弁護士として踏み出そうとしている私へ
この記事は、はじめて弁護士として歩み始めた「私」に送るものです。
私にとって「社会人1年目」は修習生になったときなのか弁護士になったときなのか迷いましたが、やはり修習生を「社会人」というのは何か違うと感じるので、弁護士事務所に就職したときとしました。
1.激動の弁護士1年目になるよ
あなたは今、地域ではそこそこ大きい弁護士事務所に就職することになって、期待と不安を抱えているよね。
そこのかなり偉い先生に気に入られてる雰囲気もあり、自己肯定感の低いあなたはかなりの違和感と戸惑いも感じている。ちなみにその先生、最高裁判事になるから(笑)。
でもね、その事務所、あなたすぐ辞めるんだよ。事務所ところじゃなくなるから。その後激動の1年になる。
まず、その事務所の教育はかなり厳しいよ。「書面は芸術」とか言われていろいろスパルタ式で鍛えられるから。でもそれがあなたの将来にとても役立つから、嫌がらずに受け入れて。
それでね、半年くらい経ったらあなたの父親に末期がんが発見されるの。親が亡くなるなんて思ってもみなかったあなたはパニックになって、また事務所での仕事の厳しさもあって結局続けられなくなり精神的に持たず、辞めてしまうんだよ。
事務所を辞めた後は、家に引きこもって末期がんの父親と一緒に過ごすことになるの。
あなたは就職活動を開始するんだけど、そのとき会派の偉い先生から「なんで事務所をやめるのか!」「お前はー!!」みたいな感じで、めちゃくちゃにけちょんけちょんに叱られてショックを受けるよ。その後10年くらいたったら事務所辞めるなんて普通になるんだけど、当時は異常な出来事だったから大変。でもあなたは負けずに自力で就職先を探したよね。
何とか父が亡くなるまでに次の就職先が見つかるよ。でもあなたのお父さんはすぐに亡くなってしまうけれど。代わりに生き別れになっていた弟と再会する。運命って不思議だよね。
2.すぐに独立するよ
じゃあ、その事務所でずっと勤務弁護士やったと思う?実はそうでもないの。その事務所も割と変な先生が出入りしていたりして、半年くらいで辞めちゃうんだよ。それで再度別の事務所に就職するの。
そこでは結構うまくいくんだよ。先生にも信頼してもらえるし、顧客にも信頼されて自信もついてくる。
そしたらあなたは「これなら自分一人でも事務所経営していけるんじゃない?」って思い始めるんだよ。単純だね。
その事務所ではあなたは個人事件について事務員さんを使わず全部自力で処理してたから、「事務員も当初いなくていいや」って思うの。
実際、弁護士登録してから2年半で独立して事務所を持つよ。当時、女性で2年半で独立するのはかなり早い方だったし、こうなってくると完全なマイノリティもいいところで、すでに一般的な弁護士人生とは大きく違う方向に進んでいたよね。
3.事務所経営はうまくいくよ
独立してからどうなるの?心配だよね。
でも安心して。事務所の経営自体はなんだかうまくいくから。経費を小さく抑えるから少しの売上げでも困らなかったし、あなたはいろいろ新しいものを取り入れるので、それが割とうまくまわっていくの。
たとえば当時は誰も使っていなかった電話代行会社を使って事務員さんの代わりにしたり、当時、弁護士はホームページなんて持ってない人がほとんどの中、ホームページ業者のチラシを見て連絡を入れて作ってもらったりするよ。
あなた自身は「周囲の弁護士に怪しいと思われる…」と心配していたけれど、今考えてみたらそういうの、全部良い方向に回ってるんだよ。
特にホームページを率先したやったのは良かったよ。問い合わせも結構入るし弁護士を辞めた後の人生にも役立ったから。
「えっ、弁護士辞める?」って感じだよね。
4.身体を壊して事務所を閉めるよ
それじゃあ、事務所はうまくいってどんどん弁護士としても成長していったのかな?
実はそうならないよ。
まずあなたは依頼者に親身になりすぎて、自分の身を削っていろいろ対応しすぎて精神が削られていくの。
毎晩「私はぼろ雑巾か」と思いながら真っ黒な気持ちで事務所と家を往復する毎日。依頼者からはとても信頼されて仲良くなれるけれど、あなたとしては疲れ切ってしまう。
気分転換もできず、「おっさん社会で生きて行くにはおっさんにならなきゃ」と思いお洒落もせずかわいいものなどにも見向きもせず、ひたすら仕事だけの日々になるの。
あなた、もともと持病があるじゃない。それがね、どんどん悪化してくるんだよ。
最終的には杖をついてしか歩けなくなり、がりがりすぎてゾンビのような状態になって倒れて事務所を閉めるんだよ。
でもね、あなたには責任感があるから、なんとか周りの人にいろいろ助けてもらったり引継をお願いしたりして、依頼者には迷惑をかけずに済むから安心して。
5.法律以外のいろいろなことを学ぶよ
その後あなたは、寝たきりになるよ。ただ何もしないのがイヤなあなたは、すごい勢いで本を読み始めるの。毎日毎日朝から晩まで。本棚がいっぱいになっても足りなくて本棚を買い足してまたいっぱいになって。
そしてあなたはイタリア語とフランス語を勉強し始めるの。寝たきりの状態だったけれどCDとテキストを持って無理矢理覚えたよね。
そしてね、植物たちと話せるようになるんだよ。あなたがどうしても生きる方向に進めないとき、死にそうなとき、ふと植物たちが声をかけてくれるの。「どうして生きないの?」「なんで?なんで?」「生きようよ」「食べようよ」って。
植物たちはひたむきに「生きる」ことしかしないから、死に向かうあなたを理解できなかったんだね。
その植物たちの声を聞いて、あなたは少しだけ前に進めるようになる。そして最悪の状況を脱出できるの。
少し経って歩けるようになったら、簿記を勉強して2級をとるよ。
6.法律ライターになるよ
ここまで聞いただけでもびっくりでしょ?
「アホかお前」って言うかも知れない。でも本当だから。
その後も可笑しいよ。
その頃、あなたはネットで「クラウドソーシング」のサイトを見つけるの。そこでは「婚活について500文字書いたら100円」とかのタスクの募集などがあるの。
あなたは「ヒマだし何もしないより良いだろう」と思ってクラウドソーシングのお小遣い稼ぎを始めるんだよ。
その頃はまだクラウドソーシングなんて怪しくて、ウェブライターなんて人もほとんどなくて世間に認知されていなかったし、あなたは「単なる小遣い稼ぎ」みたいな気持ちでアンケートとかやってたよね。
ところがだんだんネット広告業界が大きくなってきて、仕事もどんどん増えて、そのうちあなたの「元弁護士」「法律に詳しい」経歴が役に立つようになるの。どんな仕事でも真摯に受け止めて、まじめにコツコツ取り組んだのも良かったんだよ。
最初は雑多な依頼が多いんだけど、だんだん法律関係のライティングの依頼が増えて来て、いつのまにか「法律ライター」になるんだよ。
クラウドソーシングのサイトでもかなりの実績ができたり、クラウドソーシング以外からもたくさんの依頼が来たりするようになって、弁護士の頃よりも随分楽なのに仕事が充実して良い感じになるよ。
7.病気は治らないよ
でもね、あなたの17歳のときからの病気は治らない。この病気はあなたを2回殺しかけて、今でもやっぱり治らない。これを書いている私もまだ渦中だよ。がっかりかな?
でも仕方ないよ。
今は、あなたの状況よりはかなり楽に生活ができているから、少しは安心してね。地獄のような強い飢餓感も薄らいで、ちょっとは楽になっているから。
あなたの人生は、予想外のことばっかりで驚くけれど、捨てたもんじゃないと思うよ。
投げ出さずに、まっすぐ進んで行ってください。
17歳で重度の拒食症(摂食障害) 25年間苦しみ続けてきました。 必死で勉強して弁護士になりましたが病気が悪化して廃業 その後、在宅ライターになりましたが命の危機もあって入院中です 毎日入院日記を投稿中 よかったら闘病生活のサポート、お願いいたしますm(_ _)m