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Resonant

いつものように、赤いケースからベルを出す。
私が演奏する金管楽器、トロンボーンはスライドの部分とベルの部分が取り外しができる。
写真のように組み立てられていたらトロンボーンと分かるが、ケースを持っていると、意外と「サックス?」と言われることもなくはない。そんな時は軽く傷つく。
そして伸び縮みするスライド、実は取り外しができる。
そう。「取れる」のである。
その取れたスライドの印がついている付近によく振ったスライドオイルを垂らす。スライドをより動かしやすくするために必要なひと手間。
物によっては垂れてくることがある。なのでここはなるべく素早く入れておきたい。そしてオイルを全体になじませるように動かす。ちなみに、オイルひとつでも音色が変わる、とかという話もあるくらい。
ベルとスライドをしっかりと固定し、マウスピースを装着すれば準備はとりあえず完了。
さぁ、音出しをしよう!
という方もおられるとは思うが、私は1つ2つ、楽器を吹くための準備運動のようなものをする。
と、いうかこれを続けてやっていくと音そのものがガラッと変わったような気がする。
今回は少し紹介してみたい。
それは、「ブレス」の練習。
コロナ禍でのオンラインレッスンなどを通じて、練習方法をいろんなプロのトロンボーン奏者から聴いた。
まずは手を出して、それをそのまま口元につける。そのまま息をたっぷり吸う。ポイントは、「ゴォー」というような音が出るくらいに吸う、ということ。
吸いきったら吐く。
吐く時は、その息を感じるように、手のひらを内側にしてすーっと吐く。
慣れないうちなど最初はテンポや拍数など気にせずにやってみるといいかもしれない。
少し慣れてきたら、メトロノームを使って、(アプリもあります)ある程度テンポを決めてロングブレスの練習。
♩=60にすると1秒のテンポとなるので私は基準にしている。
カチコチ鳴らしながらそれに合わせてまずは4拍吸う。その後8拍吐く。ポイントはしっかり吸ってしっかり吐く。8拍で吐き切る、ということ。
これを、その時の状況に合わせていろんなパターンをやってみる。
人によっては吸うことを短くしてもいいかもしれないし、逆に長くしてより鍛える、みたいなこともできる。
本当にしっかりやると、これだけで汗が吹き出ることがある。
プロの奏者で、演奏する前にヨガをするという方がおられるという話を聞いたことがある。
ヨガは呼吸が大事という話を聞くので、ヨガをやることもありなのでは、と納得がいく。
また、器具などもあるのでそれを使うというのもすごくいい。実をいうとこちらの方が私には合っているのかな、と感じているところ。
私が主に使っているのは6リットル入るゴム状の風船のようなもので、流石に1回吐いたところで満杯にはならず、数回で満杯になる。その回数を減らせるようにと私は毎回奮闘しながら練習している。
次に、マウスピースだけでバズィングをすること。
バズィングとは何ぞや、と思われる方もいらっしゃいます。これです。

これはトロンボーン奏者だけでなく金管楽器奏者の中でも賛否両論あるようで、バズィングするならロングトーンやタンギング練習を、と推奨される演奏者さんもおられる。これが正解、ということは何事においてもないのだろうなと思う。
それでも私はバズィングを重要視したい。これも、続けていったことで音色が変わった要因の1つと感じている。
どんなことをしているのかこれも少し紹介したい。
まずは適当に高い音から低い音にグリッサンドをするように吹く。何回かそれを繰り返す。
ちょっと慣れてきたかな、となったらチューナーを使い、(ピアノがあれば尚よし)基礎となるB♭の音を出して合うように吹く。
合ったな、と思ったらそのままB♭の音を聴きながら音階を吹く。
そして、次にB♭を聴きながら5度、(F)3度(G)もバズィングで鳴らしてみる。この時の感覚としては「このくらいかな」。
また、ポイントとしては自分の居場所を見つける、どの高さだと心地よく吹けるのか、を考えながら吹く。
トロンボーンはぴたっとハマるハーモニーが常に要求される。
これを、半音ずつ下がってFくらいまでやっている。
バズィングだけで音程が取れるようになると、楽器につけて吹いた時に楽に出せるようになる。ということをついている先生から教わった。
数年前のレッスンではあったけど、今でも心に響くレッスンのひとコマである。
またあるプロの奏者さんが「音程とは、人と合わせるためのもの」とおっしゃっていたのも印象的だった。
ここまで読んでくれた方の感想をお聞きしたい。
「そこまでやるの?」と感じられた方がおられるかもしれない。
逆を言うと、プロの方はきちんと基礎ができている、ということも言える。
第一線で活躍されている管楽器奏者さんは揃って「まずはブレス」という話をされる。
今後も楽器を吹く前はブレス、バズィング練習をしっかりして演奏に臨みたい。
そして、たっぷりメロディを奏でてあなたの心を動かしたい。



何かいいものを食べます。生きます。