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【なぜ?】理学療法士がマウントを取る理由について理学療法士が語る。


「理学療法士の人って、やたらとマウント取りに来るよね!」


どうやら、理学療法士のイメージは医療業界の中ではあまりよくないのかもしれない。。。
そう思う出来事が今働いている病院内でも病院外でもたくさんあります。


同じ医療従事者とはいえ、やはりいがみ合うことがあるんだな、、、

この業界に身を置いて初めてわかったことです。


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冒頭の言葉もそう。
理学療法士はどうやら医療業界の他職種から”偉そう”と思われている節があるようです。
これを読んでいる方で、心当たりのある人も多いと思います。


「理学療法士マウント事例」の中でも代表的なのが”移乗介助の指導”です。
看護師さんや介護士さん、ヘルパーさんにとって移乗介助は日々の業務。
”その業務で行っていることに対して理学療法士が指導する”ということが、どの病院・施設でもよく行われていますよね。

「どうして、あなたにそれを教わらなければならないの?」


たしかに、教わる側の気持ちになってみれば、そう思いますよね。
その人だってプロとしての誇りをもって働き、給料を得ています。
その中で培った知識・経験があるにも関わらず、どこぞの誰かも知らない他職種の人から既知情報を”教わる” ”指摘される”というのは、屈辱的な想いすら感じるかもしれません。

「これまでの仕事を全否定された気持ちになりました。」


そう受け止める方もいます。
けど、私はいろいろな受け止め方があっていいと思っています。
それぞれ誇りをもって仕事しているのだから。



むしろ、、、

講習後の感想で、盲目的に「勉強になりました」だけでは、危うさすら感じてしまいます。
講習の知識は、いかに自分のスキル・業務に落とし込めるかが重要だからです。
それができなければ、参加するだけ無駄。

講習を受けて、自分の仕事にどういかせるのか、その場で想像する。
そうすることで自然と疑問が浮かんだり、現実との矛盾点にその場で気づく。
だから、その場で質問をする。

この流れができなければ、知識不足であると自覚しなければならないのかもしれません。。。

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話を戻します。

ということは、こういった場で理学療法士にいいイメージを持たなかった方々は、自分の仕事に誇りを持っている有識者であると考えられます。

そういった方々からしたら、他職種の人からいまさら既知情報を教わっても、何様だ?と感じるのも無理はありませんよね。


とはいえ、講習会の多くは、その職種の人から依頼された仕事なのです。
そこで「マウントをとっている」と思われてしまうのも悲しい。。。



なので、今回は理学療法士である私が
「理学療法士は決してマウントをとっているわけではないよ!」
という想いを綴っていきます。




なぜ、理学療法士はマウントをやたらと取ると思われているのでしょうか?

深掘りしていくと、
 ・まだ医療業界の中では歴史が浅い
 ・偏差値が高い
 ・男が多い
こんなことが挙げられていました。

でも、、、
どれもこれもまっとうな理由にはなりませんよね。


そうではなくて、、、
理学療法士(私)が、働いているなかで他職種にはない思考とは、なんなのかを考えてみました。


そこで考えついたのが、
【 理学療法士はチーム医療・地域包括ケアシステムをめちゃくちゃ意識している 】
という点です。

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理学療法士はまだ医師のように細く分科されていません。
《急性期・回復期・維持期》
これらの違いはあれど、疾患によって細く分科はされていないのです。

つまり、リハビリを提供するにあたって、どの疾患のことも知らなければならないのです。

特に私は高齢者を対象とすることが多いので、様々な疾患を患っていることが多いです。
そんな方々のリハビリを提供するにあたって、”知らない”というのは高リスクとなります。
そのリスクを知らなかったために、リハビリの人が在宅復帰の障害ともなりかねない場合があるのです。

例えば、糖尿病が既往にある脳梗塞の方をリハビリする時には、理学療法の知識以前に、脳梗塞のことはもちろん糖尿病のことも知らなければなりません。
具体的にいうと、糖尿病でインスリンを自己注射することもあるため、麻痺の程度・障害部分によって
 ・注射を自分で打てる能力があるのか
 ・薬を管理するだけの能力があるのか
 ・もし自己注射も自宅復帰も叶わず施設入所となったら、
   施設側は対応してくれるのか
 ・それは一日何回まで対応してくれるのか
なども考慮した上で、リハビリを進めて行く必要があります。

この例のように、リハビリでは疾患に対する知識を深めることで、在宅復帰への活路を見出すことができたり、それに向けた運動療法もすることができます。
ただ、ここまでの範囲を全て知っていたとしても、理学療法士だけの力では、患者様のカバーはできません。
そんな時に頼るのがチームを組む他職種なのです。

だからこそ、重要視しているのが
《 チーム医療 》《 地域包括ケアシステム 》
なのです。


上の例で言えば、
 ・注射を自分で打てる能力があるのか
   →理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
 ・薬を管理するだけの能力があるのか
   →看護師・薬剤師・管理栄養士
 ・もし自己注射も自宅復帰も叶わず施設入所となったら、
   施設側は対応してくれるのか
    →医療相談員・ケアマネージャー 
    ・それは一日何回まで対応してくれるのか
   →医師・施設管理者
などのように多職種が関わることで、より専門的に、より選択肢の多い医療が提供できます。
理学療法士だけでは成し得なかった、患者HOPEの達成への道が拓けるのです。

この形を全ての職種が意識できているものが、本来のチーム医療・地域包括ケアシステムの形だと考えています。

☟本来のチーム医療

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しかし、昨今のチーム医療は、それぞれの分野領域から離れたところの部分は、ほかの職種へ完全に任せている印象すら受けます。
いわゆる”完全分業制”のようなものです。

その結果、分業外の範囲を拾うことが難しくなることが起きてしまうのです。
そのため、その拾えなかった部分を”知っている人”は、その範囲を任されることになることで、”知っている人”の負担は増え、チーム医療のパワーバランスが崩れてしまうのです。
これが続くことにより、チームは徐々に歯車が狂い、その機能を失っていくことにも繋がりかねません。

とはいえ、今の病院の体制は、それぞれの診療科があって、その病棟があって、そこに専門医がいて、専門的に看る看護師がいて、、、
とチーム医療を掲げたことによって、よりそれぞれの職種の専門性が増して、医療を提供することができるような体制です。


☟現在のチーム医療

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故に、複数の診療科にかかっている患者様への退院支援となると、どうしても上記に挙げたようなウィークポイントができてしまうという状況ができてしまっているのです。


そこでその穴を埋めるべく台頭したのが「理学療法士」です。

医師や看護師ほど細かく分科していない理学療法士が、色々な分野へ手を出さざるを得ない状況へとなってしまいました。

だからこそ、今リハビリ業界の中で《リハ栄養》や《リハ薬学》なるものがでてきたり、《排泄ケア》などの介護分野への進出も活発になってきているのではないでしょうか。
 ※リハ栄養・リハ薬学・排泄ケア等を批判しているのではありません。
 ※むしろ私は肯定派です。


つまり、今の分科された病院体制の中で”チーム医療”を成り立たせるために、理学療法士がそれぞれの医療職との連携を強く意識している、と私は考えます。

それはまるでチームの”潤滑油”のように。
『各職種の専門的な”知識”』と『その範囲外の間を埋める”潤滑油”』
これらが揃ったとき、チームとしての機能は如何なく発揮されることになるのは明らかです。

そして、そのチームが円滑に活動できてくると、次のステップとして、その”潤滑油”をチーム内のメンバーが少しでも所持することができるように、チーム内の医学的知識を向上させることが求められてきます。
そんなときに声をかけてもらう機会が多くなるのが、現在チームの潤滑油である理学療法士だったのではないでしょうか。
そのため、理学療法士は表立って他職種の方向けの講習会を開催することが増えたのではないかと私は考えます。


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ただ、そんな理学療法士が良くなかったのは、なんでもかんでも得られる知識を”リハビリテーションの専門である”としてしまったことにあるのかもしれません。

リハビリテーションのという言葉の意味は年々、正しい方向にも、間違った方向にも広がり続けています。

そのなかで、こうした潤滑油の範囲をリハビリテーションであると定義する人もでてきました。

そこで、もともとのほかの職種が専門としていた職域に関して、土足でズケズケと進出してしまったのではないでしょうか。

その進出領域をリハビリテーションとする前に、元いた職種に対してもっと敬意を示すべきだったのではないでしょうか。

理学療法士よりも昔から、そこの分野を専門としてきた方々がいるということを置き去りにしてきていないだろうか。

そういったことも踏まえて、職域を広げていきたいものですね。



ということで、

こういった背景が【理学療法士がマウントをとっている】という印象へと繋がっていったのではないだろうか

と私は考えています。


この考えに関していろいろ思うこともあるでしょう。

だけど、これだけは覚えておいてください。


決して、理学療法士全員が「マウントを取りに来ている」わけではありません。


リハビリテーションの従事者は、再度、リハビリテーションの意味、職域を考え直す時期なのかもしれませんね。



《 チーム医療 》《 地域包括ケアシステム 》

せっかくこんな良いモデルがあるのですから、お互いの職種のことをもっと知り、もっと尊敬し合うことができたら、医療界も明るくなるのではないかと感じます。

そのために、たくさんのコミュニケーションをとっていけることを願っております。


最後まで読んでいただきありがとうございました。


最後に少し宣伝です。

私は普段ブログとTwitterで、理学療法実習で困っている実習生さんの学生支援を行っています。

より多くの学生さんの助けになりたいと思っております。

みなさんも辛い実習を通ってきたとおもいますので、彼らのサポートの必要性は重々承知されていると思います。

「こんな考えの指導者もいるよー!」と、もしよければ、みなさまのお力で私を普及させてください。

詳しくはプロフィール欄を見ていただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。


長谷川元気


最後まで読んでいただきありがとうございました! このnoteはレッドブル片手に作成したものです。 サポートいただいたお金は、執筆時の”翼”としてありがたく活用させていただきます!