見出し画像

道草小噺⑦ヨメナ

”あぁ今年も春がきたな”と感じる食べものは、きっと人によってちがう。

私にとってのそれは、間違いなくヨメナご飯。


先日の春/道草晩餐会の時の<〆>。嫁菜ご飯の茶漬け。


ヨメナとの付き合いも長く、出会いは確か野草ハンター2年目の2011年。

場所は西の湖自然農の畑。

2010年2月にオーストラリアのWWOOF旅から帰国して、偶然、地元の自然農のグループの存在を知り、早速種下ろしから草取り、脱穀まで田んぼ1畝分を自分で管理する体験プログラムに参加し、大いに挫折し、2年目は田んぼを1畝で受け持つのはやめて、かわりに畑に挑戦することになった。

もちろん、畝を立てるところから。

自然農の考えでは(もともと自然農との出会いは福岡正信さん「わら一本の革命」だけど、ここが実践していたのは川口由一さんの哲学)、機械に頼らず、基本的に人の手ですべての作業を行う。なので、畝立ても鍬やスコップでひたすら土を掘り起こして行った。


畝立てをしたのがおそらく3月か4月。

私が畝を立て、畑をすることになったその場所に、びっしり生えていたのが、ヨメナだった。


いつものヨメナスポット、2018年3月8日。
出始めという感じだな。
ギザギザとした鋸葉が嫁菜。


もちろん、カンゾウの時と同じく、自分で見ただけだったら何もわからない。畝立ての方法を教えてくれたご夫婦がこれまたカンゾウの時と同じく、「ヨメナがびっしり生えてる〜!!」と喜んでいたからこそ、私はこの植物がヨメナと呼ばれていて、そしてどうやら食べられる、しかも美味しい、と認識するに至ったのだ。

せっかくなので奥さんに簡単に食べ方を教えてもらい、さっそく摘んで帰った。

2019年3月16日。
これくらいまで大きくなったらだいぶん摘みやすい。
新芽、摘み放題!写っている植物の半分以上はヨメナかな?
あとはヨモギとオオイヌノフグリとハコベ。

それで作ったのが、ヨメナご飯。

それ以降、他の食べ方もいろいろ試したけれど、私にとってのヨメナの一番美味しい食べ方は、ゆるがない。

毎年、春が来るたびに、ヨメナを摘み、土鍋で炊いたご飯でヨメナご飯を作っている。

そして毎年、ヨメナご飯を食べるたびに、「今年もまた春が来たなぁ」と、うっとり春の味を噛みしめる。


先月末のお弁当。春は緑が圧倒的に多くなる。


<ヨメナご飯>

材料 (4〜5人くらい?)
ヨメナ ひとつかみ分くらい?
塩 
米(私は五分搗き) 3合

作り方
①ヨメナを摘む。柔らかそうな新芽の部分だけ。

②ヨメナを洗う。

③米を炊く。土井善晴氏の洗い米方式が便利。
だけど、洗う前の米1合(五分搗き)に対して水1合でいつも炊いている。土鍋でいくなら、土鍋に洗い米と水を入れて蓋をしたら縁を濡らした手ぬぐいで埋めて、土鍋に空いている穴も箸で埋めて、沸騰するまで強火、沸騰したら極弱火で17分(五分搗きの場合)。炊けたら5〜10分くらい放置。

④米を炊いている間にヨメナを準備。沸騰した湯に塩を入れ、ヨメナを入れる。十秒くらいかき混ぜたら水にさらす。

⑤ヨメナをざるにあけ、軽く絞ったら、細かく刻み、ボウルに移してたっぷりの塩をまぶす(がっつりひとつまみくらい?塩の粒子が残るくらい)。

⑥蒸らし終わったご飯に、ヨメナを全体にふりかけ、混ぜたらできあがり。


ヨメナの量は好み。
少ないとほんのり。入れすぎると口の中がヨメナまみれになる。
最初からベストなヨメナご飯ができると思わず、何回か試してみて一番好きな量を発見してみるのがいいと思います。



<おまけ①>ヨメナ摘みのコツ
ヨメナが出始めるのはだいたい3月半ば以降。伸びてきた方がアクが強くなる気はするけれど新芽はまだまだ食べられるのでたぶん5月くらいまでいけるんじゃないかな?
ヨメナが生えているところの特徴って何かあるんだろうか?この間京都の哲学の道の近くの街路樹の下の小さな植え込みのスペースでも発見したし、京都の街中の花壇みたいなところにも生えているの見た。私がいつも摘みに行っているところは山裾。だいたい群生している。
見分ける方法は、赤い(ワインレッドに近い)茎とギザギザの葉っぱ。マットな質感(でも毛は生えていない)。そして何よりも香り。
野草摘むときの1番頼りにになるのが嗅覚。
見た目だけでは判断つかないものも、ちぎって断面の匂いを嗅げば、だいたい分かる。
ヨメナの香りは、三つ葉にもうちょっと花感と少しごぼうのような爽やかな土の香りを足したような、いい香りがする(ごぼう感ある香りを持つ野草は多い)。
急には見つけられないとは思うし初めて食べるのは不安だと思うので、とりあえず頭の中にイメージ持っておいて、それらしきものを見つけたらひたすらチギッて香りを嗅いでみて、アンテナ張っておくといい。(私も新しい野草にチャレンジする時は1年目は見送ったりする。)


<おまけ②>
ヨメナは漢字で書くと嫁菜。ということで、直接的には嫁と言っていないけれど、The BeatlesのWhen I'm Sixty Fourを。
64歳になった時の妄想が繰り広げられるかわいいラブソング。

そんなわけで、入籍しました(そう思って今回ヨメナ選んだわけでは全くないのにな。)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?