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0319「NY非常事態日報・3」

外出禁止令はまだ出ていないが(なんか、市長は出したがっているが知事が出さない方針らしい。)、今日は自宅から全く出なかった。

というのもなぜかというと、あろうことか、なんか体調が悪いのだ。妻に申告すると、鼻うがいセットを用意してくれて、鼻に水を注入され、オエッとしながら鼻にうがい薬を通したり、いろいろやることになった。当然ながら、外に出てはいけない。そもそもそんなに出る用事はないわけだが、参った。これは非常に憂鬱だ。とりあえず様子を見る。

うちの一家は今年の9月でビザが切れる。ゆえに、更新の時期がやってきている。私はいわゆるO-1ビザ=アーティストビザという資格でアメリカに滞在しており、妻と長男はそれに付随するO-3ビザ(アーティストの家族ビザ)、次男と長女はアメリカ生まれなのでアメリカ国民だ。

で、この情勢なのでビザの更新作業(実績とか、雇用証明とか、いろんな書類を束にして提出しないといけないのでまあ、面倒くさい)を早めに終わらせて提出しておかないと、政府の機能が止まってしまってアメリカにいられなくなってしまう可能性がある。そしてその危険性は高まってきている。お願いしている弁護士事務所の担当者も、ウィルスのお蔭で退職して故郷に帰ってしまったらしく、そのへんの引き継ぎもやらないとまずい。

というわけで、会社のそういった事務系含めた面倒をずっと見てもらっているJaneとビザの書類の残り作業について電話会議をする。Janeは実は某有名カンファレンスの立ち上げメンバーで、ものすごいコネクションを持っている人で、今もEG Conferenceというコミュニティのエグゼクティブ・プロデューサーをやっているのだが、なぜか私のビザも含めた会社のいろいろを一緒にやってくれている。

Janeの娘さんは「豆しば」の大ファンで、以前日本に出張したときに娘さん向けにたまたまお仕事をよくやっていた「豆しば」の作者の方々にサイン入のお土産を持ち帰ったら、超喜んでもらえたことがある。ゆえに、豆しばのお蔭なのかもしれないが、ずっと世話になっている。

Janeも大変らしい。彼女はニューヨークからちょっと離れたところに住んでいるのだが、先日マンハッタンに出てきて仕事した後、家族の都合もあってしばらく自主的にマンハッタンに滞在して自らを隔離していたらしい。

Janeもやはりビザの件は心配になっていたようで、「これは今日中に出しといたほうが良いね」ということで、急遽午前中集中して申請書類の仕上げをすることにする。アーティストビザの申請書類は、基本的に「こういうメディアに出ました」「●●賞とりました」みたいな「俺スゲー資料」を集めまくる超自画自賛作業なところがある。「私はこんなに評価されていてこんなにすごい仕事をしているからアメリカに入れとく価値ありますよ!」というのをグイグイ納得させる必要があるのだ。ゆえに、この作業はとてもこそばゆい作業だ。自分で「ミスター清水はなんとかイノベーションの領域で国際的にも大きな評価をされているうんうんかんぬん」みたいのを頑張って自分で書かなくてはいけない。Wikipediaの自分の記事を自分で書くような作業だ。

どうにかそれを終える。途中で一回MacBookがフリーズした。昨日書いたように、昨年買った新品のMacBookがApple Storeから全然帰ってこないので、今使っているのは、前の代の古いMacBookだ。つまり、このMacBookが壊れたら、私は全く仕事ができなくなる。今も昔も、PCが無かったら私なんて茶碗にこびりついた茶渋のようなものだ。何もできなくなる。まずい。

まずいので、Appleに電話して、Apple Storeでのピックアップではなくて代替のMacBookを家に配送してもらえないか、という相談をしたが、「いや、いまストア絡みのシステム全部落ちてるから無理」と言われた。無理だった。

知人同士での情報共有も活発になってくる。ニューヨークで飲食業をやっている知人は、やはり相当に苦しいようだ。デリバリーでなるべく損害を最小限にする、ということしかできないらしい。

この業界で最初に勤めた制作会社で一緒に仕事をしていた、ニューヨークで働いている同僚というか後輩からも「日記読んだよ!」なんて言って、おすすめの食材デリバリーサービスを教えてくれたりした(そのデリバリーサービスには私も登録だけはしていたのだが、夕方過ぎに「倉庫の人が感染しました」という連絡が来た)。

そんなこんなで、午後はプログラミングの仕事をやることにして、体調悪いながらも、あんまり触ったことがなかったvue.jsと格闘していた。しかし、合間合間にどうしてもニュースだったりソーシャルメディアを見て、鬱々とした気分になってしまう。やはり不安はある。

ちょうど日本でコンサートなどが一気に中止になったくらいのタイミングで、やはりずっと日本語のタイムラインで人々が鬱々とした議論をして不謹慎狩りなんかも始まっていたのを見続けてしまって、ひどく気分が落ち込んだことがあった。

それで、ちょっとした誓いを立てることにして妻に伝えたら妻が戸棚に貼ってくれた。これがその誓いだ。

飯を食いたくなったらコーヒー飲みながら本を読め、あるいはサウナ行け、あるいは寝ろ

仕事やる気なくなったらコーヒー飲みながら本を読め、あるいはサウナ行け、あるいは寝ろ

自分でコントロールできない情報に触れるな、本を読め、あるいはサウナ行け、あるいは寝ろ

一昨日書いたとおり建物内のサウナは閉鎖されてしまったが、いろんな情報を注入して鬱になるのを避けて、自分の血肉となる本を読む、良いコンテンツを摂取する、あるいは睡眠をちゃんととる、ということを意識しよう、という標語だった。2行目は、長男に「しごとしろ!」とコメントを入れられた。

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この誓いを立てた次の日に、「近所で摂取できる良いコンテンツは何か?」と思って、しばらく考えて、「そうか! 時間があったらメトロポリタン美術館に行けば良いんだ!」と思って家族で入れる年パスを衝動買いして、清代の陶磁器とかを見て回っていた。

メトロポリタンの年パスは本当に素晴らしくて、何しろあのメトロポリタン美術館に気軽に出たり入ったりできる(気分転換に20分だけエジプトのミイラとにらめっこする、とかそういうのができる)。その上に、年パス会員用のラウンジというものがあって、電源が完備されていてwifiもあって仕事ができるのだ。

「よーし疲れたらメトロポリタン行くぞー」とか思っていたが、数日後にあえなく閉鎖した。写真は10日くらい前のもの。

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そして私は憂鬱なソーシャルメディアを見続けて、気分を落としていく。

ニューヨークの他の地域の情報も入ってくる。East Villageなんかは早くも治安悪化のにおいがし始めているらしい。そりゃそうで、飲食店から中小企業から、今のニューヨークは絶賛レイオフ祭りなのであって、来月の家賃(ニューヨークなのでバカ高い)を払えない人がどんどん出てくる(立ち退き強要は禁止みたいな命令も出ているが)。フラストレーションも溜まるし、食い詰める人が出てくる。治安が悪化するのは避けられないだろう。

各地域の閑散っぷりも話題になっている。ワールドトレードセンターのオキュラスは、空いてるところ実際に見てみたい感じもするが、まあわざわざ行くものでもない。

外出禁止令はどうなるのか。たぶんすぐには出なさそうだなあと思ったところで、在ニューヨーク日本領事館のメールマガジンから日次の感染者数のアップデートが。

ニューヨーク市、昨日まで814名だったところが今日は1,871名・・・・・。一気に1,000人以上、倍以上に増えた。

そこに畳み掛けるように入ってきたのが、アメリカ大使館でのビザ発給業務停止、というタイムリーな話題だった。ついに来やがった。これが9月まで続くと立派な不法移民になってしまう気がする。
今日作業したのに・・・。と思いつつ、ビザを取得する際の大使館面接が止まるだけのように見えるので、審査はやってくれるのかもしれない。

良いニュースと言えば、日本政府が全国民に12,000円配るぞ、というニュースくらいしかない。その全国民の中には私たち在外倭僑も含まれるのだろうか。もし12,000円くれるのなら、明後日発売の「あつまれ どうぶつの森」を買えるので嬉しいのだが、どうなんだろうか。


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