バイデンの「黒人ではない」発言が示すリベラルの偏向

米民主党のバイデンの「黒人ではない」発言は「軽率」や「軽口」ではなく、リベラルの本質が連合赤軍的であることのの表れと見るべきである。

バイデン氏は、「僕を支持するのかトランプを支持するのか、なかなか決められないっていうなら、その人は黒人じゃないよ」と答えた。
バイデン氏はインタビューの後、黒人ビジネスリーダーたちとの電話会議で、発言は「軽率」だったと釈明。
バイデン氏は、「軽口を叩くべきではなかった」と認め、「自分の人種や宗教や経歴がこうだから誰に投票しなくてはならないなど、そんなことは決してない」と強調した。
少なくともプラトンの『国家』以来、完全無欠な社会を築くという概念は西洋人の意識のなかにあり続けている。左派は存在する限りずっと誰もが仲良くて、協力しあい、自由で平和に生きていける社会を追求してきたのだ。
二〇世紀に入り、人間は完全であるという夢は、スターリンのソ連、文化大革命下の中国、ポル・ポト政権下のカンボジアで大変な悪夢と化した。そしてこの悪夢から目覚めた左派は大混乱に陥ったのである。

悪夢から数十年が経過して記憶が薄れたこともあって、左派が再び「完全無欠な社会を築く」という夢の実現に向けて動き出している。

ダグラス・マレーは近著(⇩)"で、左派が人種、性別、性的志向などのアイデンティティと政治的立場を結び付けたことを詳述している。(「英語講師」さんと「recluse」さんのレビューが参考になる。)

左派の目標は「世界を支配するstraight white maleの体制の打倒」で、"straight white male"ではない人々を勝手に連合軍(革命集団)に入隊させている(intersectionality)。

そのため、左派が敵視するトランプを支持したりするだけで裏切り者扱いされ、

ピーター・ティールはゲイではない。
カニエ・ウェストは黒人ではない。
ジャーメイン・グリアはフェミニストではない。

などの訳の分からない批判を受けることになってしまう(⇧3:30~)。アメリカの左派・リベラルは、自分たちを南北戦争時の北部、トランプ支持者を南部に相当すると本気で考えているのである。

Identity politicsが分断と闘争を激化させるのは、マルクス主義の階級闘争から派生したことと関係している(⇩)。

その世界観では、白人男の労働者は「資本家に搾取される弱者」ではなく「マイノリティを抑圧する強者」なので、左派にとっては打倒の対象になる。左派がかつての支持基盤を敵視するようになったことが、前回の大統領選挙でのトランプ勝利の重要な要因である

バイデンはidentity politics, political correctnessで攻めるつもりのようなので、アメリカ社会の分断はさらに深まりそうである。

バイデン氏は副大統領候補に複数の黒人女性も検討していると強調。バイデン氏はすでに、副大統領候補には女性を選ぶと約束している


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