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松浦産業の挑戦とアイデア商品開発、中小企業の成功事例

中小企業が持つ可能性や成功の秘訣について、今回ご紹介するのは香川県善通寺市に本社を置く「松浦産業」です。同社は、紙袋向けプラスチック製取っ手のトップメーカーとして知られていますが、その活動は単なる製品供給に留まりません。取っ手付きのうどん鉢や生分解性の害獣対策テープなど、ユニークなアイデア商品を次々と生み出しています。松浦産業の成功の鍵は、創業から90年以上にわたり培われた技術力と、常に新しいことに挑戦する進取の精神です。
その姿勢や事例を通じて、中小企業の成功の要素を探っていきます。


1、創業からの歩みと成長

松浦産業は1932年に創業し、当初はわら縄製造を行っていました。時代の変化とともに、同社は荷造りひもや紙袋の取っ手など、プラスチック製品の製造に事業を拡大。現在では、紙袋の取っ手において国内トップシェアを誇る企業となりました。しかし、同社の成功は単なる規模の拡大にとどまらず、技術革新を通じた高付加価値化にも力を入れてきた点にあります。

副社長である松浦英樹氏は「業容拡大をヨコとするなら、技術革新による高付加価値化がタテ。ヨコとタテいずれの進化も重視している」と語っています。この姿勢が、松浦産業をただの製造業から脱炭素や持続可能な社会に向けた商品開発企業へと進化させたのです。

2、取っ手付きのうどん鉢「とっておきのうどん鉢」の誕生

松浦産業が手掛けた中でも注目すべきアイデア商品のひとつが、2023年に発売された取っ手付きの「とっておきのうどん鉢」です。これは、プラスチック製で軽く、持ちやすい形状が特徴。飲み口も備えているため、年配の方でも手軽にうどんを楽しむことができる設計になっています。

この商品の開発のきっかけは、副社長がうどん店で見かけたお年寄りの光景でした。「足が悪くて店に入れず、車の中で家族が運んだうどんを食べるのに難儀していた」という経験が、商品化の契機となりました。2つで4180円という価格設定にもかかわらず、コンセプトに共感した多くの顧客が購入し、これまでに4000個が販売されています。

この商品には、トヨタ自動車の車体デザインを手がけたデザイナーを起用するなど、デザインにも強いこだわりがあります。単なる機能性だけでなく、持つ喜びや使う楽しさを提供することが、松浦産業の強みと言えるでしょう。

3、脱炭素に向けた取り組み、紙製の取っ手と生分解性テープ

松浦産業は、プラスチック製品を主力とする一方で、脱炭素にも積極的に取り組んでいます。同社は「プラスチックでしか製造できない商品は付加価値を高めてより長く使えるものとし、それ以外でできる商品も開発する」との方針を掲げ、地球環境に配慮した製品開発を進めています。

その一例が、紙製の取っ手です。これは、祝儀袋などに使われる「水引」をヒントに、製紙会社と協力して開発されました。素材は純国産であり、少量の発注にも対応可能。プラスチック製品に代わる環境に優しい選択肢として、注目を集めています。

また、同社は微生物が分解できる生分解性の樹脂を使用した「土、帰るテープ」という害獣対策商品も開発しました。このテープは、植物由来の樹脂を使っており、木に巻き付けてシカやクマなどの害獣から樹皮を守る役割を果たします。通常のテープとは異なり、はがされた後も自然に分解されるため、環境に負担をかけません。この商品名は香川県出身の文豪、菊池寛の戯曲「父帰る」にちなんで名付けられました。

4、好奇心と進取の精神が生むアイデア

松浦産業が次々と新製品を開発できる背景には、「好奇心」というキーワードが存在します。副社長は「好奇心が自社のDNAだ」と語り、自身も展示会やSNSでの情報収集に熱心です。新しい技術や世界の動向に敏感であり、これが同社の製品開発において強みとなっています。

例えば、同社は新型コロナウイルスのパンデミック以前から、抗菌・消臭機能を持つシートの販売を手掛けており、これがコロナ禍において大きく伸びました。このように、時代のニーズを先取りし、技術力を活かした製品を開発することが、松浦産業の強さの一端です。

5、中小企業の成功へのヒント

松浦産業の成功事例から学べることは、常に新しいアイデアを追求し、時代の変化に柔軟に対応する姿勢の重要性です。技術力を持ちつつも、そこで止まることなく新しい領域に挑戦することが、中小企業が市場で生き残り、成長を続けるための鍵となります。

特に、松浦産業が持つ「ヨコ」と「タテ」の進化、つまり業容拡大と技術革新の両輪を回す姿勢は、中小企業にとって非常に参考になるポイントです。現状に満足せず、時代に即した商品開発を続けることで、松浦産業は今後もますますの成長が期待されます。

松浦産業の成功の背景には、顧客のニーズを深く理解し、それに対して具体的な解決策を提案する力がありました。これは、どの企業にとっても大切な姿勢であり、今後も多くの中小企業がこの例を手本にして成功を収めていくことでしょう。

取っ手、うどん鉢などアイデア商品続々 香川の松浦産業 -
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC1398T0T10C24A9000000/

#中小企業成功事例 #製品開発 #アイデア商品 #脱炭素 #技術革新

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