28 女性軽視のモラルハラスメント

妻の母を見下す

 モラ夫は、私の両親への態度が父と母とで違いました。私の父親に対しては、常にニコニコと接し、挨拶も礼儀正しくします。ただモラ夫は挨拶以上の会話の引き出しがなく、すぐどこかへ出かけていきます。仕事の話も社会問題の話も、家族や旅行や趣味の話が何もできません。毎日YouTubeで好きな動画ばかり見ているので、それ以外の話題がありません。

 私の母親に対しては、不機嫌な態度をとります。理由は不明ですが、モラ夫と母親だけの空間になった時は、不機嫌そうに携帯をずっといじるだけで、母親に話し掛けたりとか、何か手伝ったりとか、そういうコミュニケーションは一切ありませんでした。


最後の引っ越し

 新居購入に際しては、いろいろとありましたが、無事に契約でき、いよいよ引っ越しの日にちが決まりました。私はフルタイムで仕事もあるし、妊娠中ということもあって、毎日少しずつ荷造りをしていました。夫の機嫌もそう悪くなく、引っ越しに向けて順調に進んでいました。新しい環境はだれしもワクワクするものです。
 私はどうしても引っ越し当日に仕事が休めなかったため、当日の作業は手伝いに来てくれた実母と夫に任せることにしました。その代わり、当日を迎えるまでの準備は私が責任をもって進めていました。

 引っ越し当日、私は、仕事の後保育園へ娘をお迎えに行き、夕ご飯を食べさせて新居に移動することになりました。妊娠8カ月の妊婦だから、いずれにしても引っ越し作業では役に立ちません。万が一お腹が痛くなれば、夫は不機嫌になるでしょう。それに小さい娘を作業中の新居に連れて帰っては、邪魔になります。作業が完了するまで時間をつぶして帰宅するつもりでした。
 当日最も私が怖れていたのは、夫の空腹でした。お腹がすいたら人は不機嫌になるものです。それに実母の前では素が出るのか、夫はなぜか不機嫌にふるまうことが多かったように思います。特に空腹のときは露骨です。普通は相手の親の前では、露骨に不機嫌にならないものだと思うのですが、モラ夫はそれができません。私は義家族の前で不機嫌にふるまったことは、一度もありません。それが礼儀だし普通のことだと思います。


「ちゃんとごはん食べといてね、駅前の弁当屋さんや中華屋さんでテイクアウトできるから」
と前もってモラ夫に念押ししました。私の母にも同じことをお願いしました。
「旦那は自分では何もできないから、お母さんが、夕ご飯をどこで買うか場所とメニューを指示してあげてくれる?駅前に行けば、いろいろテイクアウトできるからさ。お金はこれ渡しとくね」5千円札を渡して母親に言いました。ここまですれば大丈夫なはずです。
「私は娘とご飯食べて帰るから。娘がいたら危ないし邪魔でしょ。時間つぶしとくね」
「うん、それがいいね!あとは任せてね」
「ありがとう!じゃあ仕事行ってきます!よろしく!」


 そしてその日は、娘と駅前でラーメンを食べて帰ることにしました。
「やったー!ラーメンだーい好き!!」
この子はなんでも喜んでくれてとってもかわいいのです。
「そうだね、嬉しいね!2人でラーメン食べるの久しぶりだもんねぇ」
娘に言い、ラーメンを待っている間に母に電話しました。
「引っ越し今から食べて帰るよー。あ、ごはん食べた?」
「…いや食べとらん」
「え!!なんで?」
 聞くとタイミングを逃したとかで母も夫も夕食を食べていないというのです。もしかして夫が不機嫌だから、何を食べるか決めかねたのかな、と思い心拍数が上がりました。もうラーメンの味はわかりません。急いで食べ終わると母とモラ夫の分のテイクアウトを注文して、大急ぎで自宅へ歩きました。疲れてぐずる娘、妊娠8か月の大きなお腹。。。心だけ焦りながら帰宅し、家の中に入りました。業者がまだ荷物を運びこんでいる真っ最中でした。母と夫は和室に黙って座っていました。


モラ夫「ここしか座るとこないから」と案の定、不機嫌そうに言いました。私の感覚では、妻の母と一緒にいる時に不機嫌な状態でいるのは失礼だと思うのです。しかし彼は私の母と一緒にいる時は、たいてい不機嫌でした。父親がいる時はニコニコと愛想笑いをします。

母は「本当のお母さんと同じように接してくれてるからうれしいよ」
と言ってくれていましたが、私は、夫が母を見下しているようにしか思えませんでした。父親も同席している時とは明らかに態度が違うのです。

「2人で業者を見守らなくても、パパが買い出しに行けばごはんもっと早くに食べれたんじゃないの?」
もう夜の8時になろうとしていました。
モラ夫「・・・はあー、しんどいし無理」
はぁとため息をつく夫。母は黙って座っています。
「まあいいや。ほら、いっぱい買ってきたから、これ今から食べてね」
中華丼、麻婆豆腐、などいろいろ入った袋を見せました。皿は容器の蓋を使えば問題ないだろう、と思いました。とにかく急いで帰りたかったので、取り皿まで買いに行くのは面倒だったのです。

モラ夫「…何で取り皿買ってこんかったん」
夫が不機嫌に言いました。
「ごめん。これじゃダメかなぁ」
と私は容器の蓋を差し出しました。
モラ夫「こんなんダメに決まっとるやろ、こんな汁気の多いもんどうやって分けるん。それにスプーンは?箸でどうやって食べたらいいん」
注文した時、箸で大丈夫かなと一瞬頭に浮かんだのですが、家が心配で急いでいたし、疲れていて面倒になったので、店員さんにスプーンくださいとは言いませんでした。結局それがまずかったのです。どんなに疲れていても、スプーンをもらってきておけばよかった。そうすれば夫の機嫌は悪くならなかったかもしれない。私はいつも失敗ばかり。夫のこと全く分かっていない。と気が利かなかった自分を責めました。この不機嫌な空気が本当に嫌でした。どうして明るく振舞えないのでしょう。
「…じゃ、今からスプーン買ってこようか」
モラ夫「そういうことじゃない!今更無駄!もうこれで食べるからいい!」

 何も言い返せませんでした。とにかく不機嫌が去らなければ、何も変わりません。母は私たちのやり取りの様子をじっと黙って見ていました。
「さ、冷める前に食べましょうか」
と夫が黙ったタイミングで声をかけてくれました。夫の不機嫌を見て、できるだけ明るい声で母は言ってくれたと思います。しかし私の頭の中は
(また失敗してしまった。どうしよう。どうしよう。スプーンも取り皿もやっぱり準備するべきだった。疲れたなんて言い訳だ。なんでもっと頑張れなかったんだろう)と自分を責める言葉でただただいっぱいでした


モラ夫は自分の親も兄弟も見下す

 夫は、自分の母親に対しても「しょせんあんな親」と見下していました。娘が食事の時口をくちゃくちゃ開けている時は、「そんな汚い食べ方、パパの姉ちゃんと同じやで。あいつ、大人のくせに娘みたいに汚い食べ方するよ。姉ちゃんみたいにならんほうがいいからな!次から気をつけろ!!」
 それを聞いた私は、何も言えません。同調も否定もできないし、ただ気まずい空気が流れるだけです。

自分の母親を見下す理由は2つあります。

ひとつは、マザコンを隠すために必要以上に馬鹿にした表現をする。もうひとつは、自分の未熟さを、母親のせいにするためです。

「お母さんのせいで俺は小学校から不登校になった!」

「お母さんのせいで俺はこんなに人の気持ちがわからない人間に育った!」

「お母さんのせいで俺は馬鹿だ!」

「お母さんのせいでこんな大人になった!」

結局、モラ夫は自分が変わろうとしないので、いつまで経っても人のせいにして生きていくのです。いい大人なのに、まだ親のせいにしています。おそらくこの瞬間も、「お母さんのせいで俺は離婚する羽目になった!」と言っているかもしれません。自分が変わらなければ、繰り返すだけです。自分らしく人生を送るには、自分の選択に責任をもって生きるしかないのです。


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