究極の芸人

次々と新たなお笑い芸人が登場し、盛り上がりをみせている今日この頃ですが、個人的にリスペクトする方々について記してみます。


ダチョウ倶楽部

先日、ダチョウ倶楽部がプロ野球の始球式に登場したことが報じられました。

ニュースによると、期待通りの芸を披露して球場を盛り上げたらしいです。

かつて彼らの露出が増え始めたころ、しばらくの間「消える芸能人」といわれていたことが、鮮明に記憶に残っています。

なぜなら当時から個人的にはかなり面白いと思っていたので、消えるという評価に違和感を感じていたからでした。

御本人達は「低空飛行で現状維持」と自虐的に語っていますが、決して低空飛行ではないですし、これまで飛び続けてこられたこと自体が素晴らしいことです。

思えば少し低調気味の頃だったのでしょうか、深夜のテレビショッピングに登場していた時、しかしながらその時も一切、手を抜いていなかったのです。商品を売るための番組で、買う目的が無ければ深夜に観る必要もない番組なのに、ダチョウ倶楽部が面白くて、彼ら観たさに夜更かししてしまっていた頃を思い出しました。

そして現在となっては上記のように、もはや伝統芸能ともいうべく鉄板芸を披露しているのです。

次の展開が予想通りなのに笑えるし、そして誰も傷つかない。

ちょうど落語のようなものともいえます。

落語は、聴く側は既に噺の中身はわかっているのに、それなのに聴く度に面白い。

その理由のひとつには、例え同じ噺家であっても、ほんの少し、マクラや言い回し、アドリブなどが異なるところもまた魅了されるポイントなのかもしれない。

それでいくとダチョウ倶楽部のネタも相手やシチュエーションが異なるところを、どのように料理して安定の伝統芸を披露してくれるか、そのようなところが醍醐味となっているのかもしれません。


出川哲朗

かつて「嫌いな男ランキング1位」、「砂に埋めたい男ランキング1位」など不名誉なタイトルを総なめにしていた出川さん。

それが今や「CM起用社数ランキング1位」、「一番面白いピン芸人ランキング」で2位にまで上り詰めてきたのです。

不名誉タイトルに不本意な評価だと思っていた私としては嬉しい限りですが、当時の結果に納得していた方々は今の快進撃をどのように思っているのでしょうか。折角ですので私から「ざまぁ〜みろ!」というメッセージを贈らせて戴きます。

そして、出川さんのお兄さんも大変素晴らしい方だと思いました。

先日のクイズ番組に出演されたお兄様は、

出川が雑誌「anan」の「嫌いな男ランキング」で5年連続日本一を獲ったことを振り返り、雄一郎さんが店主を務める海苔店では、客が出川のポスターを見て「横浜の恥」と言っていたという悲しいエピソードが明かされる。出川は「胸が痛かった」と回顧するが、雄一郎さんは「なんにせよ日本一になるということはすごいこと」と弟の快挙を誇らしく思っていることを明かした。

と弟の不名誉なタイトルを褒め称えるコメントを述べていました。

このような了見の身内がいると、自分の方向性を信じて見失うことなく突き進むことが出来ると思います。味方である御家族に囲まれていたから、お兄さんの優しさや理解があったから、それが出川さんの原動力となっていたに違いありません。


志村けん

(芸人が舞台に)出てきて愛想して、挨拶して帰っていく。
それだけで客が面白いという
それが究極の芸人だ。

というようなことを
志村けんさんは生前語っていました。

それに近い存在まで上り詰めた御自身が言うのですから納得させられます。

子供時代、全員集合で舞台袖から志村さんが登場して来ただけで、もうワクワクして面白い気持ちになっていた、あの頃の自分を思い出します。


古今亭志ん生

落語界の昭和の名人である志ん生師匠の、有名なエピソードですが、
ある時、師匠が二日酔いで高座に上がり、そのまま寝てしまいました。

それを前座さんが起こそうとすると
そこへいた観客は「起こすんじゃねえ、寝かしとけ」といったというのです。

名人の寝姿すらもみていたい。

そんな存在であった志ん生師匠。

酒好きのために、関東大震災では揺れている最中、東京中の酒がなくなると思って、酒屋へ一目散に走って行きますと、酒屋の店主は逃げたい一心で、どうぞ好きにやってくれと。

それで浴びるように酒を飲んで、もう地震で揺れているんだか、自分が酔ってフラフラなのか判らない状態で長屋へ戻ると、おかみさんが呆れて「身重の私の身にもなってよ」といったことで、初めて妻の妊娠を知ったというのです。

これらのエピソードを聴くと、もう敵わないと思うくらい飛び抜けていて、高座の上でも普段でも面白く、天賦の才能というほかないのでないだろうかと思えてきます。


高田純次

『適当論』という書籍も上梓するくらい「適当」をモットーとしている高田さん。つねにふざけてジョークをかましている「軽薄」というようなイメージでありますが、そのような芸風を続けて来られながら、いまも一線で活躍している彼はかなり頭の賢い方であると思います。

「天才たけしの元気が出るテレビ」でバズーカ砲ぶっ放したり、人の指輪の宝石を齧りとって飲み込むようなシーンで抱腹絶倒していたことも懐かしいです。

さらに現場評も非常に高いようです。このような点も長期的活躍の一因なのでしょう。

高田さんの秀逸なエピソードには、

御本人を見掛けて声を掛けたファンに対して「これで美味いもんでも食べな」と言って、割り箸を渡したという。

凄すぎません?

思い浮かべるだけで笑えてしまいます。

普通このやりとりで渡すのは、商品と交換可能な物、つまり「お金」とかを思い浮かべてしまいますが、そこを割り箸という。

自身の放った台詞と全く矛盾していないことがまた素晴らしいですし、この対応のためになのか、予め胸に割り箸を仕込んでいたと思うと、それだけで笑えますし、よもや適当とは到底思えやしません。


おわりに

新世代の芸人達が数十年後にどのような活躍をしているのか、はたまた舞台に立っていることがそもそも出来ているのか、それは誰にもわかりません。

しかし長きに渡って愛されている芸人の方々を観ていると、ひたむきに努力と才能を惜しむことなく注ぎ込んで、継続して精進なさってこられたのだなぁと、あたらめて思いました。


おしまい

最後までお読みいただきありがとうございます。 いただいたサポートは麦チョコ研究助成金として大切に使用させて戴きたいと思います。