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めんどくささと山下達郎

素晴らしい記事

山下達郎さんの記事、めちゃくちゃ素晴らしい記事でした。

是非とも1人でも多くの人に読んで頂きたいです。

サブスク解禁一生しない』という記事の見出しからもわかるように、かなり恣意的なバイアスを感じるのですが、山下達郎さんは見出しのようなことだけを語っているのではありません。
ですのでかなり断片的に切り取った見出しに対しては嫌らしさを感じました。
かくゆう私もこの見出しに釣られてアクセスしたので偉そうなことはいえないのですが。

音楽を聴くことのいまむかし

いまや手軽に音楽が聴ければよいというコンセプトで、スマホやタブレットを数回タップすれば聴きたいプレイリストへ辿り着くことが出来て、再生される『Spotify』などが音楽ツールとして浸透していることはいうまでもありません。

その文脈では、もはやCDを音楽プレーヤーへセットして再生するという行為は『めんどくさい』行為と解釈されてしまうことになっていると思います。

このような音楽試聴環境、サブスクについて、山下達郎さんは以下のように述べておりました。

「だって、表現に携わっていない人間が自由に曲をばらまいて、そのもうけを取ってるんだもの。それはマーケットとしての勝利で、音楽的な勝利と関係ない。本来、音楽はそういうことを考えないで作らなきゃいけないのに」

https://news.yahoo.co.jp/articles/ceb2b3d401782d859f6022ca9bcf8043a2f0218e

お気持ちは本当によくわかります。

ただ失礼を承知でいえば、いまや作り手の掛けた時間を噛み締めながらいつも音楽を聴いてるわけでは無いと思います。


ラーメンや絵画にかける時間

何日も何十時間も煮込んだラーメンのスープ。かなりの研究や費用を費やしてきたストーリーが作り手にはあります。

しかしながら食べるのはものの数分でしかありません。

これをゆっくりと味わってもよいのでしょうが、麺の食べ頃などを考えると手早く食べる食事のひとつに挙げられると思います。

他にも、
何年もあるいは十数年かかって描かれた絵画であっても観る人によっては、美術館では絵の前に立っているのは秒単位長くて数分程度。
もちろんこれには運営方法にも問題があって、展覧会によっては立ち止まることを困難にしているものもあります。
その場合、鑑賞者は否が応でもその場を足早に立ち去らねばならなくなります。

やっぱり聴きたい山下達郎

それでも山下達郎を聴きたい時は訪れるのです。
その時に諦めるのか、それともCDをプレーヤーで聴くのか。

ここはコンテンツの力。そして聴く側の思い入れレベルによります。
これが『めんどくささ』を上回ると、その『めんどくささ』はネガティヴな要素でなく、ポジティヴな要素となります。

聴くことを選択した場合、CDやレコードをジャケットから取り出し、プレーヤーへセットして再生する動作はまるで厳かな儀礼じみたとさえいえる、なんともいえない贅沢な時間となるのです。

その体験を必ずさせる。
それはサブスク解禁を行わないことに依拠するといえます。


無視できない現実

記事のなかでは山下達郎さんは自ら自虐的に

「それまでの実績にあぐらをかいてると、あっという間に取り残される。Spotifyで配信はしないですけど、Spotifyのグローバルチャート50はいつも聴いてます。今の時代の音像というか、空気感は絶対に必要なので。そこに自分の今までのスタイルをどう融合させていくか。まさに『RIDE ON TIME』だな(笑)」

と述べています。楽曲作成のための研究活動として、御自身もSpotifyを愛用なさっているようです。御自身は解禁なさらないまでも情報収集に便利なツールは見逃せないようです。


素晴らしい視座

御自身がどのようにファンに求められ、どのように立ち振る舞うかについて、伺ってグッときました。

「『あれは俺のやりたかったことじゃない』と言って、ヒット曲を歌わない人って多いんですよね。ベストヒット=自分のベストソングじゃないんでしょう。お客さんはそれが聴きたくても、ライブでやってくれない。逆にマニアと呼ばれる人々はヒット曲を嫌う。でも、私は誰が何と言おうと、『クリスマス・イブ』はやめません。夏でもやります。だって、それを聴きに来てくれるお客さんがいるんだもの」

平穏とはほど遠い現代ですが、山下達郎さんは素晴らしいスタンスです。

「大切なのは平常心でいること。僕、大きなパニックに強いんですよ。足つったとか、そういう小さいのには弱いけど(笑)。朝起きて、冗談言って、歌って……そういう人は生き残るって、アウシュビッツから帰還して『夜と霧』を書いたヴィクトール・フランクルが言っている。いろいろあっても、春が来て花は咲くしね。雨は降るし、空は変わらない。明るくやらないと、駄目でしょ」

おわりに

ブームとなっている『シティポップ』の牽引役の山下達郎さんの飾らない言葉に分野は違えど力を貰いました。

おしまい

最後までお読みいただきありがとうございます。 いただいたサポートは麦チョコ研究助成金として大切に使用させて戴きたいと思います。