番組で提示したことから、アベの手がまわって、番組を降板させられた人物である。


このままでは「第2の赤木俊夫さん事件」が起きる<特別対談:ジャーナリスト・相澤冬樹×元経産省官僚・古賀茂明>
2020.10.28  

https://hbol.jp/230935?fbclid=IwAR0NbbXv2t0f65axOWU1bEA0ppBoD7REiim01Dcej8UQOJYzL9GAwpi1DyI

赤木さんが弱かったのか

 この対談は、大いに読まれるべきものだ。

 ただ、一箇所、気になる部分がある。

<古賀:赤木さんは、とても強い人だったと思います。改竄を苦にして自ら命を絶ったために、精神的に弱かったと言う人もいるけど、それは違う。赤木さんが遺した手記を読むと、改竄に至るまでの一部始終を、そして真実を伝えたいという強い思いが溢れている。これって命がけの告発ですよ。こんなすごいことをできる人が弱いはずがない。
相澤:うん、あの手記は遺言なんかじゃありません。事実上の内部告発ですよね。文書の改竄にあたり、誰がどんな発言し、どのように行動したか、実名入りで詳細に記してある。>

 これはどうだろう。刻明な記録を残すほどのひとが、どうして死ぬかと言ったら、弱いからだ。弱いと言うのはいけないのだろうか。個人が弱いのは、ニッポンという風土が圧倒的につよいからだ。

 つまり、これは個人が強いとか弱いとかの問題ではないのだ。

疑獄があれば役所の中間管理職が自殺する国

 もし日本が、もっと個人が堂々と生きられる健全な国なら、赤木さんは堂々とこの記録をもって財務省を辞め、普通の企業に勤めて、政府を告発しただろう。海外では、トランプ政権の閣僚がトランプを批判して辞任するなどの例があり、企業の内部告発は堂々とできるではないか。

 しかし、50過ぎた人間が転職を簡単にできるような日本の社会ではない。
 

 また、それ以前に、雅子さんに、俺辞めたい、君も大変だろうけど、と相談はしなかったようである。

 夫婦関係はよかったようだから、俊夫さんは、抱え込むたちだったのか、男の誇りに縛られていたのか・・・

 古賀氏の<事実上の告発>という言葉はとくにうなずけない。告発できなかったからこそ自殺したのだ。

 電通の高橋まつりさんの自殺を思い出してほしい。あれだって、ニッポンの社会がしからしめたことではないか。相澤氏と古賀氏も、赤木さんを弱いと言うひとに反発、あるいは怒りを覚えるのは当然だとしても、ニッポンを告発することを忘れているのは惜しい。

 死は告発にはならない。だが、ニッポンでは、伊藤詩織さんのようなひとがバッシングを受けるのだ。イラクに人道的目的や報道や調査のために行って人質になった3人がバッシングと脅迫を受ける国なのだ。赤木さんの弱さは私たちの弱さなのだ。こんなことを繰り返していてはならない。

 赤木さんを弱いと言ったひとは、浅慮だったと思う。相澤さんと古賀さんが、そう思って反発したのも当然だ。しかし、そこで赤木さんを庇い、讃えるだけでは済まないと思う。

 私のこの文章のもとになった発言をFacebookで読んだあるひとが、こう言っているのが、私の言い足りないことをズバリ言い表している。

 生きて告発し続けて欲しかったが、彼が極端な選択をしなければここまで社会が関心を持っただろうか。その社会の冷淡さの一人として我が身を振り返る。

#スガ政権の退陣を求めます

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