クリントン・フェミニズムと構造改革

当noteの読者には目新しい内容では無いが、西洋のフェミニズムの本質を突いた記事なので紹介する。

Let’s call the stereotype-smashing, freedom-chasing school of women’s liberation “Clinton feminism”: it’s a movement of strong female role models and stories about “the first woman to do [stereotypically masculine thing]”. Again: what’s not to like?

この筆者が言うところの"Clinton feminism"は、男が多かった職種への女の進出を求め、かなりの程度成功したが、それらの職種の大半は弁護士のような高給の知的労働で肉体労働ではない。事実、下水やごみ処理や土建の現場への「女の進出」の遅れを批判するフェミニストは皆無に等しい。

Because inasmuch as it refers to smashing stereotypes and celebrating CEOs and Vice-Presidents, at least in its mainstream usage, the word “feminism” has been colonised by the class interests of a wealthy elite. This minority of women have comprehensively liberated themselves from the constraints of female biology – whether it women’s relative physical weakness or the time constraints imposed by motherhood – and have achieved this at least in part on the backs of poorer women. That is, under Clinton feminism, the richer a woman is, the freer she is.

クリントン・フェミニズムは「男女平等」を「男女に違いはない→男女の肉体差は無視できる」へと拡大解釈した結果、肉体労働する女や肉体的に男と接する女にとってはむしろ重圧・脅威となっているというのがこの筆者の見解である。クリントン・フェミニズムは「脳化社会」から生まれた頭でっかちの都会人の思想と言える。

都市化とは、人間が「ああすれば、こうなる」と考える通りに動く社会をつくりあげていくこと。私たちヒトは都市化を進めるあまり、「ああすれば、こうなる」では捉えられない自然物に対して拒絶反応を示しているのだという。
都市とは、あらゆるものが人間の脳の考える通りにつくられた、「脳が化けた」社会なのである。

実際、自称「心は女」の男が女子スポーツに参入して推薦入学の枠を奪ったり、女を襲った性犯罪者の囚人が女の刑務所に収監されるなどの一昔前なら考えられないような事態が既に起こっている。しかし、肉体労働せず、接する男もエリートばかりの上級国民の女は、下級国民の女が苦しんでも我関せずである。

高級マンションに住んで高級外車を乗り回していた日本のクリントン・フェミニストが「二流の女」を見る目も同じである。

賃金が上がらないといっても、外食せずに家で鍋をつついて、100円レンタルのDVDを見て、ユニクロを着ていれば、十分に生きて行けるし、幸せでしょう?

スウェーデンの変貌からも、男女平等が格差拡大・階層分化と表裏一体であることが見て取れる。

クリントン・フェミニズムは日本の構造改革と似ていて、

①新興勢力が体制に参入するために「下」の人々を煽動して体制の末端を攻撃させる。
②体制の一角が崩れると、その機に乗じて侵入して支配的地位を固める。
③新興勢力は旧勢力よりも「下」に対しては過酷なので「下」の境遇は悪化する。
④境遇の悪化による「下」の不満を攻撃に誘導する。

というパターンが繰り返されている。

この「下級国民を焚きつけて『体制』を崩し、自分たちが得する構造に『改革』する」という手法の有効性は、日本の構造改革の20年間や、某都市の10年間でも実証されている。

ちなみに、日本でも家事育児から女の解放が叫ばれるのは、一流の女が自分が家事育児をやらないことを正当化することと、それまでは夫に「雇われていた」妻を労働市場に引っ張り出して、家事育児を代行させる低賃金労働者として利用するためである。二流の女は自分が家事育児から解放されると思って歓迎するが、実際には共働きしなければ生活できなくなる境遇に追い込まれる。味方のふりをして利用するのが一流の女のやり方である。知的能力が高い女の悪知恵を甘く見てはいけない。

この構造(⇩)は北欧諸国も同じ。Alison Wolfによると、北欧は職種による男女の偏りが世界で最も大きい地域でもある。

男は仕事・女は家事という性別役割分業は確かに女性の労働者化の進展で少し崩れました。でも多くの女性は低賃金・不安定なサービス業に吸収され、それを裏返せば家庭内業務の外出し(介護や外食は典型)、つまり女性が担ってきた家事労働の市場労働への置き換えでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?