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0520「飽情報摂取の時代」

今日も現場に行って、PCと関係ないマイコンとファームウェアだけで制御する部分のインストールをやりに行った。どうにかうまく行ったものの、PCの電源を家に忘れていることが発覚して、現場で必要な手作業だけガッとやって、家に戻って作業することにした。やはり週末ちゃんと働くとダメだ。眠すぎるし、いろいろ弱ってくる。アシスタントが欲しい。

週末妻と話していて、ちょっと興味深い話を聞いた。テレビで見たのか、何かで聞いたのかわからないが、ある日誰かの旦那さんが知らないうちに嫌韓になってしまっていたのだという。で、旦那の動画の閲覧履歴を見てみたら、ずっとそういう嫌韓動画ばっかり見ていたらしい、という話だ。つまり、YouTubeで何か動画を観る→その動画に近い動画がおすすめされる→観る→さらにそれに近い動画がおすすめされる、というようなことが起こっていたらしい。

つまり、現象としてはこの旦那さんは、何か1つの動画をきっかけに嫌韓という偏った考え方のシャワーを連続して浴びることになってしまい、そしていつしか、自分自身も嫌韓野郎になってしまった、ということだ。YouTubeに洗脳された、と言っても過言ではないかもしれない。あんまりそういうの考えたことなかったのでびっくりしたが、確かにこういう「ユーザーの行動データに合わせて、そのユーザーが好きそうな別の何かを提示する」つまり、YouTubeであれFacebookであれ、Amazonみたいなものであれ、何らかのアルゴリズムでおすすめを提示してくる仕組みというのは、普通につくっていくと、そのコンテンツの考え方や価値観を補強する方向に行くはずで、最初に触れたコンテンツが嫌韓ならおすすめはどんどん嫌韓っぽくなっていくし、最初に触れたコンテンツが韓流ならどんどんおすすめは韓流になっていく。

たぶん嫌韓の人にBTSとかBlackPinkの動画はおすすめされないんじゃないかと思うし、BlackPinkのファンに嫌韓動画はおすすめされないだろう。そんなことしたらユーザーがそのプラットフォームを使わなくなってしまうリスクもある。つまり、サービスが誰かに別のコンテンツをおすすめする、ということはほぼ、その人の考え方や嗜好を補強する、ということになるのではないか。

広告のターゲティングだってそうだ。どこでバレたのかわからないが、私のFacebookやら何やらいろんなところには、「薄毛」とか「AGA」とかそういうターゲティング広告がどんどん出てくる。「お前はハゲだ」「お前はハゲだ」「お前はハゲだ」「お前はハゲだ」と日々刷り込まれて、ハゲとしての自覚が高まる、そして、ハゲを看過している自分が責められているような気がする。

これは、よく考えたらめちゃくちゃ怖いことなのではないか。これは、突き詰めると人類を滅ぼす何かになる可能性すらある気がする。

いやむしろ、トランプが大統領になったのもBrexitも、要するにこういう「ターゲティング的おすすめアルゴリズム」が世の中に蔓延しちゃったからそうなってしまったのではないか。そうでもしないと、今のアメリカみたいな、トランプ支持者はどんどんトランプ支持を深め、不支持者はどんどん不支持を深めるような二極的な断絶状態って、現出しえないのではないか。ナチス・ドイツ的なものにしても、新興宗教にしても、対象や構成員の意思とか考え方をどんどん補強して強くしてしまうことで洗脳していくのがその手段だったのだと思う。あるいは、テレビというものは長らく人々の価値観を規定し続けてきた=私たちはテレビが継続的に提示する価値観を浴び続けて、洗脳されてきた(フジテレビの凋落なんかは、そういうテレビによる洗脳が効かなくなった反動なのだと思っている。またどっかで書くかもしれないが)。 

その仕組みを悪気なく良かれと思って提供してしまっているのが、今のインターネット上にある、パーソナライズでありターゲティングなのではないか。

このnoteだってそうで、私がこの日記を書き始めたのだって、仕事で使おうと思って、このメディアの効果的な使い方を理解するためだった。noteを仕事上のPRなどで使う上でやはり一番魅力的な機能は、やはり「おすすめ記事」のアルゴリズムで、他のインフルエンサーとかの記事などから紹介してもらえるかもしれない、という部分だ。この、仮にnoteをコーポレートサイトとかにしたとしても、そこに対してSEOとかじゃなくて既存のソーシャルグラフからのおすすめで人が流入してくる感じというのは非常に良いよなあと思う。しかし、この仕組みとて、たとえば読者が茂木さんとかのいわゆる「誘導がひどい人」とかの記事から誘導が続いてどんどん似たような記事に導かれた結果、茂木さんが腐ったような人が増えてしまう可能性だってあるのだ。今の時代、人間が触れるコンテンツ・情報というのは重要だ。重要どころか、その人を形作る血肉のようなものだ。コンビニ弁当ばっかり食っていても、ソイレントばっかり食っていても、身体はおかしくなっていってしまう。バランスの良い食事は健康にとって重要なファクターだ。

現代は、飽食の時代、ならぬ飽情報摂取の時代だ。摂取する情報は選択できるから、浴びていて気持ちの良い情報だけを浴び続けることが可能だ。しかし、炭水化物ばっかり食っていたり、肉ばっかり食っていたりしてはダメで、野菜も食わないといけないし、カルシウムとかそういうのも必要だ。自分にとってオルタナティブなニュースやコンテンツを敢えて浴びられるようなサービスが必要かもしれない。あるいはiPhoneのScreen Timeみたいに触れている情報の傾向を可視化して管理する必要があるのかもしれない。インターネットはこのままでは、人類に選択肢を与える代わりに、人類をさらに分断してしまうのではないか。

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