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朝食にスコーン

わたしは温良恭倹な人間である。

ことに女性に対しては、その温良さを存分に発揮する。常に女性を敬い、エスコートを怠らない。女性の発するひとつひとつの言葉に耳を傾け、相手の気持ちを理解しようと試みる。女性が楽しいと感じ、幸せと感じる瞬間は、わたしにとっても幸福のひとときである。

そう、わたしは英国紳士なのである。

わたしをこのように英国紳士たらしめているものは、わたしの少年時代の過去にある。少年時代は任天堂のDSというゲームで「レイトン教授シリーズ」にのめり込んでいた。黒くて長いハット、考古学者、謎解き、ロンドンの街並みにどれほど憧れたことか。また、どこの図書館にも置かれている「シャーロック・ホームズ」にも多大なる影響を受けた。パイプ煙草を燻らせながら、難解な未解決事件を次々に解決していくホームズの姿に、誰しも1回は目を光らせたのではないか。

いつしか、わたしはレイトン教授と名探偵ホームズの佇まいを真似し、英国紳士がどういったものかというものを学んでいった。そして、25歳のわたしは晴れて立派な英国紳士となり、こうして優雅な日々を過ごしているのである。ただ、いまのところわたしのそばには、ルーク少年という空色の帽子を被った助手もいないし、ワトソン君のような頭がすこぶるキレて頼れる相棒もいない。一体全体、どうなっているのだ。責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。ちなみに、エスコートする女性もしばらく見かけていない。

イギリスといえば食べ物があまりおいしくないことでおなじみであるが、その中にスコーンも含まれる。日本で売られているスコーンは、チョコチップが入っていたり、ドライフルーツが入っていたり、おいしいイメージがあると思う。たぶんスターバックスなど、オチャレなお店で売られているさくさくのスコーンを想像するだろう。しかしながら、本場のスコーンはもさもさしていて、喉のH₂Oをすべて奪い去るような恐ろしいものらしい。イギリスでいうところのスコーンは断じて庶民的な食べ物であって、決してオチャレなスイーツではないとのことである。

ただ、最近のわたしは彼者誰時に、スコーンを焼いて食べている。

スコーンの横に、100%果汁のリンゴジュースと北海道バターがあれば、貴族的朝食の完成である。スコーンがもさもさしているのでリンゴジュースのおいしさが際立つし、バターがスコーンにしっとり感を与えてくれる。スコーンは、薄力粉・砂糖・塩・ベーキングパウダー・牛乳を混ぜて焼くだけ。とても簡単だし金銭的にも安い。それに食パンよりも腹持ちがよい気がする。1回に9個くらい作れるので、冷蔵しておいて4日間くらいに分けて食べる。スコーンは日持ちもよいのだ。

わたしがスコーンを朝食にしているのは、大原扁理さんの著書「年収90万円でハッピーライフ」に薫陶を受けたからに他ならない。

ここで大原扁理さんがどういった方かとか、この本がどういった内容かについて語るのは控えておく。気になった方はぜひ本屋さんで見つけてみてくだされ。とにかく、ひとり暮らしをはじめてこの本の内容を実践することがちょっとした夢だったのだ。そして、実際にじぶんの暮らしに取り入れてみたら、ぴったりハマることがしばしば。そのうちのひとつが、スコーンというわけである。

さて、こうしている間にもスコーンの香ばしい匂いが漂ってきた。わたしはキッチンに戻ることにする。それでは、失敬。

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