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道草小噺③カンゾウ

カンゾウ

というと、まぁまぁ高い割合で”漢方薬のかんぞう(甘草)ですか?”と聞かれる。


カンゾウ(萱草)も最も好きな野草のひとつで、カンゾウとの付き合いは長い。

私がカンゾウに出会ったのは2010年、私が野草ハンターデビューの年だった。

出会った景色をまだ覚えている。

去年の3月10日頃の野草たち。カンゾウはまだ小さい。


2010年2月にオーストラリア旅から帰国してすぐ地元で自然農でお米(在来品種のあさひ)を育てるグループに加わり、そのメンバーからの誘いを受けて綾部に醤油仕込みの見学に行った(これをきっかけに翌年自分で醤油1樽仕込んだ)。その帰り道、たまたま通った土手にカンゾウが生えていたのだ。

”カンゾウが生えていた”と言えるのは、ご一緒させてもらったご夫婦が「わぁ、カンゾウがたくさん生えてる〜!」と大喜びで収穫していたから。それがなかったらその土手はただの土手で景色の一部にしか過ぎず、もしかしたらその後カンゾウには出会えていなかったかもしれない、とさえ思う。

この頃私はまだ野草ハンターとしてデビューしたてほやほや。まだノビルとツクシくらいしか認識していない頃。

でも、必死になってカンゾウの特徴を頭に入れようとものすごくまじまじとカンゾウを見つめていたのを覚えている。

これは去年の3月24日。だいぶん大きくなっているよね。
これくらいのサイズ感がヌタにしても何にしても
美味しくてしかもちゃんとボリュームもある時期かも。
植えてもいないのに、毎年ここはカンゾウ畑になる。
パラダイス。



実際に自分のフィールドで発見して食することになるのは少し先。

最初、どういうきっかけで後にカンゾウスポットであり、ノビルスポットNo.2となるあの場に行ったのかも全く記憶がない。
ノビル畑を発見したのと同時に「ん?これはもしかしてカンゾウ?」となったのか、それともノビルスポットNo.2でノビルを収穫しに行った時にカンゾウの存在に気が付いたのか。
覚えていないのは少し悔しくもあるけど、何はともあれ、おうぎ形の黄緑がかった葉っぱという、綾部で頭にインプットした情報と一致し、これはカンゾウであるにちがいない、と記憶が頼りなだけにもかかわらず確信を持って摘み(たぶん摘んで匂い嗅いで、イケるって思ったのだろうね)、食し、そして、ハマった。


これは4月中旬頃。
ヌタにするにはおそらく固いけれど、炒め物にはまだまおいしい。
葉っぱの層の隙間に入った砂を取るのがとにかく骨が折れる作業。
ちなみに、左の細いのはノビル。


カンゾウ、野草云々関係なく素材として美味しいのだ。

ただ、意外と遭遇できないカンゾウ。だからいつも、この美味しさのために、車で片道15分かけて取りに行ってる。

そしてこれはもしかしたらいつもの採集スポットが砂地だからなのかもしれないけど、結構下処理が面倒臭い。
一人で大量のカンゾウの下処理をしないといけない時は泣きそうになる。
カンゾウは扇状であると書いたけれど、葉が扇状に重なり合っているため、隙間に砂が入っている率が高いのだ。食べた時にじゃりっとなるのが何よりも嫌いなので、やっぱりそれはなんとしても避けたい。特にケータリングなどで人に食べてもらうなら尚更。
野草にネガティブイメージがつくのは辛い。


4月末頃。
この頃になるとだいぶんすじすじなので、茎中心に、短めに切って使う。
本当はカンゾウには主に「野萱草」と「藪萱草」の2種類あるのだけど
いつも使っているのがどっちなのかよく知らない。
右はノビル。



じゃぁ茎やめて葉っぱだけ食べたらいいんじゃないの?という話なのだけど、やっぱり根元は柔らかくて美味しいのだ(4月以降は特に)。

なので、カンゾウ使うのは割と気合が要る。他の野草同様に、炒めると縮むから余計に。
(カラスノエンドウほどのがっかり感はないけれど。)


こんだけカンゾウカンゾウ言ってじゃぁ一体どんな味がするのか。

食べてもらうのが一番だけど、一言であらわすならば、


豆+アスパラ+玉ねぎ。


完全に主観だけど。

なので、人によって感じ方は異なるとは思うし、調理方法によっても味の出方は違うと思われる。

たぶん、カンゾウはちょうど今頃の新芽の時期に(ぎりぎり3月いっぱいくらいかな?)さっと茹でてヌタにするのが定番。酢味噌とかもたぶん美味しいと思う。

でも、私は菜ばかり(東近江産圧搾絞り菜種油)で炒めて塩だけで味付けして食べることが多い。90%はこの食べ方。
菜ばかりのレシピ集を出すとしたら、「カンゾウの塩炒め」を加えたいくらいに、菜ばかりとカンゾウの相性はぴったり。


去年の『星屑と道草』<照り焼きテンペバーガープレート>より。
左上がカンゾウの塩炒め。
(このお皿だけで、野草が5種類のっている。詳しくはこちら。)


残りの10%は、かき揚げにしてみたり、基本的にヴィーガンなので卵っぽい感じで豆腐とターメリックとその他スパイスと合わせて卵とじっぽくしたり、キッシュみたいにしたり、でもどれもあくまでも”炒める”がベース。しかも、ちょっと大きめサイズを使う。

ちなみに、中華料理でたまに登場する”金針菜(キンシンサイ)”はカンゾウの蕾。こちらもまた美味しいのだけど、私のカンゾウスポットはその頃には一気に草が刈られてしまうので、金針菜に出会うことができないのだ。。。


カンゾウの豆腐卵とじ。卵に見えるけど、豆腐。
アスパラで美味しい料理、玉ねぎで美味しい料理は
だいたいカンゾウで作れるんじゃないかな、と思っている。


そんなわけで今回は一番好きな食べ方でありベースレシピとなるカンゾウの塩炒めの作り方を紹介する。
そろそろカンゾウが美味しい季節。ぜひカンゾウハントへ!

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<カンゾウの菜ばかり塩炒め>

材料
カンゾウ
菜ばかり

作り方
①カンゾウを採集する。エリアによるけれど滋賀県中部あたりではだいたい3月中旬〜4月中旬くらいが採り頃。4月末でも食べられるけれどかなりすじすじしてくるのでその場合は茎中心に使う。
採集には鋏か鎌があると便利。できるだけ根元で切る。
もし余裕があれば硬くなっている葉先はちぎっておく。
(この間哲学の道歩いている時にも見つけたし、滋賀では姉川沿いにもあったし、野洲川沿いにもたくさん生えていると聞いているし、甲賀のおいしいパン屋さんのすぐそばにもたくさん生えていたので、割と身近な場所に生えている)

②カンゾウをよく洗う。葉っぱをはがすようなイメージで丁寧に流水で洗う。全部葉っぱを剥がしてしまっても問題はないけれど、ネギを全部剥がしたら残念な感じになるように、カンゾウも全部剥がしたらなんだか少し残念な気持ちになるので、ここは気持ち次第。

③マクロビ的に言うと葉先は陰性が強すぎる、つまりは体を冷やしやすかったりもするので、葉先はできるだけ避けて、斜め切りにする。
2cmくらい?すじすじしていたら短めに。

④フライパン(鉄が良い)に菜ばかりと塩ひとつまみを入れて火にかける。中火〜強火くらい。塩がパチパチなったらカンゾウを少しずつ入れて炒めていく。全体に油が絡まる感じに。

⑤良い匂いがしてきたら味見をしてみて、おいしいところまで塩を入れてできあがり。
※火が通っていない時はやっぱり葉っぱっぽい味がするけれど、火が通ったら玉ねぎみたいな、アスパラみたいな味に変わる。

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<おまけ>


野草生えてるスポットと言えば公園だよね!というだけの理由でBlurのParklife(1994年)。この曲もやっぱり年を取ってもParklife!て叫びたいやつ。
この曲がリリースされた1994年からもう25年経った現在、みんなそれぞれ活動しているのだけど、赤い服のベースのアレックスくんは今はイギリスで牧場を経営していて、チーズも作っている。しかも音楽好きにはたまらない、Blue Mondayという名前のブルーチーズ。
そして、毎年Jamie Oliver(ヴィーガンレシピもいっぱいで好き。)くんと一緒にThe Big Feastivalという食と音楽のイベントを共催している。いつか行きたい。


<おまけ②>

野草を使ったケータリングに向けて助っ人野草ハンター今年も募集します。採り方、コツ、スポット含め知りたい人ぜひ。自分が食べる用の採集ではないので摘み方など厳しく細かくチェックしますが、その分かなり身につく本気系です。興味ある方お知らせください。日程等またこちらでも告知しますのでお楽しみに。

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