ひょっとしてHSP? 繊細さん弁護士の憂うつ
■ 始めに
自分の仕事でいっぱいいっぱい。
それなのに、他の人が大変そうにしていると放っておけない。
頼まれた仕事があれば断れない。
他の人は自分よりも頑張っているのだから、自分なんてまだまだ「疲れた」なんて言っちゃいけない。。。
法律上正しいことでも、あんまり厳しく言い過ぎるとクライアントから嫌われてしまうのではないか……。
そんな風に思いながら日々仕事をなさっている弁護士の先生もおられるのではないでしょうか?
もしそうだとしたら、HSPの可能性があります。
今日は、このHSPについてまとめていきたいと思います。
■ HSPとは?
HSPとはなんでしょうか?
最近よく聞くようになった言葉なので、知ってるよという方も多いかも知れません。
HSPとは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)」の頭文字を取ったもので、要は、人一倍繊細な人のことを言います。
HSPの概念は1996年にエレイン・N・アーロン博士によって考案されました。
アーロン博士は心理学者ですので、HSPもあくまで心理学上の概念であり精神医学上の概念ではありません。
HSPは何らかの病気や障害ではない、ということです。
ましてや、性格の問題ではありません。
気質の問題と言われています。つまり、生まれつきの脳の性質である、ということです。
■ HSPによく見られる傾向
HSPのような繊細さんは、非繊細さんに比べて下記のような特徴が現れやすいと言われています。
まだまだたくさんありますが、私のような非繊細さんからすると、上に書いたものをみるだけでも「繊細さんは大変そうだな……」と思ってしまいますね。。。
実際、友人の繊細さんに話を伺うと、「とっても大変。ストレスを感じるから人と極力関わりたくはない。けど、働かなければ食べてはいけないから仕方がなく出社して、人と頑張って関わっている」ということでした。
HSP、なんと5人に1人の割合でいるそうです。
ということは、きっと弁護士をなさっている方の中にもそういった繊細さんがいらっしゃるはず。
そんな先生方が、少しでも楽になるようにHSPの傾向に対して、そのような対策をとっていけばいいか、1つ1つ見ていきたいと思います!
■ 自分はHSPだと知る。
一つ目は、「自分はHSPであり、一方でHSPではない人もいる」ということをしっかりと認識する、ということでしょう。これ、意外と重要です。
世の中には生まれつき繊細な人と、そうじゃない人の2種類がいます。
もしこのことを認識できていないと
「え? なんでなんであの人ってあんなにガサツなの!?」
と必要以上にイライラしたり、
「もしかして、私(俺)が気にし過ぎなの?」
と自己卑下してしまいます。
世の中に男性と女性がいるのと同じく、HSPと非HSPがいるのだ、と思うだけで無用な対立や葛藤を感じにくくなるでしょう。
■ 断ってもいい。
HSPの繊細さんは、「断る」ということがなかなかできません。
ですから、自分の担当するケースが既に山のようにあっても、依頼や要請があるとそれを断ることができません。
ですが、自分の心と身体が「厳しいな」と感じていたら断ってもよいのです。
断らないと、ますますあなた自身が厳しい状況になってしまいます。
あなたがこのまま断らないとどうなるか。
きっと周囲はあなたのことをこう思うはずです。
「都合の良い人だ」
こうなると、さぁ大変です。
あなたを都合良く使う人だけがあなたに集まってくるでしょう。
こうなると、どんどんあなた自身が追い詰められてしまいます。
だからできないことは断ってもいいのです。
断ることができたら、「それでもあなたと繋がっていたい」という人だけが残っていきます。
都合良くあなたを利用するためだけにあなたと接触してくる人はいなくなるので、あなたの対人関係はきっとずっと楽になっていくと思いますよ。
人間関係の断捨離を。
■ 答え合わせを。
HSPの方は察する能力が高いと言われています。
ですので、この特性を活かせば、クライアントの悩みを法律的にも心情的にも理解できる素晴らしい弁護士業務ができることでしょう。
ところが、この能力には限界があります。
いくらHSPで察する能力が高い人であっても、結局はパーソン、人なのです。
人は必ず間違えます。
人間である以上、その察しが間違っていることだって充分にあり得るのです。
ですから、
「あれ? あの人機嫌が悪いのかな……? きっと自分のせいだ」
と思ったとしても、そこで立ち止まらないで。
本当に相手は機嫌が悪いのか、自分のせいなのか、それらの答え合わせをしていきましょう。
どうやったらいいって?
そのまま尋ねればよいだけです。
「どうなさいました? 普段穏やかにお仕事されているけど、今日はいつもと違うように感じたのですが」
みたいに。
■ かわいい子には旅をさせよ。
HSPの方は、人一倍気を使い過ぎる傾向があります。
そのため、困っている人を見るとつい助けたくなってしまいます。
でも、それも今日でオシマイ。
助けなくても大丈夫。そう、向こうから頼まれない限りね。
助けてしまうと、その人が自力で問題解決をしたり、成長していくのを阻害してしまうことがあります。
かわいい子には旅をさせよ。
つい構いたくなって、近くに置いておきたくなりますが、そうするとその子の自立心が育っていきません。だから、可愛いからこそ、独り立ちさせる。
困っている人もそれと一緒。
それに、困っているように見えて、実は困っていないかもしれない。
あなたが「あの人、まだ仕事していて大変だな」と思ったとしても、
その人は家に帰りたくない事情があって、わざとゆっくり仕事をしているのかもしれません。
相手がどうしているかなんて、いくらHSPでも相手に直接聞くまで分からないものです。
だから、助けなくても大丈夫。そう、向こうから頼まれない限りね。
■ 頑張り過ぎない。
HSPの人は、他人からの影響を受けやすいと言われています。
弁護士業務は激務でしょうから、きっとあなたの周りの先輩弁護士はそれはもう猛烈に働いていることでしょう(少なくとも、HSPのあなたにはそう見えているのではないでしょうか?)
きっとあなたはこう思っているはずです。
「自分も同じくらい頑張らないと」
とても立派な心意気です。
でも、それ、あなたのキャパシティ超えてませんか?
先輩は、それだけの仕事がこなせるようになるまで、過去に様々な経験を積んできています。
多分、いきなりそんなに働けたわけではありません。
あなたはまだ、その経験がない。だとしたら、先輩のようにできなくても当然なのです。
周りの影響をもろに受けると、自分もあたかも同じレベルのことを要求されているように感じてしまいますよね。
でも、あなたがちょっとくらい仕事ができなくても、誰も迷惑だなんて思いません。
仮にあなたが疲労で倒れてしまったら?
そっちの方が「迷惑だな」と思う人が現れる可能性は高いでしょう。
だから、自分のキャパシティを超えるほど頑張らなくてもいいんです。
■ 目的は何だったか思い出す。
弁護士の中には、特に新人弁護士の中には「人脈を広げたい・稼げるなら稼いでおきたい」と強く考えて行動している方が結構いらっしゃるようです。
HSPは自己否定感が強いと言われています。
その気持ちを解消するために、人一倍努力を惜しまないのもHSPの特徴。
ですから、HSPならなおさら「人脈を広げたい・稼げるなら稼いでおきたい」と思うかもしれませんね。
せっかく苦労してなった職業です。
そんな風に考えて、何も問題はないでしょう。
しかし、それは弁護士になった「目的」でしたか?
残念ながら人は忘れやすい生き物。
目的を忘れてしまう、ということはよくあることです。
心理学ではこれを、「機能的自律」と言ったりします。目的のための手段が目的そのものになってしまうことです。
本当は、「クライアントのため」というのが目的としてあり、その手段として必死で頑張って人脈を広げたり、仕事に精を出していたのでは?
人脈を広げること、稼ぐことは、本当に目的ですか?
もしそうじゃないなら、目的はなんだったのか、思い出すようにしてみましょう。
■ まとめ
今回の記事はいかがでしたでしょうか?
近頃少し話題になったHSPについて、弁護士に関連しそうな部分を解説をしてみました!特に若手の弁護士の先生方だと、仕事をしている中で一度は感じたことのあることばかりなんじゃないかと思います。
頑張りすぎない、頼まれるまであえて助けない等を意識してやってみましょう!!
最後に。最近、HSPという概念が少し流行って、若干誤った方向での使われ方があります。ネットの情報や有名人の方の発言に影響を受けすぎずに、あくまでご自身の状態を知るきっかけとしてお使いいただいた方が良いかもしれません。
(書き手:臨床心理士・公認心理師・弁護士(一部))
※困りごとには個人差もあります。困りごとをとらえる視点も様々であり、本記事はあくまで視点のひとつです。
ご自身のことで思い当たることがあったりする場合は、公認心理師や臨床心理士など心理の専門家の人に相談してみてください。なお、当団体が直接ご相談をお受けすることはできませんので、ご理解いただきますようよろしくお願いします。
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