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1on1 上達方法の盲点

コロナ禍になって離職率がどっと上がりましたね。リモートワークが増えたために、業務の合間に転職活動のためのオンライン面接を受けやすくなったという物理的要因もさることながら、「このままでいいのか?」というキャリアの先行きへの漠然とした不安や焦り、コミュニケーション量の不足によるチームへの帰属意識やエンゲージメントの低下などが底流にあることは否定できないことだと思います。

1on1を組織のスタンダードに

離職を未然に防ぐために、管理職に部下との1on1を徹底させよう、そうすることで社員のキャリアへの不安を取り除き、会社への心理的なつながりを維持・強化しようとする企業が増えています。

上司の側が指示・指導するのではなく、部下の話をよく聞いて、内発的な動機付けを支援し、自ら気づき、行動できるようにサポートする1on1の関わりには、言うまでもなくコーチングスキルの習得が効果的です。傾聴・承認・質問・フィードバック・GROWモデルなど、基礎的なスキルを扱う研修を受けたことのある管理職も増えました。

こうした理論を習っただけですぐ実力がつくわけではないので、「数をこなしてなんぼ!」と、一生懸命まじめに日々の実践に取り組む方が多いのは実に喜ばしいことだと思います。

1on1の上達に向けた3つのアプローチ

1on1を組織のスタンダードにしようという動きが出てきているから、というと逆説的ではありますが、「1on1がうまくできない、どうしたら上達できますか?」というご相談を受ける機会も増えました。

私がコーチングを学んだスクールでは、上達スピードを速めるには、初心者のうちから以下の3つに“同時に”取り組むのが良いと教えて頂きました。

 ① コーチングの理論を学ぶ
 ② 自分がコーチングを受ける
 ③ 複数の人にコーチングを提供する

上達方法の盲点

上記3つのアプローチの中で、皆さんの盲点になりがちなのが、②の「 自分がコーチングを受ける」ではないかと思います。
正直に申し上げると、私自身も、①・③には素直に取り組めましたが、②にはなかなか食指が動きませんでした。

既にコーチングスクールに支払った高額な授業料に加えて、決して安くはないコーチ料を出してまでコーチングを受けるほどのテーマは無いと思っていました。更に言うと、自分がコーチングを受けることが、なぜスキルアップに役立つのかも、あまりピンと来ていませんでした。

1年半ほど経過したある日、入学契約時の営業担当だった方から突然電話がありました。そして、「木村さん、まだコーチを付けていないのね。私でよければやってあげるわよ」という不意打ち。その方のその時の台詞のままというよりは、私が受けた衝撃で勝手に脚色した記憶だとは思うものの、びっくりして断れずに「お願いします」といってしまったのが、恥ずかしながら、私が最初にコーチを雇ったきっかけです。

知識として知っていることと、やってみて体感することの差

いびつなスタートでしたが、その方とのセッションが自分の捉え方・決断・行動にもたらした革新は絶大でした。

コーチとの対話で自分の無意識的な思い込みが可視化され、そこから解放されると新しい世界が広がるとか、環境は何も変わっていないのに、どうしようもない問題だと思っていたことがチャンスだとさえ思えるようになる、などという理論は既に知っていましたが、それは具体的にどんなプロセスから生まれて、自分にどんな感覚をもたらすのか? 耳学問と実際の体験には大きな違いがありました。

以来、コーチングを受けることは私の日常のものとなり、その時その時、自分にフィットすると思えたいろいろなコーチにサポートをお願いして、今日に至ります。

そして、20年余りの自分の経験から、上記②「自分がコーチングを受ける」体験は、何らかの目標を達成する以外にも、自己理解を深めて人生の優先順位を明らかにしたり、自他への受容力を高めたりして、人生を豊かにするだけでなく、①の理論学習の深化、③のコーチングの提供価値の向上との間に相乗効果があり、結果的にコーチングのスキルアップには欠かせない要素だと確信するようになりました。

「学ぶ・受ける・提供する」3つに同時に取り組むことの相乗効果

話を分かりやすくするために、お料理のメタファーを使って、コーチングの上達を美味しいブイヤベースを作れるようになることに例えてみましょう。

① の理論学習はレシピの入手ですね。
そして、③のコーチングの提供は、レシピに従って自分で作って誰かに食べてもらうこと。上達のためには、何度も繰り返して作ってみるだけでなく、何が良かったか、更に改善するとしたら?など、食べてくれた人たちからフィードバックをもらうのも重要です。そうすることで、自分なりにレシピをアップデートしていくことができます。

そして、②の自分がコーチングを受けるというのは、お金を払ってレストランで食べること。
「うわ~美味しい!」と感動したら、その一皿を自分のモデルにすることで、おのずと提供価値のイメージが引きあがります。どうすればこういう味になるのか?と疑問を持って、秘訣を聞き出そうとしたり、これまでのレシピに工夫を加えようとしたりするかもしれません。
近所の気軽なレストランから、ミシュランの星がつく有名オーナーシェフのお店まで、様々な作り手のブイヤベースを食す体験は、あなたが作るブイヤベースをより美味なものにしていくために必須の体験ではないでしょうか?

自分の1on1になんとなくモヤモヤを感じていらしたら、そしてあなたがコーチングを「学ぶ・提供する」のみに留まっておいでなら、是非一度、プロのコーチングを受けることを検討してみてください。
「受ける」が加わることで加速する相乗効果を手に入れて、個人として、管理職として、リーダーとして、これまでとは違う次元に踏みだすきっかけになると思います。


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