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「魔法の料理 ~君から君へ~」

24歳。たった24年の人生だが、自分の人生に音楽は欠かせないと思えるほど音楽と慣れ親しんできた。あまり英字プリントのTシャツは恥ずかしくて着れないけど「NO MUSIC NO LIFE」なら着れるような気もする。中・高と吹奏楽部に所属し、これでもかというくらい楽器を吹き、趣味程度にギターとピアノをぶっ叩く僕だが学問的に音楽と親しんできたつもりもない。僕もJPOPを漁り聞く皆様と同じ人間だ。そんな僕が

「好きなアーティストは誰?」

と聞かれると一旦はモンスターバンド「Mr.Children」と答える。他には?と聞かれたときにはビートルズや髭ダン、サザン、YUI、スピッツ、、などなどといっぱい並べるのだが、ここには並ばないけれど僕の人生において印象的な1曲がある。


それがタイトルにあるBUMP OF CHICKENの「魔法の料理~君から君へ~」である。この曲との出会いは不思議なものだった。


同じような日々を惰性で繰り返していた小学校4年生のある夜、兄と母と3人で晩御飯を食べている時に、NHKのみんなのうたで「魔法の料理~君から君へ~」が流れた。独特な色彩のアニメーションと優しい歌声が聞こえてきて、僕は慌ててリモコンを取った。

「これを今からでも録画しなくては!」

もう、放送されて数十秒は経っていたけれど、ごはんの手を止め椅子から降りて録画を急いだ。兄は「どうしたんだ、こいつ」みたいな顔でこちらを見ていた気がする。結局20秒ほど初めが欠けている音楽を録画することに成功し、ひとまずは安心した。録らなくては!と思った直感どおり、録画を開始した後も素晴らしい音楽で一目ぼれならぬ、一聞きぼれをした。それは小学校4年生の僕にとってこの曲のテーマがあまりにもマッチしていたからだと思う。


『叱られた後にある 晩御飯の不思議』


と始まる歌い出し。怒られて気まずい中でも晩御飯は出てくる。素直に食べることも難しいけど、食べなくてはお腹が減る。怒られてすぐに機嫌を直すのも恥ずかしいから意味もなく頬を膨らませながら食べる。子供ならではの感情がその曲の中にはあった。そして僕にも同じような経験があったのだろう。この曲への親近感が異常だった。その翌日から、僕は前半が欠けたこの曲を繰り返し、繰り返し聞き続けた。今の時代ならサブスクで調べれば一瞬でフルバージョンを聞けるだろう。でも、その欠けた曲をも愛す情緒がそこにはあった。こういう時には歴史の底の方に生まれたことを良かったなと思える。

今でも、この経験を思い出すと不思議な気持ちになってくる。あの頃のように食卓を囲むには僕ら兄弟はデカくなりすぎたし、急いで録画を回すほどこの世は不便ではなくなった。あの美しい記憶は再現されないものかと今も頭の中はグツグツと煮込まれている。


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