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会話中に起こる怪現象「ワンサイドミスリード」と「プラスワンパニック」について

人間だもんで。会話の流れで「なぜそういう解釈になるんだろうー?」とか「それはもらい事故だよー」と、モヤモヤする時もある。

日々の会話の中で言葉や意見が誤解されることはよくある。それらの現象の中で特にモヤモヤ度が高いものを大きく分けると2つの方向性に分類できると感じ、その2大怪現象を「ワンサイドミスリード」と「プラスワンパニック」と名付けて記録しておこうと思う。

たぶん、この怪現象が起こること自体を避けることは不可能だろう。ただ、整理しておき、意識し、できる限り冷静に対応・対処することで、よりクリアで円滑なコミュニケーションを実現することはできるはずだ。

【 ワンサイドミスリード とは 】

one-side misread

きっと思い当たる人も多いであろう怪現象。「AとB、どっちが好き?」と質問されて、比較した上でAのほうが好きだと答えたにも関わらず「じゃあBは嫌いなんだ」という認識になってしまうアレである。例えば「紅茶とコーヒー、どっちが好き?」と質問されて「コーヒー」と答えただけなのに、なぜか「じゃあ紅茶は嫌いなんだ」と誤解されてしまうような状況がしばしば起こる。

よく人間の思考は「二元的なフレームワークに固定されやすい」と言われる。「好き」の反対は「嫌い」でなければならない、「楽しい」の反対は「つまらない」でなければならないというような。2つの選択肢がある場合、それが相反するものであると思いがちな落とし穴。実際には「好き」ではないからといって必ずしも「嫌い」とは限らず、中間的に「好きでも嫌いでもない」という感情も存在するはずなのだが。

あとは、学校での友人グループとか大人の世界での組織の派閥とか、あの人と仲良くしているならこっちとは仲良くするな的な、なぜか二項対立的な状況を勝手に作る謎テリトリーの存在もワンサイドミスリードの概念に入れてしまって良いだろう。

常に0か100かで判断しているわけでもないので「どちらも好きだけど、今このタイミングで質問されて比較したなら、こっちかなー」な感情も存在するはず。どちらかを選んだからといって「そっちだけを肯定している」というわけではない。

こういった誤解を防ぐために有効な方法は何だろう?

もちろん、質問の部分だけで単純に誤解が生まれるわけではないと思う。選択肢の提示方法、言葉の選び方、会話の文脈など、さまざまな要因が絡み合って「ワンサイドミスリード」は生まれているはずだ。

相手が誤解するかどうかの土台部分をコントロールするのは難しい。となると、自ずと対処法は「自分の意見や感情を明確に伝えること」に寄せられる。言葉を慎重に選び、自分の選択が他の選択肢を否定するものではないことを明確に伝える。たとえば、「どちらも好きだけど、どちらかといえばコーヒーだなー」と、どちらも好きであるという前提も言葉として明確に伝えることで、誤解される可能性は軽減できるだろう。

いろいろ考えてみるも、この方法が唯一且つ確実な対処法な気がする。わざわざ言わないとダメなの?とモヤモヤする気持ちがゼロではないが、その後に誤解される可能性を減らせるのなら費用対効果は高い。前提部分を言語化しておくことで、万が一誤解された場合も「最初に言った通り、どちらも好きなんだよねー」と、やんわり軌道修正することも容易になるはずだ。

【 プラスワンパニック とは 】

plus one panic

これもきっと思い当たる人が多い怪現象だろう。「プラスワンパニック」は、新しい選択肢を提示することで、既存の選択肢を否定したと誤解される現象を指す。AとBどっちにしようかなーと話している中でC案を提示することで、AとBの両方を否定したと解釈されてしまう現象だ。

例えば、ランチでどこのお店に食べに行こうかと相談していて「ラーメン店」と「カレー店」が候補に挙がっている中で「ハンバーグ店もあるよ」と提案しただけなのに「ラーメンやカレーは嫌いなんだ」と誤解されるような。

あとは「最近とても良い雰囲気の居酒屋を見つけたんだよね」と言っただけなのに、それを聞いた友人たちが「もう行きつけの店で一緒に飲んでくれないのだろうか」と感じてしまうのもプラスワンパニックという扱いにして良いだろう。

人間は「変化」に対しては基本的に抵抗感を抱く傾向があるらしい。新しい選択肢が提案されると、それは何か既存の状況に対する挑戦(反抗)として感じられ、防衛的な反応を引き起こしてしまうことがあるとのこと。つくづく人間って面倒な生き物だ。

この誤解を防ぐために有効な方法は何だろう?

結局はワンサイドミスリードと同じく「明確に伝えること」以上に有効な手段が思いつかない。「ラーメンもカレーもいいよねー。あ、そういえばハンバーグ店もあるよ」みたいに言語化して可能な限り意思が正確に伝わるように発言する。これに勝るものはないだろう。

逆もしかりで、相手が新しい選択肢を提案してきたことに対して、それが必ずしも既出の選択肢を否定するものではないとうことを理解して受け入れる姿勢を持つことが重要だ。自分は絶対に大丈夫だと慢心することなかれ。

ワンサイドミスリードも、プラスワンパニックも、根底には思考が『二元的』だったり『二項対立的』だったりに固定されやすい傾向があることが関与しているように感じる。

このような思考の落とし穴を避けるためには、自分自身の感情や選択肢を明確にして相手に伝えることが重要だなと改めて思う。そして、比較した上での選択や、新しい提案が既存の選択肢の否定ではないということを、自分自身もしっかり理解して受け入れるよう心がけておくことも大切だ。

全てを損得で判断するものではないことを大前提としつつ、それでも「より良いコミュニケーション」を促進できるに越したことはない。自分の価値観の押し付けや不必要な否定はコミュニケーションの断絶に繋がることが圧倒的に多い。相手の発言の意図に意識を向けながら、受け入れつつ、出来る限り適切に理解できるようにする。それらを無意識にできるようになるのが究極の理想系だろう。

勘違いによって思いがけず「楽しいこと」や「予想外のアイデア」が生まれることもあるだろうが、それはまた別の話。今回ここで挙げたような、マイナスな状況を生み出してしまうワンサイドミスリードやプラスワンパニックは、世の中から少しでも減るといいなと思っている。

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