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14ひきのひっこし(14匹シリーズ 第1回/全12回)

【はじめに】
絵本紹介「絵本さんぽ」始めて依頼初の試みですが、シリーズものに挑戦しようと思います。

なんだか神田松之丞 畦倉重四郎全19席のようですが…。

今回紹介いたしますのは、いわむらかずお先生による「14ひき」シリーズ。

これは全12作に渡るシリーズものです。
とはいえ、どの作品から読んでも「話がわからない」ということは全くなく、1冊から単純に楽しむことが出来ます。

しかししかし、このシリーズの魅力はなんといっても、全作品を通して読むことによって、
登場人物の描かれ方、キャラクター設定などが徐々に理解されて、
さらにさらに愉しさが何倍にも倍増する素敵なシリーズものなのであります。

出版順に並べますと、
1. 14ひきのひっこし(1983年7月10日)
2. 14ひきのあさごはん(1983年7月10日)
3. 14ひきのやまいも(1984年7月20日)
4. 14ひきのさむいふゆ(1985年11月1日)
5. 14ひきのぴくにっく(1986年11月15日)
6. 14ひきのおつきみ(1988年6月25日)
7. 14ひきのせんたく(1990年5月25日)
8. 14ひきのあきまつり(1992年10月3日)
9. 14ひきのこもりうた(1994年7月10日)
10. 14ひきのかぼちゃ(1997年4月25日)
11. 14ひきのとんぼいけ(2002年6月30日)
12. 14ひきのもちつき(2007年11月15日)
となっています。

この順に紹介していこうと思います。

【概要】
全話を通して、扉にて同じ台詞が記されています。

おとうさん おかあさん
おじいさん おばあさん
そして きょうだい 10ぴき。
ぼくらは みんなで
14ひき かぞく。

まず14匹のねずみが歩いているシーンから物語は始まります。
ひっこしがはじまりました。

もしこの作品から読み始めた場合、
誰が誰なのか全くわかりません。
紹介されてすらいないのですから。
そんななか

おっと、しりもち つきそうなのは だれ?

という展開があります。

これは後々、他のシリーズを読むことによって活きてくる仕込み、布石になっています。

とはいえ、実は本を広げ、表紙と裏表紙を一望すると、
14匹のそれぞれに名前が記されています。
ですので、とくに大人はわかるにはわかるのですが、
まだ小さな子供ですと、そこをみて答え合わせするという風に合点がいかないところもあります。

それはさておき、
肝心の14匹のねずみ一行はといいますと、

崖をのぼり、
イタチの気配を察して身を隠したり、
流れの速い川をロープを伝いながら渡り、
野宿ではフクロウの鳴き声に警戒しながら夜を明かし、

と、なかなかスリリングな危険を冒しながらも旅を続けて参りまして、

ついにみつけた新たなる新居!

ここが、これからの舞台となる「木の根っこ」です。

これより木の根っこでの家造りが始まります。

まずは竹や木の枝を方々から運んできて、家の内装工事です。
そして川から水道を引きます。
さらには近所の川に橋も架けます。

彼らは実に建築土木に長けており、非常に頼もしい集団です。

沢山の木の実や芋などの貯蔵まで行い、
冬支度にも余念がありません。

作業が一段落すると、皆の労をねぎらいつつ食卓を囲みます。

さぞ今日は疲れたでしょう。

みんなが眠って、それをお茶を飲みながら見守る両親(おとうさん、あかあさん)のシーンで幕を閉じます。

とくに説明されていないのですが、家造りは一日でなされたようですので、もの凄く仕事の早いネズミ達です!

部屋の間取りなども続編にて徐々に明らかにされるのですが、
本作では、寝室と食堂のみが登場しています。

【みどころ】
まずはまだ紹介していない登場人物を。
兄弟は順に、
1.長男のいっくん
2.次男のにっくん
3,長女のさっちゃん
4.次女のよっちゃん
5.三男 ごうくん
6.四男 ろっくん
7.三女 なっちゃん
8.五男 はっくん
9.四女 くんちゃん
10.六男 とっくん

さらに両親(おとうさん、おかあさん)とおじいさん、おばあさんが加わった14匹という家族構成となっています。

この登場人物それぞれに個性がしっかりと描かれています。

まず
おっちょこちょいでドジなろっくん。
本作では、崖で手(正確には前脚ですが)を滑らせ尻餅をつきそうになっています。

川をロープで渡る緊迫のシーンでは、ロープの端をしっかりと握っている
力持ちで頼もしさが描かれているにっくん。

野宿の際、フクロウや外敵に襲われないよう、寝ずの番をしている
おとうさんといっくん。
とくにいっくんは先端の尖った木の枝を持ち、家族を守るという責任を背負っている長男としての覚悟が見てとれます。

ここでは足を布団から出して眠るごうくんにも注目しておきましょう。

家造りのための竹を切って運んでいるシーンでは、
なっちゃんの運ぶ竹によって後頭部を強打してしまう可哀想な目に遭ってしまうのは、
またもやろっくん…彼はホントついていません。

そして川に橋を架ける作業に携わる皆に差し入れされた
ベーグル風のパン(かな?)
をこっそり働く皆の視線を気にしながらも食べているのも…

ろっくん!!

その傍らでは1本の丸太橋を平均台を渡るように歩くなっちゃんがいます。
彼女のおてんば振りがすでにここで描かれています。

食糧の貯蔵庫では、運ぶ作業をしている最中、
松の実をつまみ食いしているのが末っ子のとっくんです。まだ幼さが表れています。

最後は家族みんなで夕飯なのですが、
パンを背後に落として拾いに席を立っているのは、
やはり
ろっくんです!!

寝室で眠るラストのシーン。
昼間散々な目に遭ったろっくんですが、あまり寝付きが良くないのか、目をこすりながらも上体を起こしています。案外、繊細なのかしら?

野宿でも片鱗を見せていたごうくんは、両手を広げ、
布団は胸まではだけてここでも寝相の悪さを披露しています。

【読み聞かせ】
全作品を通じて、文字は最下段の約1.5センチ幅に1行と統一されています。
ですので、字数自体は多くありません。
その分、広々と絵が描かれています。

この絵には本作ももちろんですがシリーズを通して、植物や動物、虫が豊富に、さらに様々な種類が描かれています。

これが本作の素晴らしさの1つです。

野山などでのフィールド観察が好きな親子にはもってこいですし、
詳しくない方には、作品を通じて野草などを知る機会になるかもしれません。

また各シーンである行動をとっている人物をたずねています。
「だれ?」
と聴き手に問いかけると、名前がわからない状態でも「これ!」と答えると思うので、それで双方向性の読み方が出来ると思います。

時間的には長時間にはならないので(5分から10分程度)、
疲労度は低いです。
ただし、シリーズで複数所有していると、他作品を所望される可能性もありますが…(泣)。

【(独断の)対象年齢】
早いと1歳半くらいから楽しめます。そして楽しみ方の変遷がありながら長い間に渡って読めると思います。

【書誌情報】

14ひきのひっこし

いわむらかずお

童心社


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