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こんな学校あったらいいな 後編


前回はこちら。まだ読んでいない方はぜひこちらから!

前回のあらすじ

どこにでもいる平凡な小学生イツキの前に現れた謎の犬、こいぬ。

イツキとこいぬの交わした契約。

それは、タイクツな日常を変える悪魔の契約。

「こんな……学校、あったらいいな」

イツキは、そしてセカイは幸福を手に入れることができたのか—


第三章 ユースケの視るセカイ

「あぁ……きちぃ」

ベッドの上で額に汗をかきながら横たわるのはユースケ。すすたけ小学校の小学4年生。好きな食べ物はハンバーグ。この物語の主人公イツキの友人の一人だ。

「ユーちゃん、ご飯置いとくわよ」

「ありがとう母さん

イツキによって創り替えられた学校。全ての授業がオンライン上で行われ、実際の身体を使う授業ももちろん廃止された。そのため、ユースケのようにちょっとした気温の変化によって体調を崩す児童も少なくなかった。

「あの頃みたいに、運動場を走りたい……」

いっぱい走り、運動していっぱい食べていつの間にか眠りにつく。子どもたちにとっての当たり前の光景だ。

しかしながら、いつしか子どもたちの遊ぶ場、機会が奪われ、この世界においてもオンラインゲームの中であったり、室内で過ごすことが強いられている。

「あの頃の、あの学校こそが僕たちにとっての学校だったんだ」

虚ろな表情で窓の外をみる。変わってしまった学校と、イツキの姿を重ねて想う。

「こんな学校、あってはいけない」

第四章 その男、大橋

そして再び、イツキ視点。

「この学校は完璧なようで、気持ちが悪い」

「どうしてそんなことを言うんだい?イツキ君」こいぬは笑みを浮かべて問う。

「友達と一緒に勉強したり、先生と話すこともできない。タイクツだ」

「なんで?あんなに大橋先生のことを憎んでいたのに。そして、何より友達や、クラスのみんなに言われたことを気にしていただろぉ?」

「それも、昔のことだよ。あの時はどうしていいか分からなかった。今の僕たちなら同じようなことにはならない」

「それはどうかな。今でも日本中でいじめは後を絶たない。特に、その多くが小学校で行われているんだよ」

「それでも、何でもかんでも機械に頼るのはおかしい!!」イツキは激しくこいぬを否定した。

「その通り!!」

1人と1匹の会話を遮った男の名は。

「お、大橋先生……てか、どうして急に?」

「イツキ君、あの時はすまなかった。君の気持ちに気づけなかった」

「そんなことより、先生たちは今の学校を喜んでいたんじゃないの」

「あぁ。最初はそうだった。しかし、やりがいを失った先生たちは次々に辞めてしまった。それに、そもそも教員自体が必要なくなってしまい、多くのヒトが働けなくなり、食べていくこともできなくなったんだ」

「フフ、大橋先生みたいな、何気ない言葉で児童を傷つける先生が減るのはイイことじゃないか?」こいぬは薄ら笑いを浮かべ皮肉を並べる。

「うぅ……。俺たち教員は間違いを繰り返すだろう。それでも悩み、時に同期の先生たちと飲みながら授業の仕方について考え、時にスクールカウンセラーや学年主任の先生、養護の先生、生徒指導の先生たちと児童・生徒のことについていろいろな話をしながら関り方を考える。」

その視点、考えはチーム学校、学校内の教員一人ひとりがそれぞれの専門性を活かし、力を発揮していく文部科学省の掲げる学校組織における連携・分担の体制だ。

「ではどうする?また、あの時に戻るのかい」

「破壊し、創造することができたのなら、また再び破壊し、1から造り変えることが犬には可能だろ?」イツキは核心を突く。

「人間、君たちの未来に、可能性に任せてみようじゃないかでは、願え」


「「こんな学校、あったらいいな」」


終章 取り戻す、明日

「じゃあ、次はまた一ヶ月後の2時間目に来る予定だから。その時は、今日話したことの続き、また教えてね。イツキ君」

「わかりました!またきまーす」

犬養先生は今年度すすたけ小学校に配置されたスクールカウンセラーだ。

とりあえずあのへんな犬はあれから現れず、また何気ない日常を取り戻している。

「おーい!イツキ!帰りに公園でバスケしようぜ!」

ユースケとヤマトも変わらず今日も元気に走り回っている。

「おい!!ユースケ、ヤマト!!宿題のやり直しまだ終わってないだろ!」

「ゲッ!大橋せんせーがきた!逃げろ!!!!」

大橋先生も相変わらずの怒声を校内に響き渡らせている。

なんだかんだ、こんな学校悪くないじゃないか


おわり


あとがき

こんにちわん、こんばんわん!心理学が好きな犬、心犬(こいぬ)です。

めちゃくちゃ厨二病全開の物語を書いてしまいました。

これ後から読み直すとめちゃくちゃ恥ずかしいやつじゃないですか。

内容的にも、今の世の中への皮肉と危機感を込めさせてもらったのは言うまでもありません。イツキの最初に願ったセカイは、このマスク社会とAIが進化する今の世の中を考えたら遠い未来の話ではないように感じます。

それでも、大橋先生やイツキ君が願ったように、今を生きる人がしっかりと未来に良い部分を繋いでいくことができるのなら、最悪の結末は避けられるのかなとも思っています。

チーム学校から、そしてそれを取り巻く地域から、子どもたちの成長や未来を考え守り、育てていくことができることを期待して。

2020年夏 空調が故障したため扇風機を全力導入した犬の部屋にて

心理学が好きな犬

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