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ついつい「食べてストレス解消」この行動が危険な理由

1.ストレス食いしてませんか?

医者の不養生と良く言いますが、弁護士の皆さんはいかがでしょうか?

弁護士の仕事は、体が資本です。体調が悪いと効率が下がり、ミスも増えます。プロフェッショナルである以上、小さなミスも許されるものではありません。

不規則な食習慣は健康に悪いとわかっていても、忙しくてついエナジードリンクやエナジーバーでごまかしたりしていませんか?

そこで、突然ですが質問です。

 朝から複雑な交渉をこなし、オフィスに戻ると、課せられたノルマを達成しているかビラブルアワーが不安になって、思わずお菓子をほおばる。
 パートナーに頼まれた仕事がたまっていて食事をとる時間がないから、ついエナジードリンクやエナジーバーで済ませる。
 食事を摂る時間ができると、がっつりカツ丼やラーメンセットなどコッテリしたものを一気に食べる。
 次の日の会議の準備で夜遅くまでリサーチをして、書類を作成する。無意識にお菓子を食べたくなり、食べながら作業をする。そして夜食にピザやポテトチップスを食べ、炭酸飲料水を飲みながら仕事を続ける。
 とにかくコーヒーを沢山飲まないと集中できないので、沢山コーヒーを飲みながら仕事をする。
 健康や体型を気にしてダイエットをするが、ダイエットを止めるとリバウンドをする。そして、ダイエットとリバウンドを繰り返す。

このような経験はありませんか?

これ、全てストレス食いの行動パターンなのです。

2.ストレス食いとは何か?

ストレス食いは、「エモーショナル・イーティング」(後述)の一種で、放置すると深刻な問題に発展する可能性があることをご存知でしょうか?

実は、『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』(ダイヤモンド社)の著者Dave Asprey氏は、エモーショナル・イーティングについて彼の本『Game Changers』で警鐘を鳴らしています。この本は、Asprey氏が多くの成功者にインタビューして「成功者の法則」をまとめたものですが、その法則の1つに、「本当にお腹が空いた時に食事をする」というものがあります。

また、Asprey氏は、

「人は『何かが欠けている』と感じている時に食べます。例えば、食べ物が足りない、エネルギーが足りない、睡眠が足りないと感じる時に。しかし、多くの場合は、愛情が足りないと感じる時に食べるのです」とも述べています。

つまり、エモーショナル・イーティングは無意識的に始まるため、体調を崩しても、その原因がエモーショナル・イーティングであることに気づかない場合が多いのです。

その背景には、子供をあやすためにお菓子を与えたり、御褒美に食事をしたりするなど、何等かの感情に対処をする為に食べるという行為が習慣化されていることが挙げられます。この行為はあまりにも日常的すぎて、医師の治療が必要な摂食障害になるほど深刻になってもその問題に気づかない人もいます。

あまり多くは語られませんが、プロフェッショナル、ビジネスエグゼクティブの方も例外ではないのです。

海外の弁護士会では、ロースクール生や弁護士のメンタルヘルスの問題に注目し、うつ病の他、アルコールやギャンブル依存になる人、そしてエモーショナル・イーティングを抱える人が後を絶たないと危機感を感じており、メンタルヘルス対策に乗り出しています。

3.エモーショナル・イーティングとは何か?

エモーショナル・イーティングとは、eating with emotion (何らかの感情と共に食べる)行為で、お腹が空いたから食べる等、私たちの生命活動に必要な栄養素を補給する目的で食べる行為とは異なります。

エモーショナル・イーティングは、アルコールやたばこ等の嗜好品による気分解消行動と関連して説明されることが多いですが、そのような気分解消行動とは異なります。

「ストレス、悲しみ、孤独等不快な感情に対処する為に食べ、
食べた後には感情的な問題が解消されるわけではなく、
胃がパンパンになったのを自覚して、
さらに気持ちは低迷し、
そして不快な感情を対処する為にまた食べる」

このような問題のある食べ方が、エモーショナル・イーティングです。

つまり、食べ物を、

(1)栄養補給や満足感意外の目的で使う
(2)不快な感情等感じたくない感情の対処策として使う
(3)気分をよくする、自己をなだめる、逃避したい、コントロールしたい

という気持ちで使う行為で、「食習慣と感情」が融合した行為がエモーショナル・イーティングなのです。

エモーショナル・イーティングの特徴は、

(1)突然始まる
(2)感情は具体的
(3)得たいものは「満足感」
(4)特定の食べ物を渇望する(多くの場合、comfort food(幸福感を与える食べ物)

と言われるもので、砂糖、炭水化物や脂質が多く含まれる食べ物)です。

ストレスが溜まると甘い物が食べたくなったり、comfort foodを欲するのは、ストレスホルモンが沢山分泌されていることと、摂食ホルモンのバランスが崩れてしまっていることが原因とされています。

エモーショナル・イーティングの対処法として、「食べたくなったら水を飲む」「孤独感を感じないように犬や猫と遊ぶ」等と紹介しているWEB記事もありますが、エモーショナル・イーティングはその根本原因を対処しない限り、繰り返されます。

エモーショナル・イーティングは女性に多いと言われていますが、男性で悩んでいる人も少なくありません。

エモーショナル・イーティングを繰り返すということは、その背景に何らかの心身の問題があり、それを放置すると、摂食障害に発展する可能性があるだけでなく、体内炎症、ホルモンのアンバランス、腸内環境の乱れ等、健康を害すると言われています。

例えば、

イライラ、集中力に欠ける、肥満、骨が弱くなる、胃腸の問題、体内水分のバランスを崩す、低血圧、高血圧、高血糖、インシュリン抵抗、不安、うつ、社会的孤立等

といった問題に発展することが多く、深刻な状態になると、生活習慣病を含むあらゆる病気になり治療が必要になるとも言われ、摂食障害を専門とする精神科医による治療も必要になるそうです。

4.早期発見・早期対処、それにはサインと原因を知ること

エモーショナル・イーティングの場合、食事を極端に摂らないというケースもあります。特にストレスを感じ始めている時は「疲れて食欲がなく、食べたくない」と感じるケースもありますが、ストレスが慢性的になると、多くの場合、特定の食べ物を渇望したくなるケースが多いです。そして、「最近太ってきた」と感じ、ダイエットを始めて三日坊主。ダイエットとリバウンドを繰り返す、いわゆる「ヨーヨーダイエット」を繰り返す。これは、典型的なエモーショナル・イーティングの行動パターンです。

また、便秘やニキビといった不調の原因を探っていったら、エモーショナル・イーティングが見つかったというケースもあります。先ずは、エモーショナル・イーティングをしているか否かを確認・認識することが始めの一歩だと思います。

前述の通り、エモーショナル・イーターは、不快な感情をコントロールする為にcomfort food(幸福感を与える食べ物、砂糖、炭水化物や脂質が多く含まれる食べ物)を食べる傾向にあります。勿論、感情をコントロールする為に「食べる」という行為をするのですが、砂糖、炭水化物、脂質が多く含まれているものが無性に食べたくなるのは、ストレスでコルチゾールが分泌され、神経ペプチドY、レプチン、グレリン等、摂食ホルモンのバランスが崩れた結果に起こる行動とされています。

ちなみに、精製された砂糖や人工甘味料、プロセスフード、添加物の摂りすぎは、腸内環境を崩し、体内炎症を起こし、ホルモンバランスを崩します。その結果、特定の食べ物を渇望します。従って、そのような食べ物をよく摂る人もイライラ、集中力に欠ける、肥満、うつ等体調不良を訴える人が多いことから、不快な感情コントロールが先か、食習慣が先か、よく議論されます。

エモーショナル・イーティングの場合、ちょっとしたきっかけ(例えば、パートナー、同僚、家族、友達からの一言)や、睡眠不足、ストレスによる交感神経と副交感神経のアンバランスから、食との関係性が悪くなり、それが引き金になることもあります。

よって、特定の食べ物を制限しても、エモーショナル・イーティングは治りません。その根本原因を探り、適切な心身の対処を行い、統合的にアプローチすることが必要だと思います。

エモーショナル・イーティングのサインや原因は様々ですが、代表的なものは、次の通りです。

代表的なサイン

 孤食・人に見られないように食べる
 人と一緒に食べないようなものや量を独りで食べる
 食べ物を隠す・隠れて食事をする
 悲しい・不安・罪悪感・恥ずかしい・心配・無力という感情
 消化の問題・寝れない・体重の増減
 食べる量に対してコントロールを失っている
 お腹がはちきれぐらいまで食べた後、排泄する浄化行為を行っている

代表的な原因

 感情とストレス:ハッピー、悲しい等、気分をコントロールする為に食べる。
 生活環境の問題:過度な練習、オーバーワーク、家庭環境、職場環境などの問題からの逃避
 退屈:刺激がほしいと思い即効性のある「食べる」という行為をとる 。
 セルフサボタージュ(自己妨害)、自分に自信を持てない、変化への恐れ(成長せずに現状にいるほうが楽と考える):成長や変化への対応はストレスが伴うため、現状に甘んじるほうが楽だと感じる場合や、行動をしない言い訳(例えば、明日からやればいい)をするときに食べる。
 社会環境・住んでいる場所:ライフスタイル、季節の行事等特定のイベント時に特定の食べ物が食べたくなる。
 文化的影響:過去の楽しかった経験、幼児体験・記憶(映画館でポップコーンを食べる)
 食べ物がご褒美になっている、食べ物に依存している
 堅い考え・強い固定的な考え方による生活スタイル

このように、エモーショナル・イーティングのトリガー、行動、原因は様々で、必ずしも1つではありません。したがって、一度はエモーショナル・イーティングを専門としているヘルスコーチやカウンセラーに相談して、自分の食事・生活パターンを確認してみるのが良いかと思います。そして、エモーショナル・イーティングを克服するプロセスは、不快な感情の原因と食べ物への統合的アプローチが必要になります。

エモーショナル・イーティングは、誰もが経験します。より多くの人にエモーショナル・イーティングについて知ってもらい、正しい知識のもと、弁護士のウエルネスの向上、パフォーマンス向上の為に、早期に発見し、適切な対応をとってもらいたいと思います。

5.著者プロフィール

ホリスティックヘルスコーチ Lottie (専門:エモーショナル・イーティング心理学)

プロフィール:豪州(NSW)法弁護士、英国法弁護士、IIN™公認 米国代替医療学会(AADP)認定ホリスティックヘルスコーチ (IIN™にてエモーショナル・イーティング心理学、腸の健康及びホルモンの健康の専門課程をも終了)。カルフォルニアサザン大学大学院行動科学部行動科学科 スポーツ心理学(California Southern University Grad. School Behavioral Science Certificate of Sports Psychology)True Nature Meditation認定講師 日本スーパーフード協会 スーパーフードエキスパート

経歴・活動:コーポレートやM&A取引を中心に海外及び日本の渉外事務所で勤務。その後、インハウスロイヤーになる。法律事務所時代にストレス食いを経験しヘルスコーチになる。現在は外資系会社で勤務しながら、統合栄養学・スポーツ心理学の理論とテクニックを体系化したメンタル・フィジカルコンディショニング法でストレス食い等を改善しパフォーマンス向上に繋げるヘルスコーチングやアスリートウエルネス向上の為のヘルスコーチング、スーパーフードやマインドフルネス・メディテーションのワークショップを行っている。

6.参考文献

Lottie先生に、本記事の参考文献をご紹介いただきました。非常に多くの参考文献のご紹介をいただいておりますので、別記事にて参考文献をまとめております。いずれも日本語の文献ではございませんが、ストレス食いにご関心のある方は是非ご一読してみてはいかがでしょうか。

7.最後に

今回は、豪州(NSW)法弁護士・英国法弁護士であるLottie先生に、ストレス食いについて、解説いただきました!

日本ではなかなか聞かない「ストレス食い」という単語ですが、本記事を読まれた皆様は、「ストレス食い」のチェック項目には、どこかでご自身もなされたことがある行為があったのではないでしょうか。

本記事を読んで、Lottie先生にお話しを聞いてみたい方、本記事についてのご質問・ご感想がある方は、是非コメントをいただくか、Amiまでご連絡お願いします。

最後に、Amiのご紹介です。

Amiは、弁護士の皆様にメンタルケアサービスを提供しています。運営は皆様と同じ弁護士が行い、メンタルケアサービスの提供は経験豊かな公認心理師が行います。

今回の記事のテーマである「ストレス食い」でお困りの方には、Lottie先生とAmiでご対応するサービスをご提供できますので、「ストレス食い」でお困りの方がいらっしゃいましたら、当社のサービスを是非ご体験ください!

また、メールでお問い合わせいただける場合には、以下のアドレスまでご連絡お願いいたします。

info@ami-wellbeing.com


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