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【解説】灘中 2022年 国語 1日目について

(灘中 2022年 1日目についての解説になりますので、お手元に入試問題をご用意の上でご覧下さい。なお、全体の分量は約2000文字です。また、2022年当時に書いたものの再掲になりますのでご了承下さい)

 今年(2022年)も、近畿圏の中学受験が1月15日にスタートし、4日目となりました。男子の最難関である灘中、甲陽学院中の結果が出てきています。これから東大寺学園中、洛南高校附属中の合否発表も行われますので、まだ気を緩めることができません。
 さて、今回から2回に渡り、今年の灘中の入試について個人的に気づいたことをまとめてみようと思います。
 顕著な特徴としては2018年以降の入試と比較した場合、国語の平均点が明らかに下がった点が挙げられます。2021年度の入試はコロナ禍の影響もあってか難度をやや落としており、昨年度と比べて今年度の平均が下がるのはごく自然なことと言えます。しかし、コロナ禍の影響がなかった2020年度と比べても特に2日目の平均が目立って低下したことは、注目に値します。今年は例年通りの「容赦のなさ」が見られたということになるでしょう。
 例として1日目を見ていくと、いくつか灘中らしさが浮き出た問いが見受けられました。ハイライトと言えるのは、まず大問三です。「慣用表現の穴埋め→漢字づくり」という2段構えの問いですが、少しマニアックなことわざが2つ紛れ込んでいます。それは、2の「夜を(A)に継ぐ」と、5の「立てば歩めの親(B)」です。どちらも塾のテキスト等であまり見かけないため、受験生が戸惑った可能性があります。しかし、訓練を重ねた勘の鋭い受験生なら、それぞれの空欄に入る漢字を推理できたと思われます。
 例えば、2の場合は「夜」と「継ぐ」に着目し、「夜から何かにつながっていく」なのだから、「朝」「昼」等が入りそうだと推測し、さらに「去る(B)は追わず」のBには「者」と当てはまることと合わせ、Aには「朝」「昼」と関連する「日」を入れれば「暑」ができると気づけたかもしれません。また、5は「(A)をときめく」のAに「今」を当てはめ、「今」と組み合わせられて、「親」に続く漢字はと考え、「心」を思いついたということもあり得ます。灘中の1日目は、「知識で解く」とは違う角度から答えにたどり着けるケースが存在します。
 その他の注目したい問いは、大問七の漢字しりとりです。ここは昨年に比べ、はっきりと難度が上がっています。恐らく、ここで高得点を稼げた受験生はそれほど多くないでしょう。ここぞというところに触れますと、例えば1の「紀(C)―(C)(D)―(D)曜」の部分でしょうか。空欄が4つ連続するところのため、手がかりが少なそうに見えますが、カギは最後の「曜」です。「曜」があとに来る熟語と言えば「曜日」だと気づけると、Dの答えは「月/火/水/木/金/土/日」のどれかと予想できます。あとはこれらを順に当てはめながら、Cに入る漢字を検討するだけです。
 これは比較的解きやすいのですが、厄介なのは2の「首―(E)(E)(F)―(F)体」のところです。ここも空欄が連続するため、ヒントが少なくて手強いと言えます。攻略するためのヒントは、問いの〔条件1〕と〔条件3〕です。空欄に当てはまる漢字は全て音読みであり、1回目と2回目で読みが異なるとされています。では、取りあえず「首」で始まる熟語を色々と考えてみましょう。すぐに出てきそうなのは、「首位」「首相」「首都」辺りでしょうか。灘中受験生なら「首府」等も思いつきたいですね。次に「位」「相」「都」「府」を見直して、2通りの音読みがあるものを探してみましょう。真っ先に気づくのは「相→ソウ/ショウ」です。しかし、これを当てはめて総当たりで検討しても、「体」につながって2通りの音読みがある漢字が出てきません。はてと他の漢字を見ていくと、「都」に目が行きます。「都」には「ツ/ト」と2通りの音読みがあるので、これを使うと考えてみて下さい。「都」が1文字目に来て、「ツ」と読ませる熟語と言えば、「都合」「都度」等があります。早速、「都合」をはめ込んでみると、「首都→都合→合体」になります。「合」が、「ゴウ/ガッ」と異なる読み方になっているので、条件にもぴったりです。この問いは最初に答えの候補をいくつか準備し、その中から条件に合うものを絞り込んでいくという解き方が有効です。
 興味深いのは、この問いが逆のルートでも解けるという点です。〔条件3〕に「『っ』に変化するものでもかまいません」とあり、これがヒントかもしれないと気づいた受験生もいるでしょう。そうすると、仮に「〇っ体」としてみて「合体」の可能性を疑い、「首→(E)(E)合→合体」としておき、Eに「都」が入ると考えていくこともできます。知識を駆使して色々な角度から試行錯誤を重ね、答えに至るというパターンが出てくるのが、灘中1日目の特色の1つです。そして、今年はそうした設問がきっちり出題されていたという点で、実に灘中らしいテストだったと言えます。
 灘中1日目で平均点以上の点数を取るためには、もちろん豊富な語彙力が必要になります。ですが、さらにその向こうに「知識を使いこなして考える」という世界が広がっていることも意識していると、一歩も二歩も先に踏み出せるという点を受験生は意識しておきましょう。

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