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盲腸がもう、超長い

盲腸のはなし

ヒトの盲腸といえば、突然の腹痛があって病院へ行って

「盲腸切った」

なんていうのが、ありがちな場面。

正確には、切除したのは盲腸ではなく「虫垂」であり、痛みは虫垂が炎症を起こしたことによる「虫垂炎」であるということは、ご存知かと思います。


ヒトになぜ盲腸があるのか?

盲腸では、免疫グロブリンであるIgAを作っているらしい。
このIgAは腸内細菌叢のバランスの維持を担う重要な抗体とされている。

虫垂切除マウスでは、虫垂があるマウスに比べて、腸内細菌叢のパターンが崩れていることもわかっています。

次に、虫垂リンパ組織のIgA陽性細胞がどこに向かうかを調べたところ、小腸と大腸に移動することが確かめられました。

ヒトでも、虫垂の切除で炎症性腸疾患になりやすくなるようです。

ということから、虫垂は必要な器官であろうということが予想されるようです。


ウサギの場合

ウサギの体長はヒトよりも小さいのに関わらず、消化管の長さは約8 mとヒトの約9 mと近い長さです。

よってウサギは身体の割には長い腸を持っているといえます。

そしてウサギの盲腸は人よりも長く、約40 cmもあります。

その理由は、食する植物の硬い繊維質を分解するための細菌が盲腸に棲み着いており、しっかりと消化する必要があるためから長くなったようです。

さらにウサギは肛門へ口をつけ、盲腸でつくられた盲腸便を再び食べる行動をとります。

この行為によってウサギは、効率的に栄養を摂取するのです。


コアラの場合

コアラって動物園に観に行っても、大抵木の上にジーッとして、

寝ていますよね。

彼等は生存競争に打ち勝つために1日中寝て過ごす生活を選択したのです。


水を飲まない動物

コアラという名前は、そもそもアボリジニーの「水を飲まない」という意味だそうです。

その実、コアラは水分も栄養も全てユーカリの葉より摂取するのです。

しかしながらこのユーカリの葉には、猛毒の青酸苦いタンニンが含まれています。

さらにユーカリは栄養価の低い植物です。

他の動物が見向きもしないような植物であるユーカリを主食とすることによって、彼等は生き延びることが出来たのです。


コアラの盲腸

なんとコアラの盲腸は哺乳類のなかで最も長く、2mにも達するのです。

この盲腸には、先程述べたユーカリに含まれる青酸を分解する細菌が棲み着いています。

それによって、ユーカリを食べてもコアラは平気なんですね。

子供のコアラは、最初は親が自らの糞を食べさせることによって、自分自身の盲腸へと細菌を迎え入れます。


だから寝ている

栄養価も低く、おまけに猛毒を含んでいるユーカリを食べるんですから、摂取したエネルギーはなるだけ解毒に用いて、極力じっとしていた方が、省エネになるという訳です。

愛らしいコアラですが、進化の過程で涙ぐましいドラマを経て繁栄出来得た種であることを知ると、これまでよりも尊敬の眼差しでもって観ることが出来るかもしれません。


おわりに

盲腸について知ることで、ウサギの食糞やコアラの寝てばかりいる生態を理解出来ました。

腸内細菌叢はサイエンス、医学のなかでもとりわけホットなトピックです。

さらなる研究が進むことで面白い発見が沢山眠っている未開のフィールドだと思います。


おしまい

最後までお読みいただきありがとうございます。 いただいたサポートは麦チョコ研究助成金として大切に使用させて戴きたいと思います。