アトキンソンの怪しい中小企業批判
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アトキンソンの怪しい中小企業批判

デービッド・アトキンソンが書いている内容がどうも怪しい。

つまり、アメリカの有給取得率が高いのはアメリカ人の国民性ではなく、単にアメリカの労働者の約50%が大企業で働いているから。日本の有給取得率が低いのも日本人の国民性ではなく、単に日本の労働者の中で大企業に勤めている人が約13%しかいないからなのです。
日本が他の先進国と比べて、経済効率の低い小さな企業で働く人の比率が圧倒的に多く、そのような小さな企業が国からも優遇されるということです。

総務省「労働力調査」によると、従業員規模100人以上の企業の雇用者が就業者に占める割合は43%、うち500人以上は27%である(2018年)。

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OECDのデータによると、大企業への雇用集中はアメリカが例外的である。

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日本の会社企業とアメリカのprivate sectorを比較すると、極端な差があるとは言い難い。

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雇用制度は国によって異なるので単純に比較できないが、「日本が他の先進国と比べて、経済効率の低い小さな企業で働く人の比率が圧倒的に多く」というのは言い過ぎではないだろうか。

「サービス業の生産性が低い」にも問題がある。

ちなみに、日本の生産性を議論する際に必ず出てくるのが、日本では製造業の生産性が高く、サービス業の生産性が低いという事実です。この現状を説明するためによく言われるのが「日本人はものづくりに向いている」「サービス産業の生産性が低いのは『おもてなし』の精神があるからだ」という”神話”のような話ですが、実はこれも非効率な産業構造ですべて説明ができます。

これについてはこちら(⇩)で検証している。低生産性には低失業率という「功」の一面があることも無視できない。

結論部分は意味不明で、中小企業の話が大企業の「暴走経営」にすり替わっている。

そんな「暴走経営」がこの20年、日本経済に与えたダメージは計り知れません。

これ(⇩)も見方が一面的で、論理もつながっていない。

「1964年体制」がつくった産業構造を元に戻すことは容易なことではありません。その動かぬ証が、1990年代から実行されたさまざまな日本の改革がことごとく失敗してきたという事実です。その結果、国の借金は1200兆円にまで膨らみました。

これ(⇩)はその通りで、20年も停滞しているのは約20年前から金融ビッグバンなどの改革を本格化させたためである。日本が失敗しているように見えるのは、構造を変えなかったからではなく、変えたからなのである。

これだけ大きな国の経済が「働き方」程度の問題によって、20年も停滞することなどありえないからです。

アトキンソンは「中小企業の改革」を進めないと国が滅びると脅しているが、2019年版『中小企業白書』にあるように(⇩)、「小規模企業を潰す」改革はこの20年間で着実に進んでいる(1999年の423万者が2016年には305万者に)。

2014年から2016年の2年の間に企業数は23万者(6.1%)の減少となった。規模別に内訳を見ると、大企業が47者増加、中規模企業が3万者減少、小規模企業が20万者減少しており、特に小規模企業の減少数が大きいことが分か
る。
また、1999年を基準として規模別の減少率を見ても、小規模企業は調査年毎にマイナス幅を拡大させており、減少傾向を強めている。

雇用者の小企業から大企業へのシフトも急速に進んでいる(これに加えて自営業からも)。

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そもそも、諸改革の目的は、日本経済の成長率を高めることではなく、護送船団的な一億総中流社会を解体(脱構築)して世界中の株式投資家が儲かる国(草刈り場)にすることだった。安倍首相も外国人投資家に向けて「外国の企業・人が、最も仕事をしやすい国に、日本は変わっていきます」「日本がもう一度儲かる国になる」などと明言している。

現在、我々の時代は、大勝利したものの、「乖離した」資本主義の時代に突入したのである。大企業の経営陣は株主の使用人に過ぎず、株主は利益のみを追求している。すなわち、株主の懸念事項は、カネを儲けることだけである。世界中を駆け巡る資本は、世界各地で労働生産要因を決定している。
要するに日本もまた、日本特有の形で「金融資本主義」の到来にさいなまれているところなのである。

そして、その目的は十分に達成されている。改革が失敗ではなく成功していることに疑う余地はない。

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国民の生活水準の底上げは改革の目標ではないので、これ(⇩)は失敗にはあたらない。

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民営化、民間委託、労働規制緩和など株主利益を最大化(⇔人件費を最小化)するための諸改革を熱狂的に支持して「抵抗勢力」を選挙でパージしてきたのは国民自身である。トランプ米大統領的に表現するなら、日本国民は「株主の利益が第一」のグローバリスト(Anywheres)に味方して「日本国民の生活が第一」のナショナリスト(Somewheres)を葬り去ったのである。

支払配当の増加>賃金・俸給の減少+消費税の増加

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アトキンソンには、この労働から資本への大規模な分配のシフトと、中小企業基本法に何の関係があるのか説明してもらいたい。

常に「日本は生産性が低い→選択と集中→集約化→外資が一網打尽に」という「自分たちの都合のいい結論へと誘導」しているのはアトキンソンではないだろうか。

長く分析の世界にいた私からすれば、国民性うんぬん、労働文化うんぬんというのは、科学的な分析から目を背けて、自分たちの都合のいい結論へと誘導していく、卑劣な論法だと言わざるをえません。

中小企業は女の敵なので徹底的に叩け」と誘導していることにも注意。女の敵は社会の敵(public enemy)というのがリベラルのドグマである。

海外の要因分析では、女性が活躍できていない国は、労働人口の中で、規模が小さくて経済合理性の低い企業で働く労働者の比率が高いという傾向があることがわかっています。
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