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0317「NY非常事態日報・1」

実は、世間がコロナウィルスでバタバタしているうちに、ちゃんと自分の仕事に関する文章を書こうと思って(本来、noteを始めた理由は仕事のことを書こうと思っていたからなのだ)、短期集中で仕事関係連載をやろうと思って準備していたのだが、そうこうしているうちに私の住んでいるニューヨークが結構えらいことになってきた。日本もわりとえらいことになっているのだけど、ニューヨークも負けず劣らずえらいことになっている。

2ヶ月前に「NY子育て日報」という連載をここでやっていて、いろんな方にお読み頂いたのだが、それを書いていたのがちょうど大相撲初場所の真っ最中。そして今は春場所の真っ最中だが、当時は本当に全く想像していなかったというか、世の中こんな短期でここまで急展開しちゃうのか、という話で、当時はまさか、春場所が無観客で客が誰もいないところで白鵬が相撲取ってる状態になるとは露ほども予想しなかった。

いや、そもそもその「NY子育て日報」の後半では我が家に家庭内ウィルス感染が発生して「家庭内パンデミック」などと言って全員で嘔吐しながら、しかしながら結局明るく生きていたのだ。

それが2ヶ月後には正真正銘、ガチのパンデミックが押し寄せてきていた。人間、生きていると何が起こるかわからない。株価を見ても、恐らくオリンピックすら中止になってしまうのであろう情勢を見ても、今この瞬間起こっていることは間違いなく歴史上の出来事であり、私たちは人類があんまり体験したことがないタイプの大きな、後世に語り継がれるであろう事件の中にいると言っていい。

そして、私と家族はいま、非常事態宣言が発令されたニューヨークという街の中にいる。ミュージカルも中止。メトロポリタン美術館も閉鎖。証券取引所は連日の乱高下。ニューヨークというシンボリックな街が未だ体験したことがないような未曾有の何かが今まさに起こっている。数日前から起こっている。1週間ちょっと前までは、ニューヨーク市の感染者数は数人だった。それが今や463人だ。ニューヨーク州で言ったらもうちょいで1000人だ。

そして今日から、ニューヨークの公立学校がすべて閉鎖。明日からは飲食店もテイクアウトとデリバリーのみになる。隣のニュージャージーは夜間外出禁止令が出た。

本当は仕事のことを書こうと思っていたが、これは、リアルタイムで記録しておいたほうが良いのではなかろうかということで、少なくとも春場所が終わるまで、この非常事態のニューヨークを記録しておこうということで、書き始めることにした。例によって、記録メインで適当に書いていくので、「ああ、海の向こうも大変そうだなー」などと思いながら流し読みして頂ければ幸いである。

そんなわけで、子供たちは昨日の学校閉鎖の発表に喜んでいる。特に長男はニコニコしている。彼は朝から完全に今日が土曜か何かのように振る舞っている。

私もさすがにもう事務所に出かけないほうが良いと考え、家で仕事をするようにしている。ニューヨークはもはや完全にビジネスが止まっている状況になりつつあるが、日本の仕事や中国の仕事もあるので、普通に忙しくしている。

子供たちは休日モードだが、スマホには、学校の同じクラスの親たちのGoogle Groupからの通知が鳴り止まない。特に次男(日本でいうと幼稚園の年長)のクラスの親たちは、「ビデオ通話でちゃんと子供たちを対面させましょうよ」なんて、自主的なリモート幼稚園状態をつくる動きを始めていて、「zoomっていうのが良いみたいだからzoomでやってみよう」なんていう会話が繰り広げられている。

zoomは日常的に仕事で使っているので、すぐにクラス専用の課金アカウントを用意して無制限通話が可能なカンファレンスルームを共有してクラスに提供してみた。zoomは、無料版だと40分までしか通話ができないのだ。

そしてzoomは、学校関係者向けに無料で無制限通話を開放する施策をやっているが、学校団体のメールアドレスじゃないと無料化してくれないらしく、これは学校側に対応してもらわないとどうにもならないので、ジュリア先生にも登録してもらうようにお願いしておいた。

とりあえずは通話できるアカウントを用意して皆さんに連絡したら、とても喜んでもらって、午後になると子供たちが集まり始めた。15人くらいか、同時接続でワーだのキャーだの言っている。ジュリア先生も入ってきて、子供たちに飼い犬を見せている。

来週頭からはリモートラーニングを始めるべくニューヨーク市が準備をしているらしいが、詳細はまだ伝わってこない。学校関係もかなり混乱しているはずだ。しかし、ネット環境がない家庭すべてに、SIM入りの単体でつながるタブレットを支給するらしい。さすがニューヨーク。このへんやるとなると光速でやるのはいつもながら偉い。

ちょっと前、マンハッタンとブルックリンを結ぶ地下鉄のLトレインが川下のトンネルの工事で2年間動かなくなる、という計画があり、周辺の不動産価格にも影響していたし、引っ越す人たちも出ていたのだが、工事に入る直前で、「あ、やっぱり電車止めなくて良い方法見つかったので止めるのやめる」という驚愕の発表がされたことがある。ニューヨークという街は、そのへん悪く言えばいきあたりばったり、良く言えば臨機応変なところがある。

次男がリモート幼稚園をやっている裏で、スマホからは「ダウ平均株価がまた暴落」という通知がどんどん飛んでくる。結局$3,000近く下げたらしい。こうなってくると、正直感染とかよりこの状況でどうにかなってしまう人間のほうが全然怖い。

ここ数日、あまり家からも出ないものだから、ささやかな楽しみと言えば住んでいる建物の下の階にあるトレーニングジムとそこに併設されているサウナだった。特に、ここ数日で、乾いているサウナ室の壁に水をかけて湿度を上げると、効果が上がってとても良いということに気づいたところだった。

そんなことに気づいたのに、建物のメーリングリストに「ジムもサウナも今日いっぱいで閉鎖」という非情な連絡だった。これでもう完全に引きこもるほかなくなった。しかし今日はまだ使えるらしいので、仕事の合間に筋トレをして最後のサウナを惜しみながら暖まった。明日からどうすればいいんだ。

その後、妻と今後の対策について話し合うが、いろいろ未体験ゾーンが続くので、なかなか結論も出ない。

夜は東京と打ち合わせ。実は、長男のことで明日学校の先生に呼ばれていて、行くことになっていたのだが先生には会えるのだろうか。リモートラーニングの内容によっては今後の生活の仕方が変わるのでいろいろ聞きたいのだが、無理かもしれない。

感染者は増え続けている。次来るのは夜間外出禁止令か。


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