約束の旅路(2005)
アフリカで生きることとは
過酷な状況での親子愛に感動
生まれた国や人種、宗教が違うというだけで、いかに過酷な運命を背負わなければならないのでしょうか。
かつて(今でも?)世界には、日本で暮らしていると同時代のこととは思えないほど、悲惨な境遇の人々がいたことに改めて思い至り、胸が詰まります。
この息子シュロモがイスラエルで成長する過程を描くヒューマンドラマです。
ルーマニアのラデュ・ミヘイレアニュ監督が、原案・脚本を手掛け、〈モーセ作戦〉で実際にイスラエルへ帰還した人々の苦難に触発されて生まれた物語は、アフリカで生きることの過酷さを伝えると同時に、そんな過酷な境遇を強い覚悟で受け入れ、生き抜く人々の姿をしっかりと描き出します。
アフリカでは、家族を理不尽な理由で殺され、イスラエルでは、「ユダヤ人である」と素性を偽る日々に苦悩するシュロモの境遇は同情するにあまりあります。
だが、シュロモは決して孤独ではないところに救いがあります。
息子の幸せを荒れ果てた難民キャンプで願うシュロモの実母、秘密を抱えたために心を閉ざすシュロモを優しく包むイスラエルの養父母など、盲目的な親の愛が悩めるシュロモを突き動かし、「約束の旅路」のゴールへとたどり着かせるラストは、大きな感動を呼びます。
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