人は既存の領域の中で物事を理解しようとする
ジャン・ピアジェというスイスの発達心理学者が唱えた学習理論がある。
その理論には『同化』と『調整』という概念が存在する。
幼児が物事に初めて触れて理解しようとする時、『同化』か『調整』のどちらかを使ってそれを理解しようとする。
『同化』というのは、既存の概念内で物事を理解しようとする事である。
例えば、『鳥は飛ぶ生き物である』と習った幼児がハトを見ると、あれは鳥だと認識するだろう。
それは空を飛んでいるからである。
その一方で『調整』とは、既存の概念で物事を理解できなくなった時に新しい概念を作って物事を理解しようと試みるプロセスである。
今持ってるフォルダに、新しいファイルに合う物がないから新しいフォルダを作るといったイメージだろう。
例えば、『空を飛ぶ物は鳥だ』と認識している幼児が飛行機を初めて見ると『鳥っぽいけど鳥じゃないなぁ』と思う。
するとお母さんが『あれは「飛行機」って言うんだよ』と教えると、そこで飛行機というフォルダを新たに追加するのだ。
そうやって人は物を覚えていく。
しかし、歳を取れば取るほど『調整』が困難になっていく。つまり、新しいフォルダを作るのが苦手になる。
すると、既存のフォルダに合うように、新しい情報や概念を捻じ曲げて入れ込もうとする。
すると、当然だが、事実を歪曲した見方になっていくし、段々と頭が硬くなっていってしまう。
その結果、知っている物の中でしか物事を理解できなくなっていくのだ。
分かりやすい例で言うと、マレーシアの首都は『クアラルンプール』だが、ほとんどの日本人が『クアラルン・プール』だと思っているのではないだろうか?
しかし、クアラルンプールを略して『KL』と称すように、『クアラ・ルンプール』が正しい切れ目である。
これは、日本人にも馴染みのある『プール』という言葉が入っているので、無意識的にそこで切れる物だと思ってしまうのだ。
他にも『プエルトリコ』という中米の国があるが、これも『プエル・トリコ』だと思っている人が多いだろう。
しかし、実際は『プエルト・リコ』である。
これも、なんとなく『トリコ』という響きに馴染みがあるからであろう。
もちろんこれだけではないが、大人になればなるほど概念が小さくなり、新しい情報を受けた時は自分が持っている知識の中から理解しようとしてしまうのだ。
僕が家でBruno Marsの『Uptown funk』という曲を聴いていた時に、
『Uptown funk you up! Uptown funk you up!』
という歌詞がある。
この歌詞が流れた時に僕の祖母が『「おっちゃん本気や」って言うてるやん』って言った時はお腹が攣りそうになるくらい笑けたがそれもまさに原理は同じだ。
英語が分からない祖母の頭の中に『Uptown funk you up』という言葉は存在しない。
だから、祖母が持つ知識の中から1番近しい音を持ってきた結果なのだ。
新しいフォルダを作る能力が低下してくると、視野が狭くなり、頭も硬くなりやすい。
なので、ぜひ常に『知らない事がまだたくさんあるんだ』と思いながら、ぜひ新しいフォルダを増やしていって欲しいと思う。
人は既存の領域の中で物事を理解しようとする。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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