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東京日朝焼肉大戦争血風録(9)

 朝鮮大学校では、日々、エリート教育が行われている。これは間違いない事実である。

 なーんてS経新聞風に書くと「やっぱり」と過熱する層。「いい加減なことを!」と怒る層もいると思うが、まぁ熱くなってはいけない。

 朝鮮大学校で学生たちに話を聞いてみたのだ。彼らは校舎と校舎の間のスペースで七輪に炭を入れ火を起こし、どんどん広場に出していく。この手際が妙によ過ぎるのだ。男子ばかりではない、女子もだ。

「もしかして実家は焼肉屋さんなの」と聞くと「いや、普通にぼくのお父さんはサラリーマンで、お母さんは主婦やってますが」という。それにしては手際が良すぎるというと「あぁ、朝大に入って初めに叩き込まれるのがこれなんですよね」「朝大生は何かあったら外で焼肉なんです」という。けしからん!けしからんぞぅ!

 朝鮮大学校OBに聞く。30代のあるOBは上のことを否定しない。「厳密にいうと15歳。高校生になったころから七輪で火を起こすのは習いますね」と。筋金入りなのだ。

 今は朝鮮総聯、在日社会から距離を置く60代の人も「え?七輪で炭をおこすってそんなに驚くことかしら。普通にやってたわ」という。朝鮮大学校ではもちろん、家でも七輪に炭入れて肉を焼いていたというのだからすごい。誰でも出来ることなのだ。

 肉について聞いてみた。朝鮮大学校の場合学食を通して注文するらしい。すると凍った肉とたれが届く。昼に焼肉をするとしたら朝早く、まずは、到着した肉とたれを混ぜて揉む。これがなかなか辛いらしい。

 そして肉に十分にたれがしみ込んだところで寝かす。やがてお昼ごろに肉がたれのおかげで溶けていい塩梅になるのだ。

 肉については学生の場合カルビとホルモンがほとんど。ハラミがつくことは珍しい。公開イベントの場合はハラミもつく。

「いやー、朝大の肉って絶品ですね」とある焼肉店の方に話したら「そこまでいい肉は使ってないが」と苦笑いされた。これまで紹介して来た雪見だいふくとのコラボ、雰囲気などなどで絶品の肉に仕上げる。でもホルモンは結構いいホルモンを使っているらしい。

 さて、そんなカルビ、ハラミ、ホルモンであるが紙皿にどさっと一人前乗って、なんと500円である。1人前ずつ食べたらお腹いっぱい。1,500円で焼肉腹いっぱいというのは、もはや罪である。

 さて、基本的に在日コリアンの人たちは実に気風が良い。散々ごちそうになってばかりだ。これは彼らの個性でもあるが、加えて学校のイベントの収益が貴重な学校運営の資金となっているという背景があるのは見逃せない。

 在日コリアン社会への距離感は人それぞれである。ゴリゴリのシンパの方もいれば、距離感を置いた人も多い。組織への距離感に加え、アイデンティティの濃淡もある。

 だが共通して後輩、朝鮮学校への想いは強い人が多い。学校のイベントには集まり、学校のためならと、どーんとイベントの日はお金を使う。キンパブ(のり巻き)を買い、肉を買い、ビールを買い、当然余る。そこに日本人の記者が来たら「食べてけ食べてけ!」となる。

 結果、腹いっぱいになる。

 つまり、彼らの庭に飛び込んでしまった時点で、勝ち目はないのだ。炭をおこすことから、肉を準備し、色々買うところまで。日本人は在日コリアンに斬られるがまま。 

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