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石丸AIのフレーム問題

古市憲寿が石丸伸二を「出来の悪い生成AIみたいな話しぶり」だったと評しているが、これは結構本質に迫っている。

日曜日に日本テレビの選挙特番で、東京都知事候補だった石丸伸二さんと初めて話しました。中継のせいなのか、出来の悪い生成AIみたいな話しぶり、という印象でした。いや、今時ChatGPTでももっとスムーズに会話できるので、面白かったです。本来は聡明な方でしょうから、そういう戦略だったんでしょうね。

というのは、石丸は

  • 自分が見下している相手

  • 攻撃的になると支持者が喜ぶであろう相手

に対しては「出来の悪いAIモード」になるからである。

AIモードの特徴は非人間化・非当事者化(人事ひとごと化)とでもいうもので、ここでは上の動画から三点を取り上げる。

一点目は、森アナと古市が結果についての感想を聞いていることに対する反応である。普通の人なら、当事者として何らかの感情・感想が湧いてくるはずであり、他者はそれを聞いて人物評価の材料にするわけだが、非人間化・非当事者化された石丸AIには感情も当事者意識もないので、「結果は2位でした、まる(ピリオド)」で終わってしまう。なので、質問者が感想を聞いても「意味の無いことをしつこく聞く既存メディアは恥を知れ、恥を」となるわけである。一般人が「ザンビアの大統領選挙の結果についてどう思いますか」と聞かれた時のような反応をするのが石丸AIのロジックである。

二点目は広島1区からの衆院選出馬の可能性について聞かれた際に話が噛み合わなかったことである。なぜそうなったと言えば、普通の人はあり得る選択肢から自分の意思と状況判断で絞り込んで可能性が高いものを答えるのだが、石丸AIはそのようには動かず、「あらゆる選択肢はテーブル上にある」というスタンスを取り続ける。いわばフレーム問題を起こしたAIのようなものであり、回答するために選択肢から一つを選ぶ基準も「可能性が高そうなもの」ではなく「話題になりそうなもの」という非常識的なものとなっている。

無限の可能性がある現実世界では、適切なフレームで思考を狭めない限り、無限に計算し続けることになってしまう。このフレームを作るのが人工知能は苦手なんだ。

探偵AIのリアル・ディープラーニング』p.50
漫画では第3話

三点目は「政治屋の定義」についての古市との堂々巡りだが、平野啓一郎が言うところの「本当に賢い人」であれば、質問の意図が「安芸高田市長→東京都知事選挙立候補→衆議院議員総選挙立候補(広島1区?)という行動は石丸が言うところの『政治屋』の定義に当てはまるのでは?」だと理解して、「◯◯の理由で自分には当てはまらない」と答えるはずである。

だから、やりたいことが具体的な人の場合、行政と立法が混じるってことは、あんまりないんですよね。あるとしたら、何でもいいから政治家になりたい場合。どこでもいいから選挙で勝てばいいと考えている場合。(それは他の候補者にも言えます)
あれ、それって石丸さんの定義した「政治屋」そのものじゃないの? 僕は安芸高田市民ではないので批判する立場にはありませんが、市長は途中で辞めてるし。
だから、石丸さんの批判する「政治屋」と、石丸さん自身がどう違うのかを何度も聞いたんです。そこを聞けば、具体的な話になると思ったからです。でもならなかった。こっちとしては不思議でした。

古市のXポスト

でも(具体的な話に)ならなかったのは、石丸AIは相手の意図は汲まないので、「政治屋の定義は?」と聞かれたから「返答済み」と返しただけのことである。

ロジックが分かれば石丸AIの動作は予測可能になるはずだが、それよりも非人間化・非当事者化(人事ひとごと化)した政治家に喝采する信者の方に問題があるように思われる。

👆は珍しく藤井に同意。石丸、平野、藤井は三人共京都大学出身。

付記

石丸信者はオー・ヘンリーの『心と手』の気付かなかった方の乗客に似ているように見える。

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