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デジタルトレンドと、変わらない大切なこと

転換点を迎えて

長期に渡って私たちの生活に影響を与えてきた、新型コロナウイルスの扱いに変化が見えてきました。外国人観光客の受け入れ再開や、マスク着用の見直しなど。抑制すべき未知のリスクといった扱いから、注意は必要なものの対処法のある既知の問題へと移行し、国内においても一つの転換点を迎えています。

経済・企業業績の話に移ると、新型コロナ以降に人流が抑制され様々な制約を受ける中、ほとんどの業界で大幅な売上減少などマイナス影響が続いていましたが、リアルの代替や補完の役割を担うデジタルサービスの台頭で、売上を大きく延ばした企業も少なくありません。暮らしや仕事におけるデジタルの浸透度合いは、大きく変化した2年間であったと思います。例えば、2年前と比べると、企業で働くデスクワーカーの方でZoomやTeams等デジタルツールをつかったオンライン会議を経験している人としていない人とでは、その割合が逆転しているくらいには大きく変化したのではないでしょうか。

デジタルはより暮らしに身近に

その変化の中でも、この2年を振り返って感じることは、オンラインとリアル(オフライン)との棲み分けが進んできたことです。Web会議がデフォルトの選択肢になるまでに一般化した一方で、リアルでやることで一気に進むものがあると再確認した人も少なくないと思います。2020年初期に頻繁に行われていたオンライン飲み会も最近ではあまり聞かなくなりました。デジタルはあくまで人にとって役立つところで使われるもの、選択肢の1つとして定着した形です。

皮肉なもので、一昨年からの新型コロナの影響は、停滞していた働き方や暮らし方のデジタル化を”破壊的に”推し進めました。Web会議や、チャットベースオンラインコミュニケーションツールの浸透など、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を意識せずとも避けることが難しい流れとなってきています。リモートな働き方や暮らし方が当たり前になるとともに、リアルでのコミュニケーションを取り急ぎ代替するようなコミュニケーションツールに関しても、喫緊のニーズを満たすものが提供され、デジタルはより人々の暮らしに身近なものとなりました。

コロナ禍で生まれた新しいデジタルバズワード

デジタル化によるイノベーションが破壊的に進んだコロナ禍で、よく聞くようになった新たなバズワードとして「Web3.0」や「NFT」、「メタバース」などが挙げられます。Web3.0がどんな変化かという話についての詳説は他に譲りますが、Lobsterr letterで紹介されていた以下の説明が端的で的を射ているでしょう。

 "Web2.0を極限まで単純化すれば、Webは人々にとって「読む」から「読む+書く」場所になったということだ。<中略>Web2.0が「読む+書く」だとすれば、Web3.0は「読む+書く+信頼」とはよくいわれるところだ。"(Lobsterr Letter / vol.139 : Power to the People )

NFTなどに代表されるこのWeb3.0の流れにおいては「信頼」がキーになっており、「メタバース」の世界の中でも重要な事項になってくるでしょう。しかし、これらのバズワードに対して、リアリティを感じられないという人がほとんどなのではないでしょうか。こうした新しいトレンドについてはお金の流れをみると理解できるもので、twitterの創業者であるジャック・ドーシーは、VCが作り上げたお金儲けのためのトレンドであると批判しています。


メタバースにしても、NFTにしても、現段階だけを切り取っていえば、非常にアーリーな一部のユーザーの趣味的な活用と、お金の匂いを嗅ぎつけたVCや投資家にとってのものであるのが実態でしょう。今年の年始頃には、各種メディアでNFTについて取り上げられるタイミングがありましたが、概して投機的なニュアンスでの報道がほとんどでした。

人にとって価値があってこそのデジタル

いまや経済の中心でもあるテクノロジーは、そのトレンドの隆盛の裏には大きな資金の動きと思惑が先行してしまうため、ともすればDXの本質であるユーザーである働く人々、暮らす人々にとっての価値が置き去りにされてしまうこともあります。メタバースの話を聞いて思い出す人も多い、リンデンラボによるセカンドライフはまさにその事例だったといえるでしょう。

新しいトレンドワードの真贋を見極めるためには、そのテクノロジーが本質的に働く人々や暮らす人々にとって価値をもたらすかどうかに注目していくことが大切であると考えています。

人のためのDXというムーブメント

前述の経済界が先導するテクノロジーバズワードの動きとは別に、欧米では近年、トランスフォーメーションの主語をテクノロジーではなく、ユーザーである「人」に取り戻そうという動きも広がりつつあります。

たとえば、日本国内でも多くのユーザーを獲得している語学学習アプリ「Duolingo」や運動や瞑想の習慣化を促す「SWEAT」「Headspace」といったアプリでは、ユーザーが無意識に学習や習慣を継続できるように、一定期間を空けた反復トレーニングや、コミュニティとの繋がり、報酬型のユーザー設計など、神経心理学を応用したメカニズムを採用しています。

こういった工夫は、ユーザーが強い意思を持たずとも、新しいスキルを得るための学習を継続しやすくしたり、より健康的な習慣を得ることをサポートしています。

また、TikTokのレコメンデーションやUber等のマッチング機能も、アルゴリズムを活用することで、人が立ち止まって考えること無しに、スムーズに次の行動に移ったり、自然に自分の好きなものを探し出すことをサポートしてくれます。

こういったエンゲージメント確保のための行動促進のテクノロジーは、さまざまなアプリやサービスのアルゴリズムの中でも使われています。使い方を間違えれば、不健康な習慣やテクノロジーへの必要以上の依存を増幅させることもできるでしょう。

さまざまなテクノロジーは、それ自体の精度もさることながら、「誰のために、どう使われるのか」がより一層重要になってきています。

NFTやメタバースの可能性

NFTやメタバース等のバズワードとどう向き合うべきかについても同様の観点が重要だと考えています。「新しい」=「良いもの」という期待を人はつい持ってしまいますが、必ずしもそうでは無いことに注意が必要です。あくまで人にとって有益に使えてこそ、というところを忘れてはいけません。

このようなスタンスを持っている企業としては、Appleが挙げらます。Appleは最先端のIT企業としての印象も強いですが、真っ先に新しい技術を投入するスタンスではないことも、その領域に明るい人の間では有名な事実でしょう。日中韓の電機メーカーなどは、新技術が出るとこぞって搭載しますが、吟味されきれずに導入した技術がうまく活用されず下火になった頃、Appleが人にとって役立つ形でうまく活用方法を見出して搭載する、というような事例はこれまでにも何度もありました。

NFTやメタバース、そしてWeb3.0の様な技術トレンドが今後大きな価値をもたらす可能性は十分ありますが、人の暮らしをどう変えるのか、人にとってどう役立つのかという当たり前の観点で吟味することが大切です。

これからのPUPLICAとして

コロナ禍によって、世情が大きく変化した過去2年間。そして2022年もその余波はさまざまな場面で残されてゆきそうですが、PUPLICAでは、データとデジタルというテクロノロジーを、ユーザーである「人のために」、働き方や暮らしが良くなるために、どう使うのかを追求することが大切だと考えています。

パーパスに掲げる「人のためのDX」を実現するために、働く人や暮らす人がより豊かになる、ユーザーや生活者を起点としたDXを引き続き推進して参ります。また、生活者起点のDXサービスの展開も近年中に開始する予定です。

PUPLICAでは、技術トレンドに振り回されること無く、人間志向でデータとデジタルを活用する企業として、引き続き、クライアント企業や生活者の方々の課題を解決して参ります。



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