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学び編 3 師匠を求め 道場を探す

種の頃  稲苗を水田に植えながら  師匠が 語りました

芸の精進において 大事なことは
自分のいまの限界を 
わきまえるということさ


そのうえで 自分の限界を越える
その意欲が 芸を磨くのさ


自分のことを わきまえている人は
自分が わかっていない領域があることを
自分が 体現できない技芸があることを 
ちゃんと 理解している人だよ


自分のことを わきまえている人は
自分が わかっていない領域を 探索し続ける
自分が 体現できない技芸を 探究し続ける
そういう 我慢強い人だよ

全部 わかってるなんて うそぶく連中が
この世で 一番信じられない

自分には あれは わからない 
自分には それは できない 
自分は あれをすれば 失敗する
自分は これを怠れば やりそこなう という
わきまえのある人が 一番信頼できる

だからさ 
自分ができることの 
一番「端っこ」 

自分が理解していることの 
最も「隅み」のところが 
大事なんだよ

知らないことが恥 なんてことは まったくない

できないことがあるからこそ
新しい挑戦が できるんだよ
未知の領域があればこそ
識る ー 試す ー 体得する ー 捨てる の
学びの円環が回るんだ


だからさ 

変わり続けるためには 

知らないこと や できないことが 必要なのさ


自分が理解している「最も端っこ」のすべてがわかると
自分の既知の領域の全体が見えてくる

そして その隣に 
自分の知らない領域があることが 見えてくる

あなたは 次に 知らないことを 
学ばなければならなくなる

それが 独自を求める 個の学びの 本質さ

友よ 
あなたは そのとき 師匠を求める

学びの円環に ひたすら挑んで
それでも 自分の知らない領域があるときこそ
求めるべきは 師匠 なんだ

ひとりで 学びの円環に 挑んでいると 
いずれ行き詰まる

識る ー 試す ー 体得する ー 捨てる

そうやって ひとりだけで 
型を作り続けると いずれ限界が来る

識らないことがなくなる
 毎回 同じことを 試す
   新しい技が みつからない
     捨てるものが ない

それが 個の学びの 限界さ 

友よ 
あなたは そのとき 道場を探す

学びの円環に ひたすら挑んで
それでも 自分の成長に限度があるときこそ
探すべきは 道場 なんだ

師匠を 求め
道場を 探すのは 
あなたの人生の最大の 冒険さ


個の学びを 越えるんだ


無限に 学び続けるためには
個の学び と 全の学び を 円環にして 
澱みなく にごりなく 
個 と 全を 一つの流れにする


だから
師匠を求め
道場を 探すのは 
あなたの人生の最大の 喜びさ


個の学びを 越え
全の学びに 飛び込むんだ


師匠にすべきは
自分には あれは わからない 
自分には それは できない といい
それでも 
学びの円環を 回し続けている わきまえの人さ

師匠にすべきは
その人が あなたの知らない領域について 
識っていながら
その師匠にも 
自分の知らない領域があることを 認め 
それを識ろうとしている人さ 
師匠にすべきは
あなたの既知の領域を 認め 
自分の既知の領域を あなたに 惜しみなく与え
あなたの独自と 自分の独自を 
新たに組み合わせることに 好んで挑む人さ


個の学びでは できない 
新たな 組み合わせに 挑む
それが 師匠を探す意味だよ

個の学びを 越え
全の学びに 飛び込むんだ

あなたの独自と 師匠の独自が
その時 衝突する

そうやって 独自な領域同士が衝突すると 
創発の火花が起こる

その衝突で あなたは 新しい学びを得る 
その衝突で 師匠も 新たな学びを得る 
いいかい 一方的な学びなんて 存在しない

上のものが 下のものに 教え 育む という 目線では 本当の学びは 生まれない

師匠と 弟子が 学び 習う というのは 
相互に衝撃を 与えるものなんだよ

学びは 相互の変容 として 存在する

それが 全の学び だよ

その接触がはじまると 
かつての自分たちでは いられない

お互いが 新たな存在になる 
そんな 創発が 全の学び だよ


そして その創発から 
師匠と 弟子は 互いに
識る ー 試す ー 体得する ー 捨てる

そして 捨てた分だけ
また識る
また試す
また体得する
そしてまた捨てる

ひたすら 学びの円環を繰り返す

それが 全の学び だよ

全の学びは 創発による 

新奇の誕生 

異なる分離 

多様な進化


そして 技芸が伝承される

師匠には 師匠の 独自の型がある

弟子にも 粗野だが 独自の型がある

創発によって 師匠の独自と 弟子の独自が交わる

粗野な弟子の技が 
師匠の技を真似て すこし整った型になる 
その分 粗野な技を捨てる

完成していた師匠の型に 新奇な技が加わり 
型の一部が必要なくなり 
更なる洗練のために その型を捨てる


そうして 学びの円環が また回る

識る ー 試す ー 体得する ー 捨てる

ひたすら 学びの円環を繰り返す


全の学びは 創発による 

新奇の誕生 

異なる分離 

多様な進化

そして 技芸が伝承される


友よ 

次に  あなたは 更なる独自を求めて 
道場に 導かれる

道場には 
師匠がいる 
先輩がいる 後輩がいる
朋輩がいる ライバルがいる
多様な人々が そこにいる

それぞれとの 多様な 出逢いが 待っている
道場に通う 多様な人々は 
同じ志でありながら 独自な型を 持っている
だから 道場では 多様な 衝突が 絶えず発する

それを 切磋琢磨 というんだよ

個の学びではできない 多様な衝突で 切磋琢磨する
それが 道場に通う 意味だよ

個の学びを 越え
全の学びに 飛び込むんだ

あなたの既知の領域と 
多様な人々の既知の領域がその時 ぶつかりあう

その衝突で あなたは 新しい学びを得る 
その衝突で 相手も 新たな学びを得る 

独自を持つ同士の 切磋琢磨から 
多様な衝突が起こる
そして その多様な切磋琢磨から 
互いに 識る ー 試す ー 体得する ー 捨てる

ひたすら 学びの円環を繰り返す


全の学びは

切磋琢磨の 多様な衝突による  

新奇の誕生 

異なる分離 

多様な進化

そして 技芸が伝承される


その接触がはじまると 
かつての自分たちでは いられない
お互いが 新たな段階になる 
その 体験が 全の学び だよ 

師匠を持つ者は 幸福だ

至芸の創発を 体験できるから

道場を持つ者は 幸福だ 

切磋琢磨から 多様な衝突を得るから


共鳴しあって 個は豊かになる

共鳴しあって 技は新しく生まれ

共鳴しあって 技芸は分離する

共鳴しあって 芸道は多様になる

多様な道は 長い年月のなかで しなやかに ふるまう
賢い道は  変幻自在に 姿や名前を 変えていく
多様な道は 厳しい歳月のなかで 
しぶとく 生き残る

あまたの選択のなかで 
大きくなったり 小さくなったり
状況の変化のなかで 
はっきり見えたり かすんでみえたり

それでも 志はつながる

それでも 道具の改良は つながる 

それでも 人の革新は つながる

そして 芸道は 時を越える

これが 技芸の伝承 というものだよ

水田の向こうから 早乙女たちの 田植え歌が聞こえてきました

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