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キミの世界、ボクの世界⑥〜実践編〜

1. はじめに

少し前に「キミの世界、ボクの世界①〜⑤」という多様性、共生社会を主題にした妄想マンガを投稿しました。特に①は多くの方に見て頂きとても感激しております。ありがとうございました!(最敬礼)

このシリーズ、⑤で最終回を迎えたはずなんですが、「実践編」と銘打って新たに投稿します。今回は「つくること」を通して、我が家の個性派次男坊「しょーちゃん」(10歳、重度知的障害児)の世界との距離感を調節してやろうという試みです。

ちょっと⑤までの妄想を軽く振り返ってみたいと思います。

・世界観の違いがお互いの心理的な距離感のギャップを生む。(第一話より)

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・様々なデザインにより、心理的距離感は調節できる(第二〜四話)

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…というような論を展開したのですが、これは机上の空論に聞こえます。なぜなら実践を伴っていないから。

僕は完全無欠のインドア派なので、無惨に散らかった机上で、ハムスターのように空論を空回りさせることしかしてきませんでした。
しかし、今回の論は空論にするわけにはいきません。大事な子供たちの将来がかかっているから。空論回しのハムスターは、そのホイールを降り、ついに檻の扉を開けたのです。

2. 課題の抽出

次男しょーちゃんと一緒に暮らしていてストレスを感じるのは以下のようなことです。

彼自身の欲求を我慢できない。
夜中でも大声で歌を歌う。
隙あらば家の外に脱走する。
壁に文字や絵を書きまくる。

彼の世界は独特すぎて、一緒に暮らすのは正直、すごく疲れます。
(僕にとっての)問題行動を我慢させようと色々試行錯誤をしましたが、彼に大きなストレスがかかるようで、パニックのような癇癪を起こし、さらに手のつけようのない状態になってしまいます。

彼の行動を無理やり変えることをせず、僕も心穏やかに過ごせる方法はないか…。彼の世界と僕の世界との丁度良い接続感をつくれたら…。

3. 実践!落書きへの対処(計画)

今回は、いくつかある困りごとの中から一番対処しやすそうな「落書き」について挑戦してみようと思います。

以下の画像をご覧下さい。
これが次男の世界と僕の世界の不協和音を体現した『我が家の壁』です。(画像に写ってるのは長女です。)

壁紙上に空白がなくなり、それを剥がしてまで文字や絵を書いています。
開拓時代のアメリカ人もビックリのフロンティア精神。
そしてその密度たるや、耳無芳一。

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ここに何か工夫を施して、以下の2つの条件を同時に成立できれば成功とします。
・壁への落書きは自由。(次男の世界)
・ごちゃごちゃした小汚い雰囲気を少なくし、気持ちの良い空間を。(僕の世界)

落書きがあっても、意識がそこにいかないような、
あわよくば落書きが壁を引き立てるような、
そんな工夫はできないものか。

4.実践!落書きへの対処(行動)

色々考えたんですが、「目には目を、絵には絵を」ということで、壁に別の絵を描いて対処してみることにしました。

まずは壁紙を剥がして、真っ白に下地を塗ります。
今は本当に良い時代で、何かをやりたいと思えば、情報はネット上にゴロゴロ転がっています。そしてDIY用品も充実していてホームセンターで簡単に手に入ります。

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次男がデイサービスに行っている時間だけしか作業ができないので、1日目はこれで終了。壁画は翌日…。
と思っていると、帰宅した次男はその日のうちに落書きをしてしまいました。でも大丈夫。全て想定内。しかし、まぁ、どんだけNHKのEテレが好きなんだとツッコミたくなる落書きです。(左の赤字で書いてある、DVDの曲リストは暗記で書いています。)

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そして翌日。次男がデイサービスに行った後、絵の続きを始めます。
黒の太い線で、落書きよりも目立つように。
なるべくシンプルな線で、落書きの邪魔をしないように。
絵のテーマは「クリームソーダの海」。
長女(2歳)も興味津々です。

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我が家は次男がやりたい放題なので、それに乗じて長女もやりたい放題できるというメリット(?)。次男のおかげで長女はのびのび育てられます。

さらに色をつけていきます。
ベタ塗りにすると壁が暗くなるし、落書きも出来ないので、
輪郭を縁取るように、色を添えるようにつけていきました。

次男が帰ってくる前に何とか完成!
壁に絵を描いたことに不満はなかったようで、早速いつも通りの落書きが始まりました。

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クリームソーダの海を泳ぐクジラと魚たち。
そして海の中の文字や絵。

Before/Afterを比較したのが下の画像です。
落書きの量が違うので一概には言えないですが、濃い線に意識がいってすこし落書きが紛れ…てないだろうか?どうでしょう?
この線の枠内に色鉛筆でカラフルに落書きをしてくれたらいいなと思ったのですが、想定通りにはいきませんでした。何せ自由を愛する子どもたちです。No Borderでした。

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今、「らくがきAR」というアプリが話題です。
紙に描いた絵がスマートフォンの画面上で動き出す素敵なアプリです。
壁の絵も自由に動き出したら面白いなと思って購入したのですが、大きな絵や垂直面上の絵は認識しないようでうまくいきませんでした。
iPadで撮った壁の画像には反応して動いてくれたので、ARでの遊び心の可能性を感じました。ARを使えばもっと楽しくお互いの世界がつながるように思います。

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5.まとめ

いかがでしたでしょうか?
うまくいった!!と自信を持って言える代物ではなかったかもしれません。
でも、「ものをつくる」ことを通して、次男の世界観を考えたり、自分がどう表現するべきかを考えることはできました。
そして、できた壁の絵に楽しそうに落書きする次男(と長女)を見て、「お、その色でそこに書くのか」とか「そんなところにも描いちゃうかー、ま、いっか」といった偶然性や問題行動(だったもの)をポジティブに受け止められるようになった気もします。

これからも、「ものをつくる、デザインする」ことで「人と人の心理的距離感を調節できる」ということを楽しみながら実践していきたいなと思います。


最後に描いた様子を時間を縮めた動画にしましたので、お時間があったらご覧ください。(3分弱の動画です)

https://youtu.be/JtC9qboxioc


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