造船跡地の夏

始まりは4月の公演「2月17日」がおわって割とすぐだったように思う。
計画し始めてから目処にしていた会場が諸事情があり、代替会場を探すこととなった。
そこで見つけたのが今回の会場クリエイティブセンター大阪、実は以前に一度訪れたことがあって、複数の会場があってその景色と立地が夏にばっちりだという記憶がうっすらと残っていたのだった。
下見に伺い、2階のホワイエからの景色が素晴らしいことを発見。
当初の予算からは大きく膨らんでしまったけど、今ここで夏にあそこでやるのが1番いいと即決。
一緒に下見に行った猿の左手・小林くんにその場でオファーして、短編芝居2本とライブの3本立て公演をやることが決まった。

今まではどちらかというと自分の手の内で収まる、予想が出来る範囲で、PAMで出来る範囲で公演をやっていくスタンスだったが、今回からは勝負していこうという思いから、他団体に作品提供をお願いしたり、僕が学生時代から最も影響を受けたといっていいだろう冷凍うさぎの森岡さんを客演で呼び、PAMに今までない血が通った感じがした。
自分の手から公演・作品が離れていく感じがあって、PAMのフロントマンという役割にかなり専念させてもらったというのがほんとに頼もしくてありがたかった。
浜の詩の方は、主に僕が演出的役割を担う部分が多かったのだけど、今回のこの役者陣がいなければ完成することは出来なかった。
言い切れるほどに、今回稽古で、さらに本番で進化させていってもらえた。
しかしやはり出突っ張りで全体を見ながら、というのは限界を感じたのも事実でここらの反省は次の公演に活かそうと思う。
僕はやはりプレイヤーに専念することの方が、向いているのだと感じた。

今回の公演ではプレイヤーとしての怖さと楽しさどちらも改めて体感することが出来て、1st目本当に客席が遠くに感じて、どうやったら彼らに近づけるのだろうというのが、わからなくなった。僕に出来たことはせめて懸命に芝居をすること、歌を歌うことだった。
せめてその震えた音が少しでも震えないように精一杯だった。
翌日には、Piachuが、日曜にはこうへいくんが合流して、これほどに心強いことはなかった。多分客席に近づくために出来ることは、力任せに強く迫るだけじゃない、手を取れる仲間とお客さんに手を差し出していくような手を取ってくれるかなっていう祈りのような、そんなことが大切なのかもしれないと感じた。

今回のMVPをひとり選ぶとしたら、満場一致で猿の左手の方に出演してくれた劇団さあもん所属、桜田燐だろうと思う。
正直ここまでやってくれるとは全く思ってなくて、キャスティングもかなり小林くんと三宮の松の屋でめちゃくちゃ悩みながら、慎重にまずは稽古してみようということで、試しに稽古したときに桜田さんで行こうと二人で確認し合ったのを覚えている。
その時には彼女がそこまでやるとはこの時点でも思っていなくて、けど最終的に彼女なくしてはこの作品は完成し得なかったなあ。
あんなに舞台上で自由に振る舞っているように見える人は初めてだった、多分彼女の中ではいろいろ考えているのだろうけど、その素直な立ち姿に脱帽だった。彼女の一挙手一投足に注目してしまうなあと僕は同じ舞台に立ちながら見ていたように思う。
僕のやったことといえば、ともすれば舞台の中にどこまでも入り込んでしまう彼女のためにガードレールを敷くことくらいだった。
きっと再演すると思う。そのときはよろしくお願い致します。窓の素敵な会場でお待ちしてます。

このメンバーで夏できて良かった。
またCCOに来ようと思う。
ご来場いただいた方の暖かいアンケート、SNSなどでのご感想、直接お声掛けていただいた言葉、本当に嬉しかったです。
またいつかお会いしましょう。その日まで、お元気で。

20190806 練間沙/ネルマイサゴ(@s_i_f_135)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?