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止まらない街

東京は形を変える。

そんな街だ。
電車から降り、帰路につこうという折、ふと、駅前の地面をはがそうとする情景が目に入ってきた。東京は工事が多い。特に近年は、オリンピックに向けてどんどんと形を変える。ここへ来て6年ほどだが、その間ずっと、いやというほどの工事がある。つくったり、こわしたり、やっぱりなおしたり。そんなことの繰り返しを眺めている。

女心と、秋の空と、都会の道路。気まぐれな揺らぎに惑わされる。

東口と西口を突っ切れるようにしたいとか、歩道と車道を入れ替えたいだとか、段差は少しでもなくそうだとか、っていうかこの建物、おしゃれじゃなくない?だとか。その多くは利便性を重視し、安全性を担保し、目に映るものを美しくする。わたしたちの生活をより良くするための変化だ。

今の街に越してくる前、学生時代に初めての一人暮らしをしたあの街も、多くの閉店と、取り壊しがあったらしい。
ふと、懐かしさの怪物が、私を飲み込もうとする。

(あの頃、わたし、この場所で、あんなふうに、)

もの思いにふけるようなノスタルジーは、東京には似つかわしくないのかもしれない。ぐるぐると滑車のように素早く回転するこの街は、おそらく止まったら死ぬ類のそれだ。『映画 大人帝国の逆襲』で、大人たちを虜にした「懐かしい」という感情のパワーは、とてつもなく大きい。

懐かしさにおぼれたい。

けれども、やっぱり人は、過去より未来を選ぶではないか。


わたしも未来を選ばなくては。
そんな風にヒーローじみた考えに至り、にやりとする。

ノスタルジーに浸るのは、気の置けない友人との飲みの席か、実家でアルバムをめくるときで充分だ。私はまた、明日も東京を回す一部でいなくてはならない。



【本日のもにょもにょ】

果たして、どうして次の日の朝には道路がまったく変わっているのだろう。担当者の皆さまは、マジシャンですか。100年ほど前のことであったら、たぬきに化かされているんだなんて言われたのではないでしょうか。本当にお疲れ様です。ご自愛ください。
ずっと信じられなかったのですが、ナスカの地上絵は本当にただのいたずらかもしれないと思うようになりました。人間は、一晩あれば街の形すら変えてしまえる。田んぼに宇宙人からのメッセージを刻印できる。

やっぱり、イベントポスター用の絵くらい一晩で描けるんじゃない?(無理です、こういうことを何度かやって死にかけました)
やっぱり、プレゼンの資料位一晩で書けるんじゃない?(やめてください、体力的にも社会的にも死んでしまいます


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