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詩空間とくしま (Poetry Space Tokushima)vol.2



こうじろうはん (ただとういち)

タンニャマの
こうじろうはん
アオダイショウを
食べるらしい

喘息の薬に
なると言う

喉をゼエゼエ
させながら
話してくれた

それにしても
そんなものを?

ハミだって
焼酎付けに
するんだから-----

昔のミグラは
漢方の宝庫!


はれる (鈴木日出家)

かたつむりのぐるぐるがうつって
とまらない わたしのぐるぐる
がっこうのげたばこはしかくすぎるけど
きしむのはわたしのつくえだけじゃないけど
やさしさもいきすぎるとはだざむくなる

がっこうへわたるほどうきょうで
あやうくふみそうになったかたつむりは
かさに入れてもきゅうくつそうだ
あやういかたさのかたつむりのからが
わたしを代弁してくれてるってきづいてから
わたしはかたつむりをおうえんしている
やまない雨の下でおうえんしている

六まいめのカレンダーの
つゆの雨のつづくころ
わたしのこころのぐるぐるを
空にはなつよ


涙 (Kei anone)

涙がいつ落ちようか
迷っているとき
雨の気配がしたから
作り笑顔をして
目のうしろに隠れて見てた

代わりに優しい雨が
木々を濡らして
また雲に隠れたみたい

夜には
線香花火が音も立てずに美しく
涙をひとつぶだけ
誘って
落ちた


とら・トラ・虎 (猫)

わがはいは猫である
名前は「とら」
生まれてすぐ捨てられていたわがはいは
白黒に金色の毛が入っていたおかげで
虎模様やとトラキチにひろわれた
昨年 野球の虎が優勝したせいで大モテや
けどなぁ わがはいは知ってるで
黄色い麦と青い空の国旗の国で
泣いとる子供と 年寄りを 
北国のシベリアタイガーがいじめとるらしい
あきまへん
勝負事はスポーツだけでよろしおます
今年オリンピックとやらで
歓喜に満ちたヘイワな青い星地球で
いつまでもあってほしいもんです 


菊の花 (竹原洋二)

骨に
寄り添って
菊は
大きな花となる
完全な白と黄と赤
深い明りの下で
身罷った人を讃える
陽光の静けさの如く
凛として
自然と精神が調和し
全き存在となって
よいところへ
翔け上がってゆく
霊に
つき従って


美しい敗北感 (英田はるか)

廃墟とか残骸という言葉のもつ美しい敗北感に僕の胸がいざなわれるのは、きまって山の端が赤く染まる頃。しかし僕は一体何に敗北し、何が取り去られもぎ取られ剥奪されたのだろうか。そもそも僕は戦ったことなどあるのだろうか。あったようななかったような、もう思い出せないが、今更どうでもいい。ただ敗北感だけが小波のように押し寄せてくる。そして敗残兵のような姿を晒した僕はヒトの形をした抜け殻なのか。いや、そもそも僕の中に何があったというのか。僕という装いをはぎ取れば、皮をむかれたただひとつのリンゴと何ら変わらないのではないか。或いは僕という仮面を被せられた着ぐるみだったかも。だがそれでもいいのではないか。この世から消えた時誰からも思い出されない僕であったとしても。今日の夕陽のように美しく、切なく、ひっそりと敗北できるのであれば――。


「たわし」 (桃通ユイ)

たくさんの
小さな丸が集まってできている「わたし」は
ふとしたことで
「たしわ」「しわた」になってしまう
「わたし」どこでしたか
どこで「たわし」になりましたか
丸たちがパニックを起こして
相談しているけれど
「わたし」は「したわ」になったきり
「わ」と「た」と「し」でできていることに
変わりはないのだから
よいのです、
「たわし」


最期の後悔 (あわや詩朋)

雲一つない 空の下
突然友は 蒸発した
俺のせい? いや 本人の問題だろ?
自問自答を 繰り返す

これは裏切りか? 裏切られたのか?
天の声が聞こえる
お前はこれまで 
誰かを裏切った事はなかったのか?

ある 

何度も

どんな時に 裏切ったのか?
相手からの期待に 
もうこれ以上
応えられないと思った時

人は裏切る 生き物だ
友とは期待 するよりも
もっと信頼 すべきもの
そして友とは 許すもの

人生劇場 逃げていい
自分より大切なものなど 何も無い
時には嘘も ついていい
自分につく嘘 以外なら

それから友は 幸せに
なったと風の 便りで聞いた
また一つ歳を 取りました
気づけば白髪も 増えました


影法師 (浪市すいか)

いやだいやだとぼやきながら朝に袖を通す
わたしを演じるには最高のお日柄と
雨粒の喝采が囃し立てた
シンクに立てかけたプラカップが
プリンの骨格としててらり
歌詞の一節から漂ってくる最寄駅
花瓶の中に浮かぶサファイアの亡霊
記憶を薪にしてことばはいっとうに輝く



編集後記vol.2

無事vol.2を発行することができました。「Poetry Space Tokushima(PoST)」。vol.1が好評をいただいており、徳島現代詩協会員一同喜びを分かち合っています。
徳島ではお盆の阿波踊りのシーズンを過ぎると、日中の気温はどうあれ、一気に秋の雰囲気が漂います。賑やかな「ぞめき」の響きは一旦街なかからは遠ざかりますが、来年の夏に向けた胎動は目には見えなくても内側に籠もって、すでに始まっているのです。
さて、私たち徳島現代詩協会員が日頃静かに胎動して鋭意創作した証となるPoST vol.2。少しでも多くの方に、この響きをお受け取りいただけると幸甚です。

 vol.2編集担当 鈴木日出家

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